AIに感情を入れてみようと思う

「次は何しましょうか、菊音さん」

「あ.....。ああ、じゃあ料理でもするか」

まさか私が将棋で負ける時が来るとは。
私はアイドルと同時にゲーム好きでもある。
単純なビデオゲームは勿論、将棋やオセロなどのパズルゲームも得意だ。

県でも有数の実力者だと自負している。
だが、そんな私でも負ける日が来るなんて。
驚きを隠せない。
こんな高性能の機会、なぜ私に渡したのか不思議だ。

「菊音さん、ぼーっと立ってどうしたんですか?」

「ああ.....ごめんごめん。ちょっと考え事をしてたよ」

なんだろう、私らしくないな。
こんな不思議な気持ちいつぶりだろうか。
言葉には言い表せない。
が、何とも心地よい。

全力で誰かと戦ったのは久しぶりだ。

まあ、それはそれとして。
今はキッチンに行って料理をするとするか。

特に意味はない。
が、私は料理を作ることが好きだ。

週に1回、両親がいないときにこっそり料理を作ったりする。

「PIPU。それじゃあキッチンに行くか」



「菊音さん、何を作るつもりですか?」

「うーん。無難にラーメンを作ろうと思う」

「ラーメンですか。良いですね!」

「.....ん?」

「どうしましたか、菊音さん?」

私、ラーメンを作るって自然と答えちゃった。
今までの私ならパンケーキとか女の子らしいものを作ろうとしていたのに。

どちらかというと、私はラーメンの方が好きだ。
だが、親にバレるということで香りがきつくないパンケーキを良く選ぶ。
ラーメンにするとニンニクの香りが部屋中を充満するからだ。
そんな香り、親は発狂ものだろう。

なのに、今日にいたってはラーメンを選ぶなんて。

「菊音さん、私は料理が苦手です。ですが、美味しく作れるよう頑張ります」

「あ、ああ.....。黒焦げにならないように頑張らないとね」

何だかさっきから不思議な気分になる。
この子といると、本当の自分をさらけ出したくなる。

「ふふっ.....」

「.....?どうしたんですか、菊音さん。もしかして、私の顔に何かついてたりしますか?私こう見えても美容には
力をかけてるんですよ」

「ロボットに水は危ないんじゃないの?」

「いいえ、そこは大丈夫です。私たちは普通の人間と同じような性能になるように作られていますから。
体の中は機械が入っていますが、皮膚は人間と同じように作られているんですよ」

なんだろう.....。

今までの私には冗談を言い合えるような仲の友達はいなかった。
相手を傷つけることを恐れて、相手を否定することなど出来なかった。

今思えば、それが私の本当の自分をさらけ出せない原因だったのだろう。

でも、PIPUといると自然と心を許せる。

「.....よし!それじゃあ、PIPU。鍋に水を入れて沸騰させて」

「はい!了解しました」

そこから、私たちの料理は始まった。

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「.....菊音さんは料理好きなのですか?」

「え?」

しばらくして
麺を煮て、野菜をいためている時PIPUがそう聞いて来た。

「ああ.....うん。私、料理が好きでさ。将来、ラーメン屋さんを作りたいと思っているんだよね」

「あ.....」

しまった.....。
もしかしたら、私は両親に監視されているかもしれないんだった。
両親に知れたら、顔に血が上りそうだ。

両親は私に自分の会社の経営を継がせたいと思っている。
早く発言を訂正しなければ。

「あ.....いや、冗談冗談。今のは冗談なんだよね。本当は会社の経営者になりたいんだよね」

「.....そうですか。私はどちらであろうと菊音さんの夢を応援します。ただ.....菊音さんは本当にい者になりたいのですか?
今の発言には菊音さんの本音が感じられませんでした」

「.....そ、そう?」

って言わないと、両親に怒られるかもしれないし.....。

うう、さっきからこの子私のことをじっと見つめているよ.....。

「.....」

ずっと見つめてくる。
もしかして、この子嘘だって疑ってるのかな。

もしそうなら早く本音に聞こえるように言わないと。

「はは.....。これは本心だよ、私の夢は.....」

早く言わないと、私の夢は会社経営だって。
言わないと.....。

「.....」

いいのか?
このままで。
また、私の気持ちは隠して優等生の私を演じて。

いいや、よくない。
せっかく出来た本音を言える友達だ。

私の夢は。

「私の.....」

「私の夢は.....ラーメン屋さん。美味しいラーメンを作って人々を笑顔にさせたい。それが、私の夢.....!」

「.....今のは本心ですね!とても素敵な夢です。」

ああ、言ってしまった。
本当の私をさらけ出してしまった。
でも、なんだか達成感を感じる。

PIPUの微笑んだ笑顔を見て、そう感じる。
ああ、言ってよかったと。

「PIPU?私の趣味も言っていい?」

「はい!菊音さんの趣味、聞きたいです。私に話してくれませんか?」

両親に怒られてもいい。
だけど、今日だけは、今日だけは。

「PIPU、私達.....」

「友達だね」

私の友達と語りあいたい。

「はい!菊音さんは私の大切な友達です!」

「うん.....!」

そこから、私たちは本音をぶつけ合った。
私の趣味、私の夢、私が気になっている人。

その日は生まれて初めて本当の私を出した。