PIPUが来てから何ヶ月経っただろう。

あれから、私は学校では勉強をして、家に帰ったらPIPUと生活する。
アイドルの推し活生活は最初こそは禁止していた。
だが、禁断症状が出始めて深夜の時間帯にこっそり見ることにした。

でも後で考えれば勿体ないことしたなあって思う。
なぜなら、PIPUに監視システムは付いていなかったからだ。

PIPUと一緒にアイドルの配信を見た次の日に、両親は何も言ってこなかった。
通常運転であった。

今もPIPUと有名アイドルの配信を見ている所だ。

「きゃあーーーーーーーーー!!、仁ーーーーーーーーーー!!」

絶叫。
仁とは私が一番推すアイドルの名前だ。

今、動画でアップで映し出されて軽く興奮している所。

「もう!菊音さん、うるさいですよ。今深夜で両親が寝ているっていうことを忘れないでくださいね」

「ああ.....ごめんごめん。興奮が抑えきれなくて.....」

ああ.....この光景をどれだけ望んだのだろう。
学校でお嬢様たちと囲まれて、優雅に話をするようなものは望んでいない。
私が望むのはもっとお互いのことをさらけ出したような関係。

その関係をどれだけの間、望んでいたのだろう。
少し予想だにしない形でその望みは叶った。

そう.....親友とテレビを取り囲み画面の中にいる人に声援を送る。

同級生には見せられない姿だ。
だけど、私は満足している。

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「ああ.....面白かった」

配信はあっという間に終了した。
いつも、孤独を感じていた。
配信を見ている間の私は孤独で時間が進むのが遅く感じた。
自分がしたいことなのに早く終わって欲しいとさえ思っていた。

でも、今日の時間は濃密だった。
他の人と押しを語り合う、それだけでこんなにも充実した時間を迎えるなんて。

時間を忘れて、今日は配信の最後まで見てしまった。
今何時だろう。

「PIPU、今って何時.....?」

「今の時間帯は2時です!菊音さん熱中しすぎですよ、いくら明日が休日だとはいえ」

「少し.....はしゃぎすぎちゃったね。でも、PIPUも結構熱中してたよ」

「わ、私は別にアイドルが好きというより.....」

「え?」

PIPUが頬を赤らめて紅潮している。
どうしたのだろう、使い過ぎで機械だから少し調子が狂っちゃったのかな。

「PIPU.....顔が赤いよ。大丈夫?」

「だ、大丈夫です。私は正常です!」

本当に大丈夫なのかな。

「.....でもちょっと疲れましたね。少し.....菊音さんの太ももで寝ていいですか?」

「いいよ!私、PIPUに無理しすぎちゃったね」

やっぱり、長時間の視聴はきつかったようだ。
PIPUはその姿勢を崩して、私の膝に頭を置く。
よっぽど疲れたようだ。

でも、この感情何だか痒いな。
前までは私に少し遠慮した対応だったのに。
今では私に体を預けるようになるなんて。

「菊音さん.....」

「うん?どうしたの、PIPU」

「菊音さんに話したいことがあります」

「え?なになに?何でも言っていいよ」

「それじゃあ、言いますね」

PIPUは何を言うのだろう。
こんな改まって。
先ほどまで寝ていた姿勢を起こして、私の顔を見つめて。
真剣なまなざしで私の目を真っすぐに見てる.....。

「菊音さん」

「はい!」

「私は.....菊音さんのことが好きになったようです」

「へ.....?」

AIの恋愛。
どうやら、私は新たな道を開拓してしまったようだ。