チン……。
剣を鞘へとしまう小気味よい音が、魔族消滅後の静けさの後に響く。
遅れて木々のざわめきの音が耳に届いて戦いが終わったのだと意識が戻ってくる。
「やっちまいやがった……」
工藤は冷や汗を流しながら驚愕の呟きを漏らした。
彼だけでなく、周りの皆もあまりの剣術の凄さに言葉を失っていた。
目にも止まらぬ剣捌き。魔族の速さに余裕でついていけているように見えた。
強い。予想以上だ。
正直この世界の住人は皆、並の身体能力の者ばかりかと思っていた。
自惚れというわけではないが、覚醒した私達は特別な存在なのではないかと。
だがその考えは今目の前で完全に崩されたのだ。
アリーシャ姫のそれは充分に超人的と言えた。
私達だけでなく、彼女のような超越者もこの世界にはいるのだと新ためて知らされた瞬間であった。
「フィリア。無事か?」
「はい姫様」
アリーシャ姫は工藤達の元にいるフィリアさんに声を掛けた。
先程とは打って変わり、優しい笑みを浮かべている。
今しがたあの魔族を見事打ち倒した本人とは到底思えない程に、少しあどけなさの残る可愛らしい表情であった。
「フィリアに付いてくれてありがとう。お陰で全力で戦う事が出来た」
「いえいえ! 姫様の為ならこんなのお安いご用だぜっ!」
工藤はやけに張り切って返答していた。
あれだけ驚きおののいていたというのに、姫の笑顔に再びやられたらしい。本当に調子のいいやつだ。
椎名はそんな工藤を見つめ、腕を組み冷ややかな視線を送っていた。
「あと、ハヤト殿……と言ったか」
アリーシャ姫は今度はこちらに向き直った。
凛とした涼やかで華やかな表情に、一時呼吸するのも忘れてしまいそうなほどに見惚れてしまう。
健全な男子高校生には本当に目の保養だ。
「はい」
「魔族を見破ってくれて感謝する。君がいなければどうなっていたか」
確かにこのまま気づかなければ不意討ちでやられていた可能性も否定出来ない。
だが道中何もしてこなかった所を鑑みると、そう言った目的ではなかったのかもしれないとも考えていた。
それにこれはまだ仮説の段階でしかないが、魔族は一貫して人間に対する油断と自信があるように思えるのだ。
だからそんな卑怯なまね、本来はしてはこないのかもしれない。
「いえ。私は魔族の存在を見破っただけで、倒したのはアリーシャ姫ですから。私達だけで魔族を相手取るとなると、恐らく苦戦は免れなかったかと」
「そうなのか? 私は以前君たちが魔族を倒したと聞いているが」
アリーシャ姫は怪訝そうに瞬きしてこちらを見つめる。
頬にかかる艶やかな髪が、風に晒されてふわりと揺れた。
「それはそうですが、魔族に対する有効な攻撃方法に乏しいのが正直な所です。普通の魔物相手ならそれなりに戦えますが」
そうなのだ。
結局私達は精神世界の住人である魔族に対しては、未だに有効な攻撃方法を見つけ出してはいない。
この一週間それなりに自身の能力向上に努めたが、それは身体能力の向上や、自身の能力をうまく使いこなせるようになった、程度のものだと把握している。
もしかしたら互いに隠し弾のような攻撃方法を持っているかもしれないが、仲間内で隠す必要性を感じないため、その辺のことは期待していない。
ということで今の所、グリアモールを倒した時の私の攻撃方法だけが唯一の手段となっているのが現状だ。
この先ヒストリア王国を訪ね、その手段を得ることも目的の一つとなるだろう。
剣を鞘へとしまう小気味よい音が、魔族消滅後の静けさの後に響く。
遅れて木々のざわめきの音が耳に届いて戦いが終わったのだと意識が戻ってくる。
「やっちまいやがった……」
工藤は冷や汗を流しながら驚愕の呟きを漏らした。
彼だけでなく、周りの皆もあまりの剣術の凄さに言葉を失っていた。
目にも止まらぬ剣捌き。魔族の速さに余裕でついていけているように見えた。
強い。予想以上だ。
正直この世界の住人は皆、並の身体能力の者ばかりかと思っていた。
自惚れというわけではないが、覚醒した私達は特別な存在なのではないかと。
だがその考えは今目の前で完全に崩されたのだ。
アリーシャ姫のそれは充分に超人的と言えた。
私達だけでなく、彼女のような超越者もこの世界にはいるのだと新ためて知らされた瞬間であった。
「フィリア。無事か?」
「はい姫様」
アリーシャ姫は工藤達の元にいるフィリアさんに声を掛けた。
先程とは打って変わり、優しい笑みを浮かべている。
今しがたあの魔族を見事打ち倒した本人とは到底思えない程に、少しあどけなさの残る可愛らしい表情であった。
「フィリアに付いてくれてありがとう。お陰で全力で戦う事が出来た」
「いえいえ! 姫様の為ならこんなのお安いご用だぜっ!」
工藤はやけに張り切って返答していた。
あれだけ驚きおののいていたというのに、姫の笑顔に再びやられたらしい。本当に調子のいいやつだ。
椎名はそんな工藤を見つめ、腕を組み冷ややかな視線を送っていた。
「あと、ハヤト殿……と言ったか」
アリーシャ姫は今度はこちらに向き直った。
凛とした涼やかで華やかな表情に、一時呼吸するのも忘れてしまいそうなほどに見惚れてしまう。
健全な男子高校生には本当に目の保養だ。
「はい」
「魔族を見破ってくれて感謝する。君がいなければどうなっていたか」
確かにこのまま気づかなければ不意討ちでやられていた可能性も否定出来ない。
だが道中何もしてこなかった所を鑑みると、そう言った目的ではなかったのかもしれないとも考えていた。
それにこれはまだ仮説の段階でしかないが、魔族は一貫して人間に対する油断と自信があるように思えるのだ。
だからそんな卑怯なまね、本来はしてはこないのかもしれない。
「いえ。私は魔族の存在を見破っただけで、倒したのはアリーシャ姫ですから。私達だけで魔族を相手取るとなると、恐らく苦戦は免れなかったかと」
「そうなのか? 私は以前君たちが魔族を倒したと聞いているが」
アリーシャ姫は怪訝そうに瞬きしてこちらを見つめる。
頬にかかる艶やかな髪が、風に晒されてふわりと揺れた。
「それはそうですが、魔族に対する有効な攻撃方法に乏しいのが正直な所です。普通の魔物相手ならそれなりに戦えますが」
そうなのだ。
結局私達は精神世界の住人である魔族に対しては、未だに有効な攻撃方法を見つけ出してはいない。
この一週間それなりに自身の能力向上に努めたが、それは身体能力の向上や、自身の能力をうまく使いこなせるようになった、程度のものだと把握している。
もしかしたら互いに隠し弾のような攻撃方法を持っているかもしれないが、仲間内で隠す必要性を感じないため、その辺のことは期待していない。
ということで今の所、グリアモールを倒した時の私の攻撃方法だけが唯一の手段となっているのが現状だ。
この先ヒストリア王国を訪ね、その手段を得ることも目的の一つとなるだろう。