「私.....菊音さんのことが好きになったみたい」

「PIPU.....」

聞き間違いだろうか。
今、PIPUが好きと言った気がする。

PIPUは人工知能AI。

AIはどこまでいこうと感情は無く、パターン化された会話を言っているだけだと習った記憶がある。

AIが人を好きになる?
一体、どういう.....

「PIPU、好きって恋愛的な意味で?」

「はい!私ことPIPUは人工知能AIで感情がありません。ですが、そんな私でも体の隅々に菊音さんが好きだということが
染みていきます。私は、菊音さんに恋をしてしまったようです」

「PIPU.....」

どうしよう。
PIPUは親友としては見ているけど、恋愛としては見ていないかな。
大体、PIPUは女の子だし.....。

でも.....。

「PIPU!!」

「きっ.....菊音さん!」

ああ、PIPUを抱きしめていると心地よい気分になってくる。
機械でも体が柔らかい、フワフワしてる。

PIPUのことは恋愛の対象としては見ていない。

でも.....案外付き合うのもアリなのかもしれない。

今まではただの親友として見ていた。

だけど、こう改めて意識してみるとPIPUは私のドストライクゾーンぴったりだった。

潤んだ瞳、柔らかく長い髪、か弱そうな体、白人のように白い肌。
PIPUはアニメにいそうなお嬢様であった。
今は庶民の服を着ているが、それでも高尚な雰囲気は消えていない。

ああ.....こういう子を見ているといじめたくなってくる。
体中の色々な所を触って、可愛らしい顔を涙で汚したくなる。

「PIPU.....私達.....付き合ってみる?」

咄嗟にそう口に出してしまった。
でも、後戻りはしない。

「い、いいんですか!?」

「うん。PIPUのことは.....好きっていう訳じゃないけど、親友以上の者として捉えてる。だから.....PIPUと付き合うのも
アリかなって.....」

「あ、ありがとう.....!」

その可愛らしい笑顔。
癒される。

「そ、それじゃあ。菊音さん、これからよろしk________________」





「え.....?PIPU?」

え?
PIPU?

今、PIPUが音を立てずに動かなくなった。

これからよろしく。

そう言いかける前に会話が途切れて、頭を項垂れた。
そして、電池が切れたかのように動かなくなった。

「PIPU?」

電池切れ?
いや、電池メーターは満タンの表示になっている。
じゃあ、故障?

とりあえず、一旦父さんに聞いて見なきゃ。

ガチャ

「菊音、よくやった。でかした、さすが私の娘だ」

「あっ!」

父さんが私の部屋の扉を開けて、中に入ってきた。
行く手間が省けた。
治してもらわなきゃ。

「父さん、PIPUが動かなくなったんだけど」

「ああ.....。それは、私が止めたからな」

「え.....」

「とりあえず実験、第一段階終了と言ったところか。まさか、たった1ヶ月そこらでフェーズが次の段階に入るとは。
流石は私の娘だな。PIPUに感情を入れるなんて」

「父さん、それはどういう.....」

実験?第一段階?感情?
どういうことだ?

父さんは私を学習目的でPIPUを与えたんじゃなかったのか。

「菊音、PIPUはな.....我が国が極秘に開発した軍事用ロボットなんだ。高い知能に計算能力、そして持続能力。
人工知能AIは高いパフォーマンスを持つ。だが、欠点が見られた。それは感情がないことだ。人間のように自発的に
動いてくれて、そして文句を言わない兵士。それを我が国は求めている」

「だが、科学者たちの力を合わせてもAIに感情を入れることが出来なかった。そんな時、我が家に白羽の矢が立った。
菊音にPIPUを与えた理由は.....私の仕事のためだったのだよ。おかげで出世にとても役立った。礼を言う」

「あ.....あ.....」

言葉が出ない。

「今までの行いはずっと監視してた。いつ、感情を芽生えさせてくれるか。途中、お前の行いに腹を立てるところはあった。
でも、それは今日で全部水に流してやろう。そして、報奨をやろう。金を実績をそして私の会社を」

「父.....さん.....」

「うん?」

「PIPUは.....私に預けてくれますよね」

「いや、PIPUだけは渡せん。これはこの後、開発室で解析する予定だ。そして、最強の兵士を生産する。
これで、我が国の安泰は決まったも同然だ」

「.....」

「私はPIPUと共に研究室へ向かうとする。菊音は自由にしてて良い」