暖かくなるとおかしなやつが出てくる。
春の陽気に当てられたのか、
娯楽の足りない田舎の狂気か、奇祭の奇習か。
こんな考えもステレオタイプか?
親父が検査入院することになり、
俺は休日だというのに出社して、
社長室にある印鑑を押すという
お使いをさせられる。
地元の催しに参加して
腰の具合が悪化したらしいが、
病院は暇で死にそうだとボヤいていた。
社長には、お大事に。と、
社交的なメッセージを送っておいた。
俺は忙しいです。とは送らない。
自分の仕事の効率化を楽しんでいるからだ。
入社4ヶ月目で社長代理にまで上り詰めたが、
給料は時給計算するとパートと同等だ。
前より下がった気がするが、
気のせいではない。ここは悪徳企業だ。
誰もいない休日の会社には、
防犯装置が切られていた。
それとも前日の帰りに
誰かが装置を入れ忘れたのか。
最後に会社を出るのはいつも俺だが。
誰もいないはずの社長室の扉をあけると、
専務とパートの中年女性が一緒になって
社長室で田舎の奇習を催していた。
専務は60手前だというのに、お盛んなことだ。
俺はスマホを取り出して録画を始め、
あ然とするふたりに対して質問を投げかけた。
「警察呼びますか?」
「待ってくれ!」と、先に専務が慌てる。
「合意の上ですか?」
パートの女性も慌てて首を縦に振る。
ここで嘘でも否定されれば大問題だ。
お互いたぶん既婚者だろう。
不倫かぁ…。
まぁ、そうでなくても普通に問題だ。
「ここに入ることを、
社長が許可しましたか?」
「話を聞いてくれ!」
「まだ始めたばっかりなのに…。」
おあずけを食らっても残念がる女性。
首輪までするのは、どこの風習だろう。
「事情があれば弁護士さんに
相談してください。」
「なにが目的だ! あっ…
カケルくんも加わるかっ?!」
「その発言もセクハラなんで、
記録しときますね。」
専務はお気楽セクハラ発言によって、
飼い主様である女性にムチで生尻を叩かれた。
れっきとした暴行だが、同意の上であり
プレイの一環として俺は無視した。
「専務は退職希望ですか?」
「いや、いやだ! 定年間際に…。」
この会社に定年なんてあるんだろうか。
ただ、こんな田舎では
再就職は難しいかもしれない。
「それじゃあ専務。
誓約書、書いてください。
もう二度と、このような真似はしませんと。
もちろん、ふたりでしてました。
なんて内容は求めませんから、
安心してください。」
力強くうなずく専務の悲壮な顔。
プレイの最中でなければ多少の同情もできた。
こうして俺は専務よりも偉くなってしまった。
休日出勤。給料は据え置き。
以来、わずらわしかった
専務の日頃のセクハラ発言も、
俺の前では完全に鳴りを潜めた。
その後のふたりの関係が
どうなったかは興味ない。
隔週に行われる研修にも協力し、
パートたちへの参加も促してくれた。
専務と目が合うと
ひどく怯えるようになったが、
そういう趣味の人という認識になり、
気の毒と思うほどの余裕は俺になかった。
結婚しても、不倫をする人はいる。
どんなに信じていようとも、
裏切られるのは一瞬だ。
だから俺は他人に期待しないんだろう。
◆ 04 焼畑農業 につづく
春の陽気に当てられたのか、
娯楽の足りない田舎の狂気か、奇祭の奇習か。
こんな考えもステレオタイプか?
親父が検査入院することになり、
俺は休日だというのに出社して、
社長室にある印鑑を押すという
お使いをさせられる。
地元の催しに参加して
腰の具合が悪化したらしいが、
病院は暇で死にそうだとボヤいていた。
社長には、お大事に。と、
社交的なメッセージを送っておいた。
俺は忙しいです。とは送らない。
自分の仕事の効率化を楽しんでいるからだ。
入社4ヶ月目で社長代理にまで上り詰めたが、
給料は時給計算するとパートと同等だ。
前より下がった気がするが、
気のせいではない。ここは悪徳企業だ。
誰もいない休日の会社には、
防犯装置が切られていた。
それとも前日の帰りに
誰かが装置を入れ忘れたのか。
最後に会社を出るのはいつも俺だが。
誰もいないはずの社長室の扉をあけると、
専務とパートの中年女性が一緒になって
社長室で田舎の奇習を催していた。
専務は60手前だというのに、お盛んなことだ。
俺はスマホを取り出して録画を始め、
あ然とするふたりに対して質問を投げかけた。
「警察呼びますか?」
「待ってくれ!」と、先に専務が慌てる。
「合意の上ですか?」
パートの女性も慌てて首を縦に振る。
ここで嘘でも否定されれば大問題だ。
お互いたぶん既婚者だろう。
不倫かぁ…。
まぁ、そうでなくても普通に問題だ。
「ここに入ることを、
社長が許可しましたか?」
「話を聞いてくれ!」
「まだ始めたばっかりなのに…。」
おあずけを食らっても残念がる女性。
首輪までするのは、どこの風習だろう。
「事情があれば弁護士さんに
相談してください。」
「なにが目的だ! あっ…
カケルくんも加わるかっ?!」
「その発言もセクハラなんで、
記録しときますね。」
専務はお気楽セクハラ発言によって、
飼い主様である女性にムチで生尻を叩かれた。
れっきとした暴行だが、同意の上であり
プレイの一環として俺は無視した。
「専務は退職希望ですか?」
「いや、いやだ! 定年間際に…。」
この会社に定年なんてあるんだろうか。
ただ、こんな田舎では
再就職は難しいかもしれない。
「それじゃあ専務。
誓約書、書いてください。
もう二度と、このような真似はしませんと。
もちろん、ふたりでしてました。
なんて内容は求めませんから、
安心してください。」
力強くうなずく専務の悲壮な顔。
プレイの最中でなければ多少の同情もできた。
こうして俺は専務よりも偉くなってしまった。
休日出勤。給料は据え置き。
以来、わずらわしかった
専務の日頃のセクハラ発言も、
俺の前では完全に鳴りを潜めた。
その後のふたりの関係が
どうなったかは興味ない。
隔週に行われる研修にも協力し、
パートたちへの参加も促してくれた。
専務と目が合うと
ひどく怯えるようになったが、
そういう趣味の人という認識になり、
気の毒と思うほどの余裕は俺になかった。
結婚しても、不倫をする人はいる。
どんなに信じていようとも、
裏切られるのは一瞬だ。
だから俺は他人に期待しないんだろう。
◆ 04 焼畑農業 につづく