「それで、一時的とはいえ捕まるわけだから楓には説明しておこうと思って……」
 経緯を説明したところで右京は楓を見た。ここから先は彼女の番らしい。
「縁から話を聞いて、ちょっと待つようにお願いしました。事情は理解したけど、やっぱり彼氏が捕まるのは嫌だったから、自分なりに調べてみようかと思いまして」
「それが、猫探し?」
「はい。飼い猫のノアールが逃げちゃったのは本当だったし、夜の街を探しながら情報も得れたら良いなって思いまして。夜に外に出る理由も必要だったし」

 ここまでの話を聞いて奉日本は頭の中で、簡易的に時系列を整理した。
 半年前に右京はカラーズに助けられ、その後、カラーズに参加。その数ヶ月後にカラーズに問題が起こり、その解決策で右京が自首を決意する。その話を聞いた一色楓が飼い猫を探すことを理由に、彼女なりに調査をしていて、その間は右京も自首を待った。一色楓の調査――この場合、表向きは猫探しだが、それでも心配した彼女の父親が有栖に猫探しの依頼をした、というところだろう。

「それで、楓ちゃんは何か情報を得られたの?」
「いえ、これと言って何も。だから、父に聞きました。猫探しの中でカラーズってグループの名前を聞いたけど、何それって」
「なるほど、良い度胸してるね」
「そうしたら、父は焦って、真剣に注意するように色々教えてくれました。違法ハーブのバイヤーで有名なグループだってことも。危ないから関わるなとも」
「その猫探しの依頼が自分にきたわけね。イチさん、心配してたんだろうね」
 やっぱり、と奉日本は自分の中で答え合わせを完了させる。
「嘘をついたことは後で父に謝ろうと思っています。それで、父から聞いた話を縁に伝えました」
「その話を聞いて、キミは自首を躊躇い――今に至るってわけね」
「……はい」
 右京はゆっくり頷いた。そして、顔を上げると、
「俺、もう頭がぐちゃぐちゃなんですよ。カラーズは俺を助けてくれた。恩返しをしたいのも本当なんです。でも、楓が嘘をついてるとも思えない。本当にカラーズが有名なバイヤーグループだとしたら、今まで捕まっていないのも理解できないし……」
 混乱したまま、頭の中身をそのまま吐き出す。そんな、彼に有栖は右手の掌を差しだし、彼を止める。
「ここからは自分が話す。キミが知らない情報で、真実よ。覚悟を持って聞いてね」