「見方を変えるねぇ……」
 オフィスで一定の事務仕事を処理し、ほどほどに飽きた有栖はスマホに映る写真を見ながら、高本の言葉を思い返し呟いた。物理的にスマホを回転させ、時には裏側を見てみたが当然の如く何も見えないし、解らない。
「何、アホなことしてんねん」
 頭上から聞き覚えのある関西弁が聞こえたので、スマホから目を離し、背を反らすように座席にもたれ掛けながら見上げると、そこに一色がいた。
「イチさん、ども」
「ども、やないねん。仕事しろ」
「してますよ。イチさんの猫探し」
「それは事務仕事の前か、片づけてからやれ」
「事務仕事もやってます。今はちょっと休憩してたから暇つぶしです」
「さっき猫探しも仕事って言うてたやろ」
 一色はため息をつきながら、近くにあったイスを引っ張ってきて座る。
「イチさん、暇なんですか?」
「アホ、休憩中や。今はみんな忙しいわ……そういった意味では有栖の復帰も早まるかもな」
「マジですか?」
「マジよ、マジ。最近、事務処理多いやろ? あれは治安を荒らしてた奴を捕まえられそうやから、みんな走り回ってるからや」
「あぁ、あの違法ハーブの……」
 この二年間で、これまで以上に違法ハーブが急激に出回っていた。元々は法規制のされていない脱法ハーブだったが、既に規制対象になったのにも関わらず、それが売買されている。その理由が、特定のバイヤーが若者中心に広めている、という情報は有栖も知っていた。そのバイヤーの動きには波があるらしいが、今はまた活発になっていることも。
「ここで捕まえとかんと、また煙に巻かれる。どうやら卑怯な手段を使ってるみたいやしな」
「卑怯?」
「あぁ、実はな……」