有栖が提示した写真を見て、右京は全てを察しているようだった。そんな、彼に対して有栖は残酷にも続ける。
「カラーズの活動が派手になって看過できない状況になると必ずメンバーの一人が逮捕されてる。共通点はその全員が自首であり、髪の色が緑だということ」
 奉日本から見たテーブル席に座る者達の表情は悲痛に満ちたものだった。右京も、一色楓も、話す有栖でさえもだ。
「こっちの調査では全員が自首をする半年以内に暴行を受けているところを、結城達に助けられた経歴がある。推測だけど、彼等に暴行していた奴等もカラーズと繋がりがあると考えてる」
 金で雇っただけの繋がりですが、と奉日本は有栖の推測に対して補足する。それは音にはならないし、今、必要なことでもない。この情報の有無に関わらず、展開は先に進むからだ。
「カラーズの一人が捕まることで警察は面子が保てる。結城議員の息子は捕まらず自身は安全でいられる。カラーズはほとぼりが冷めるまで活動を自粛し、また機を見計らって活動する。それの繰り返し」
 有栖はそこまで話すと黙って、右京の反応を待った。全員が喉に渇きを感じているだろうが、飲み物に手を付けない。その行為が張り詰めている場の雰囲気を壊してしまいそうだからだろう。自然形成されたルールは、何故かしっかりと守られていた。
 そんな中、そろりと右京の手が有栖の置いた写真の一枚に延びた。
「彼等の中で釈放された人はいますか?」
「いいえ。全員が不自然なぐらいに自首してから長い取調べを受けて、不自然なぐらいに長い懲役を受けている」
 前半は当人が結城達の助けを信じて自白を粘り、結果的に警察が自首してきたことを理由に逮捕したのだろう。後半は何かしらの力が働いたと見るのが妥当。素晴らしいぐらいの出来レースだ、と奉日本は思った。
「そっか……」
 右京はそう呟くと、天を仰ぐ。そして、大きく息を吐いた。
「何だったらその写真を渡すから自分で調べてもらっても良いわ」
「いえ、そんな時間はないと思います」
 顔を正面に戻した右京は悔しそうな表情でそう言った。