「ーー!ーー!死なないで!」

「ーー!先生!何とかならないんですか?!」

「残念ですー我々はできる限りを尽くしましたが、、」


突然だが私は今、死にかけている。

小さな発作は何度も経験した事があったけど、こんなに大きな発作は生まれて初めてだ。心臓がどくどくと激しい音を立てるのが妙に近くから響いてくる。

頭がだんだん、ぼおっとしてきて、もう両親が私の名前を呼んでいるのも聞こえない。
だけど、医者が言った言葉ははっきりと聞き取れた。煮えたぎるような激しい怒りを感じる。私はこいつのような人間が大嫌いだ。

私、つまり自分の患者が死ぬ時でさえ、その両親に「全力をつくした。だけど無理だった」などとほざくこいつみたいな人間が。




私は生まれた時から病弱だった。

母から生まれてくるとき、私の心臓の音が突然聞こえなくなったらしい。

何とか生まれてきたものの生まれつき心臓が悪く、だが成長してもそれは変わらず、一人では歩けないほどに軟弱だった。


そんな私が好きだったのが乙女ゲーム『花嫁と永遠の契りを』略して「ハナチギ」をプレイすること。
私が好きだったのは、当然攻略対象やヒロインーーではなく、ヒロインの恋路を邪魔する悪役令嬢スカーレットだ。

なよなよと弱々しく、いつも攻略対象たちにすがってばかりのヒロインには好感を持てなかったが、スカーレットは自分の意志を持って行動していた。その強さに惹かれたのだ。

私は病弱だったから、肉体的にも精神的にも、強くなりたかった。体が弱く、誰かに助けてもらわないと生きられない自分とヒロインの姿が重なって、よりスカーレットに憧れたのだ。




自己弁護を繰り返している医者に嫌悪感を感じる。だが、こんな奴のことを考えて、残り少ない時間を使うわけにはいかないーー。私にはまだ、やることが残っている。もうだんだんとかすんできた視界で両親を見つけ出し、手をのばす。


「おと…さん。お…かあさん…今まで…………ありがとう………産んでくれてあり…………がと………う…………」


両親は病弱にうまれた私に申し訳なさを感じていたようだった。自分たちのせいだ、と。
でも、私は当然彼らを恨んでなんていない。体の弱い私を大切に育ててくれたし、たくさんの愛情を貰った。両親がいたから、産まれてきて良かったと思えたーー


泣き崩れたお父さんとお母さんをみて少し微笑む。言いたいことは言えた。もう思い残すことなんてない。


お父さん、お母さん、今まで本当にありがとう。大好きだよ。

私は意識がだんだん薄れていく中で最後にそう思ったーーーー




「んん……」

目を開けると眩しくて一瞬顔をしかめてしまう。ゆっくりと起き上がり、豪奢な部屋の装飾に驚愕した。

んん?


ここ、どこ?