「菊音.....AIについて興味はないか?」
「え?」
その日はいつものように過ごした。
学校で真剣に授業を聞き、友達と昼食を食べて、そして生徒会の仕事をする。
そう.....いつものように学校で優等生の私を演じていた。
そして、家に帰って玄関を開けるなり父は矢継ぎ早に私にそう聞いた。
いつもは帰ったら私に学校でやったことを聞いてくるはずなのに。
私が受けた評価だけしか興味がないはずなのに。
父はいつものように平静を装うことはなく、ニコニコと笑っている。
それは本心であり、息遣いやしぐさから興奮が抑えきれないことが分かる。
父をとりこにするそのAIというもの、少し気になった。
「父さん、AIとはどういうことですか?新しい習い事ですか?」
だが、自ずと次に出てくる言葉は予想できる。
私が演じる優等生を語りだすだろう。
案の定、父は自分の理想を恍惚とした表情で語りだした。
「菊音はこの前テストで学年1位を取ったそうだな」
「はい」
「だが、そんなことで浮かれているようでは困る。1位とは当たり前の状態であり、誇るべきことではないからだ。
菊音にはまだ完璧には届かない。そこで、私はある物に目を付けた。それは菊音をより高みへと昇らせてくれるであろう」
完璧、高み.....。
父は言葉巧みに私を扇動し、自分の都合のいいように持ってくる。
どうせ、仕事の案件だろう。
だが、ここで反論すれば何を言われるか分からない。
いつものように『YES』と返事するとするか。
「それで、その目を付けたものとは何でしょう」
「それはだな.....菊音の部屋にもう置いてある。今日は勉強を1時間抜いて、それに触れてみろ」
「はい」
そうして、父は私の部屋へと歩いていった。
長い長い廊下の末に私の部屋はある。
私の家は金持ちだ。
日本でも指折りの富豪の家だ。
高級住宅街のなかでも一層目立つ私の家。
少し上った山のふもとに私の家は建っている。
周りは林や木で囲まれていて、庭には教室ほどの池がある。
風が木々を通り抜けるその音が心地よい。
その中心に立つ家の玄関をくぐると、そこは映画にあるような西洋風の家。
長い廊下に広い部屋、豪華な花瓶によく分からない絵画。
それらは両親の努力の成果だろう。
蛙の子は蛙か.....。
だけど、私は普通の家に生まれたかった。
普通の家に生まれて、自由に暮らし、友達と馬鹿をする。
空想の物語。
父はそんな私の気持ちなど知らないだろう。
私は両親に従順な犬だと思っているらしい。
事実だが。
ガチャ
「人工知能AI、通称PIPUだ」
そう言って父は私の部屋の扉を開けた。
「.....起動」
部屋の中心にある人間。
非常に精巧に作られた人間。
長髪の髪をなびかせて、可愛らしいスカートをはいたそのロボットは私の顔を見るなり急に動き出した。
「.....菊音さん、よろしくお願いします」
そのロボットは低音のよく響く中性の声を響かせた。
__非常によくできている、人間だと言われれば信じるだろう。
そう思い、私はそのロボットをじろじろと見る。
その女の子の見た目をしたロボットは臆することなく、私に言った
「初めまして、PIPUと申します。私は人間ではなく人工知能です。ですが、菊音さんと一緒に暮らすことを楽しみに
思っている自分がいます」
「え.....?」
暮らす.....?
一瞬戸惑った。
__一体この子は何を言っているのだろう。
困惑している私を察して、父は私に言った。
「菊音、今日からこのロボットと暮らしてもらうことになる。仲良くするんだぞ」
「え.....」
__そんな、私の唯一の夜の楽しみが
「え?」
その日はいつものように過ごした。
学校で真剣に授業を聞き、友達と昼食を食べて、そして生徒会の仕事をする。
そう.....いつものように学校で優等生の私を演じていた。
そして、家に帰って玄関を開けるなり父は矢継ぎ早に私にそう聞いた。
いつもは帰ったら私に学校でやったことを聞いてくるはずなのに。
私が受けた評価だけしか興味がないはずなのに。
父はいつものように平静を装うことはなく、ニコニコと笑っている。
それは本心であり、息遣いやしぐさから興奮が抑えきれないことが分かる。
父をとりこにするそのAIというもの、少し気になった。
「父さん、AIとはどういうことですか?新しい習い事ですか?」
だが、自ずと次に出てくる言葉は予想できる。
私が演じる優等生を語りだすだろう。
案の定、父は自分の理想を恍惚とした表情で語りだした。
「菊音はこの前テストで学年1位を取ったそうだな」
「はい」
「だが、そんなことで浮かれているようでは困る。1位とは当たり前の状態であり、誇るべきことではないからだ。
菊音にはまだ完璧には届かない。そこで、私はある物に目を付けた。それは菊音をより高みへと昇らせてくれるであろう」
完璧、高み.....。
父は言葉巧みに私を扇動し、自分の都合のいいように持ってくる。
どうせ、仕事の案件だろう。
だが、ここで反論すれば何を言われるか分からない。
いつものように『YES』と返事するとするか。
「それで、その目を付けたものとは何でしょう」
「それはだな.....菊音の部屋にもう置いてある。今日は勉強を1時間抜いて、それに触れてみろ」
「はい」
そうして、父は私の部屋へと歩いていった。
長い長い廊下の末に私の部屋はある。
私の家は金持ちだ。
日本でも指折りの富豪の家だ。
高級住宅街のなかでも一層目立つ私の家。
少し上った山のふもとに私の家は建っている。
周りは林や木で囲まれていて、庭には教室ほどの池がある。
風が木々を通り抜けるその音が心地よい。
その中心に立つ家の玄関をくぐると、そこは映画にあるような西洋風の家。
長い廊下に広い部屋、豪華な花瓶によく分からない絵画。
それらは両親の努力の成果だろう。
蛙の子は蛙か.....。
だけど、私は普通の家に生まれたかった。
普通の家に生まれて、自由に暮らし、友達と馬鹿をする。
空想の物語。
父はそんな私の気持ちなど知らないだろう。
私は両親に従順な犬だと思っているらしい。
事実だが。
ガチャ
「人工知能AI、通称PIPUだ」
そう言って父は私の部屋の扉を開けた。
「.....起動」
部屋の中心にある人間。
非常に精巧に作られた人間。
長髪の髪をなびかせて、可愛らしいスカートをはいたそのロボットは私の顔を見るなり急に動き出した。
「.....菊音さん、よろしくお願いします」
そのロボットは低音のよく響く中性の声を響かせた。
__非常によくできている、人間だと言われれば信じるだろう。
そう思い、私はそのロボットをじろじろと見る。
その女の子の見た目をしたロボットは臆することなく、私に言った
「初めまして、PIPUと申します。私は人間ではなく人工知能です。ですが、菊音さんと一緒に暮らすことを楽しみに
思っている自分がいます」
「え.....?」
暮らす.....?
一瞬戸惑った。
__一体この子は何を言っているのだろう。
困惑している私を察して、父は私に言った。
「菊音、今日からこのロボットと暮らしてもらうことになる。仲良くするんだぞ」
「え.....」
__そんな、私の唯一の夜の楽しみが