「どうしたんですか? 結城さん」
 その日、カラーズが集まる場所に、結城と右京、そして、金髪で体格の良い男――鮫島がいた。右京が来たとき、結城が頭を抱えて悩んでいたらしい。
「あぁ、右京か。ちょっと困ったことになってな」
「どうしたんですか? 俺に何かできるなら力になりますよ」
 右京の言葉に嘘偽りはなかった。彼は結城に助けられたことに恩義を感じていたし、それを返したいとも思っていた。
「結城、右京に協力してもらうのはどうだ?」
「鮫島、それは駄目だ。彼は関係ない。これまでも関わらないようにしてきただろ」
 鮫島の提案に結城は怒りを露わにし、睨みつけた。いつも冷静な彼が悩むのも、怒りを露わにするのも右京は見たことはなかった。だからこそ、聞いたのだ。
「俺も仲間ですから、話だけでも聞かせてください」
 少し困ったような表情で、結城が話してくれた内容に右京も驚いた。

 カラーズは共通の友人がヤクザと問題を起こし、許して貰う為に違法ハーブを売って、一定の金を納める約束をしていたこと。
 だけど、実際には売らずに全員がバイトで稼いだ金を納めていたこと。
 それがヤクザにバレて契約違反だと喚かれて、責任をとらされることになったこと。
「その責任って……」
「ヤクザ側のバイヤーが問題を起こして、警察に捕まりそうらしい。その身代わりに出頭しろって言われた」
「そ、そんな……カラーズは関係ないじゃないですか!」
「そんな正論は通じない。とはいえ、このまま無視していたら、誰かの命が危ない。そうなる前に俺がリーダーとして責任をとって自首するべきだろうな」
「バカ野郎、結城。お前が自首したら困る奴がいっぱいいるだろ。他にも困っている奴も助けてきたんだから」
 どうやら鮫島は何度も結城を止めているようだった。そこで、鮫島が代わりに自首しようとすると戦力である彼が抜けるとヤクザが力に任せて更なる無理を強制する可能性があるらしく、抑止力で必要だと結城が止める。
「何か、他の方法はないんですか?」
 そのやり取りを見て、右京が尋ねる。
「時間が稼げれば良いんだが。もう少しでヤクザ側にとって致命傷ともいえる証拠が掴めそうなんだ。それさえ出来れば、相手ももう無理な要求はできないはずだ。だけど、その時間が……」
 そこで頭を抱えた結城を見て、右京は決心して言った。
「だったら、俺が自首して一時的な時間を稼ぎます。その間にその証拠を掴むってのはどうですか?」