その日彼女が死んだ。
自殺だった。
担任の教師が話すその情報は私の耳を通り抜ける。脳が全てを拒んだように感じた。
うだるような夏の暑さに逆らうように私の額からやけに冷たい雫が滴る。
(彼女が死んだ...?有り得ない。あんなに図太い子が簡単に死ぬわけないじゃない)

死んだ理由は?

ふとそんな疑問が頭をよぎる。
あの日の私の行動は死ぬ理由の一つになったのだろうか?
そんな訳ない、そう否定するのに確かな証拠はあったのか。分からない。

この世の中には分からないことが多すぎる。
私は何になりたいのか、どうあるべきなのか。何故それを人生の6分の1程度しか生きていない人間に選択させるのだろうか。残りの6分の5はその選択にそって進められていく。あまりに山場が早すぎやしないだろうか。このまま生きることは正しいことなのか。正と悪のどちらが生でどちらが死なのだろうか。誰も教えてくれない。

死とは何なのだろうか。私は生きているから分からない。誰も分からない。どれだけ死について話しても正しい結論は出ないのだ。
では、なぜ人は生きているのに死という不確かなことを考えるのだろうか。あかりの見えない山道をみなで探検でもしてるつもりなのだろうか。
人間とは面白い者だ。そして私はきっと面白くないのだ。

「ねぇ早見さん」
クラスメイトの声で現実に引き戻された。

「どうしたの?」
「早見さんって望実ちゃんと仲がよかったよね?」
仲が良かった...ように見えていたのかもしれないがここで否定するのは後々面倒なことになりそうだ。
「...ええ」
「貴方なにか聞いていないの?悩みとか」
「ごめんなさい何も知らないの本当に」
「そう」と言ってクラスメイトは私の元を去った。探偵気取りか?もしくは正義のヒーロー気取りなのか?その言葉を飲み込むと心の中の棘がまた少し成長したように感じた。