「探偵の副業でも始めたんですか?」
「違う、違う。先輩からの頼み事なんですよ」
その先輩、というのが一色であり、その頼み事こそがオフィスにまで彼が有栖に会いに来た理由でもあった。
「何か先輩の娘さんの飼い猫が家出しちゃったみたいで、その猫を探す為に娘さんが夜遅くまで外出してるっぽいんですよね」
「そうなんですか。娘さんの飼い猫って妙な言い回しですね」
「あぁ、この先輩、奥さんと娘さんとは別居中なんですよ」
「それ言っていいんですか?」
「……まぁ、いいってことで。どうせ暇だろってことで猫探しを依頼されたんですよ」
「事務仕事の気晴らしには良いんじゃないですか?」
高本はそう言いながら、器用に手を動かしバーで使うであろうグラスを磨いていく。
「そうかもだけど……あ、高本さん、この猫なんですけど見たことありませんか?」
そう言って有栖はスマホを取り出し、一色から転送されていた写真を見せた。高本も向けられた画面に顔を近づけて見る。
「綺麗に撮れていますね――色々と映ってる」
写真には高校生の一色の娘と赤い首輪がついている黒猫が映っている。家でお菓子作りをしている一場面だろうか、リビングでステンレスのボウル等の道具がテーブルの上に置いてあり、その邪魔をしにきた猫を注意するかのように一色の娘――黒髪のショートカットの爽やかな女の子が笑顔で抱えている平和な一枚だ。
「……見たことありますね」
「え、本当ですか? どこで?」
高本の発言に、有栖は思わず身を乗り出す。
「ここで」
「へ?」
「彼女、この店にたまに彼氏と来ていますよ」
「あー……それ聞かなかったことにします」
有栖はそう言って苦笑いを返す。よく一色から娘さんの溺愛話を聞いており、この写真も奥さんに頼み込んで貰ったことを知っている彼女にとってはその事実を説明する勇気はとてもじゃないが持ち合わせていなかった。
「違う、違う。先輩からの頼み事なんですよ」
その先輩、というのが一色であり、その頼み事こそがオフィスにまで彼が有栖に会いに来た理由でもあった。
「何か先輩の娘さんの飼い猫が家出しちゃったみたいで、その猫を探す為に娘さんが夜遅くまで外出してるっぽいんですよね」
「そうなんですか。娘さんの飼い猫って妙な言い回しですね」
「あぁ、この先輩、奥さんと娘さんとは別居中なんですよ」
「それ言っていいんですか?」
「……まぁ、いいってことで。どうせ暇だろってことで猫探しを依頼されたんですよ」
「事務仕事の気晴らしには良いんじゃないですか?」
高本はそう言いながら、器用に手を動かしバーで使うであろうグラスを磨いていく。
「そうかもだけど……あ、高本さん、この猫なんですけど見たことありませんか?」
そう言って有栖はスマホを取り出し、一色から転送されていた写真を見せた。高本も向けられた画面に顔を近づけて見る。
「綺麗に撮れていますね――色々と映ってる」
写真には高校生の一色の娘と赤い首輪がついている黒猫が映っている。家でお菓子作りをしている一場面だろうか、リビングでステンレスのボウル等の道具がテーブルの上に置いてあり、その邪魔をしにきた猫を注意するかのように一色の娘――黒髪のショートカットの爽やかな女の子が笑顔で抱えている平和な一枚だ。
「……見たことありますね」
「え、本当ですか? どこで?」
高本の発言に、有栖は思わず身を乗り出す。
「ここで」
「へ?」
「彼女、この店にたまに彼氏と来ていますよ」
「あー……それ聞かなかったことにします」
有栖はそう言って苦笑いを返す。よく一色から娘さんの溺愛話を聞いており、この写真も奥さんに頼み込んで貰ったことを知っている彼女にとってはその事実を説明する勇気はとてもじゃないが持ち合わせていなかった。