「あ、もしもし。イチさん?」
「おう、有栖。なんや?」
右京と一色楓から正式に助けを求められた有栖は高本からサービスで提供されたプリンを流し込むように食べると、右京に指示をし、その結果が得られたところでスマホから彼女の上司であり、楓の父である一色に電話をした。
「カラーズの緑の青年を保護しました」
「マジか。お手柄やんけ」
「んで、彼にカラーズのリーダーである結城に連絡をしてもらい、〇〇町の廃工場に来てもらうよう手筈を整えました」
右京には結城に怖くて今まで自首手前で逃げていたこと、このままでは駄目だと思ったので最後にもう一度決意を固める為にカラーズのみんなに会って感謝の言葉を言いたいこと、そして、そのままの勢いで自首しに行くことを電話で伝えてもらった。
相手側の返答は当然イエス。彼等としてもこれから新たに身代わりを探すより、たった数分会うだけで持ち駒が役割を果たすならそちらを選ぶのは想像に難くないことだった。
そして、カラーズは既に全員が近くにいたことから、今から三十分後に集まることになった。場所は板金屋の廃工場。持ち主の社長が夜逃げし、使われなくなり、来るであろう取り壊しの決定と実行を待つ場所だ。
右京の話ではカラーズに決まった集合場所はなく、集まる際は結城から二、三日前に場所と時間の連絡がくるらしい。
「――というわけです」
一通り説明を終えた有栖には耳元で唸る一色の声が聞こえていた。
それは三十分、という時間だ。今、ユースティティアでカラーズの捜索をしているメンバーは各々で情報を集めているので連絡、招集までにそれぐらいの時間は簡単に消費される。更には組織であるが故に、カラーズを捕まえる承認を得ることを考えると、最低でも一時間は欲しい。それは働いていれば逆算から簡単に導き出せる。
右京に時間稼ぎをさせることも出来なくはないが、素人には酷な話だ。それに、気づかれる可能性が高い。
「有栖……お前、何かするつもりか?」
唸りを止め、一色が尋ねた。
「…………」
「アホなこと考えるなよ。多勢に無勢やし、危険や。ここはちゃんと準備を整えてから……」
「イチさん、何も言ってないですよ。それに、自分は謹慎中です」
「せやな」
「けど、イチさん……ここで極秘情報です」
「何や?」
「イチさんから依頼を受けて探していた猫……〇〇町の廃工場で目撃情報がありました」
有栖の言葉を聞いて、電波の向こう側は沈黙。そして、馬鹿デカいため息が聞こえた。
「有栖、お前……そりゃ、行かんとアカンやろ」
呆れた声だが、一色が少し笑いながらそう言ったのが解る。
「言うとくけど、その猫は愛娘の飼い猫や。つまり、めっちゃ重要な任務やから失敗すんなよ。邪魔する奴とかおったらぶっ飛ばしてでも探してくれ」
「了解です」
一色の言葉に有栖は笑いながら返答する。こういう返しをするところが彼女にとって一色は先輩として信用できるし、一目を置いている。彼女の性格を理解し、その上で、ベストな判断をしてくれる。
「あ、イチさん」
「何や?」
「他意はないんですけど……」
「おう」
「始末書の書き方、教えてくださいね」
有栖のその言葉の意味を理解する一色は再びため息をつくと、
「任せとけ、アホ」
返ってきた答えは、これまたベストな回答だった。
「おう、有栖。なんや?」
右京と一色楓から正式に助けを求められた有栖は高本からサービスで提供されたプリンを流し込むように食べると、右京に指示をし、その結果が得られたところでスマホから彼女の上司であり、楓の父である一色に電話をした。
「カラーズの緑の青年を保護しました」
「マジか。お手柄やんけ」
「んで、彼にカラーズのリーダーである結城に連絡をしてもらい、〇〇町の廃工場に来てもらうよう手筈を整えました」
右京には結城に怖くて今まで自首手前で逃げていたこと、このままでは駄目だと思ったので最後にもう一度決意を固める為にカラーズのみんなに会って感謝の言葉を言いたいこと、そして、そのままの勢いで自首しに行くことを電話で伝えてもらった。
相手側の返答は当然イエス。彼等としてもこれから新たに身代わりを探すより、たった数分会うだけで持ち駒が役割を果たすならそちらを選ぶのは想像に難くないことだった。
そして、カラーズは既に全員が近くにいたことから、今から三十分後に集まることになった。場所は板金屋の廃工場。持ち主の社長が夜逃げし、使われなくなり、来るであろう取り壊しの決定と実行を待つ場所だ。
右京の話ではカラーズに決まった集合場所はなく、集まる際は結城から二、三日前に場所と時間の連絡がくるらしい。
「――というわけです」
一通り説明を終えた有栖には耳元で唸る一色の声が聞こえていた。
それは三十分、という時間だ。今、ユースティティアでカラーズの捜索をしているメンバーは各々で情報を集めているので連絡、招集までにそれぐらいの時間は簡単に消費される。更には組織であるが故に、カラーズを捕まえる承認を得ることを考えると、最低でも一時間は欲しい。それは働いていれば逆算から簡単に導き出せる。
右京に時間稼ぎをさせることも出来なくはないが、素人には酷な話だ。それに、気づかれる可能性が高い。
「有栖……お前、何かするつもりか?」
唸りを止め、一色が尋ねた。
「…………」
「アホなこと考えるなよ。多勢に無勢やし、危険や。ここはちゃんと準備を整えてから……」
「イチさん、何も言ってないですよ。それに、自分は謹慎中です」
「せやな」
「けど、イチさん……ここで極秘情報です」
「何や?」
「イチさんから依頼を受けて探していた猫……〇〇町の廃工場で目撃情報がありました」
有栖の言葉を聞いて、電波の向こう側は沈黙。そして、馬鹿デカいため息が聞こえた。
「有栖、お前……そりゃ、行かんとアカンやろ」
呆れた声だが、一色が少し笑いながらそう言ったのが解る。
「言うとくけど、その猫は愛娘の飼い猫や。つまり、めっちゃ重要な任務やから失敗すんなよ。邪魔する奴とかおったらぶっ飛ばしてでも探してくれ」
「了解です」
一色の言葉に有栖は笑いながら返答する。こういう返しをするところが彼女にとって一色は先輩として信用できるし、一目を置いている。彼女の性格を理解し、その上で、ベストな判断をしてくれる。
「あ、イチさん」
「何や?」
「他意はないんですけど……」
「おう」
「始末書の書き方、教えてくださいね」
有栖のその言葉の意味を理解する一色は再びため息をつくと、
「任せとけ、アホ」
返ってきた答えは、これまたベストな回答だった。