「えっと……」
「その……」
 右京と一色楓は言葉を濁らせた。二人からすれば有栖とユースティティアをどこまで信じて良いのか、頼って良いのか解らない、といったところだろう。
「与党の議員と警察は癒着でズブズブの関係。その上で成立している腐った正義。そんなものを許さない為に自分達がいるのよ」
 有栖は拳を握り、胸を叩いてみせる。
 
 有栖の言ったことはユースティティアが生まれた理由そのものだ。
 そもそも、治安の維持は警察だけで賄っていた。しかし、時代の流れに伴い、与党と警察の関係は深くなってしまう。気づけば警察は現政権に優位な取り締まりばかり行い、与党はそのバックアップを行う――そんな構図が出来上がってしまった。
 このままでは国の治安が崩壊すると考えた一部の政治家が結束し、有栖の所属する治安維持組織――ユースティティアが新しく設立。警察と対立するような形でこれまで行われた与党に優位な取り締まりへの抑止力となっている。
 警察と比べると設立されて歴史の浅い組織であるが為、信頼度と組織力は弱い部分はあるがそれでも着実に実績を残してきた。
 現在では野党のバックアップや組織内の不祥事が出ても表面化しないようにする等のグレーな部分はあるが、活動は評価されてきている。

 ――国民の信頼は未だ警察の方が厚いとはいえ実力があるのは確かだ。
 奉日本もユースティティアを客観的に見て、そのように評価している。一方で、有栖が自分の所属する組織に不信感があるのではないか、と一抹ながら思うところもある。
 それは一度、組織内でセクハラ被害があり、その被害者が警察に被害届けを出そうとし、不祥事の表面化を恐れた組織が被害者を説き伏せた経歴がある。その被害者こそが有栖だということも奉日本は情報で知っていた。
「どちらにしてもこのままだと、キミ達にはバッドエンドしか待っていない。だったら、ハッピーエンドに繋がる可能性として、自分を信じてみない?」
 そう言った有栖の目は力強く、真っ直ぐだった。それを見て、奉日本は彼女の組織に対する不信感は拭えないものだとしても、彼女の正義を実行する上では必要な場所なんだと感じた。
 奉日本はそんなことを思い、小さく笑うと冷蔵庫で冷やしていたプリンを三人分取り出し、トレイに乗せて、有栖達がいるテーブル席へと近づき、置く。
「これは?」
 突然のことに驚く三人だったが、代表するように有栖が質問する。
「サービスです。あと、余計な追加サービスで店主の独り言ですが……有栖さんは信じられる方ですよ? 彼女に助けられた経験者は、そう思ってます」
 奉日本は若者二人に笑顔を見せた。当人達は顔を見合わせ、そして、決意を固めるとゆっくりと頷いた。