俺と椎名、そしてあの金属野郎はお互いに攻防を中止して対峙しあう。
「おい、椎名、アイツに効きそうな攻撃はあるか?」
隣にいる椎名に一声かけると彼女はふうと小さく息を吐いた。
「ん~、とりあえずかまいたちは硬くて効かなかったから今んとこ打撃しか手はないかも」
椎名は金属野郎から目を離さずにそうとだけ答えた。
かまいたちってのはさっきの風の技のことだろう。
真空の刃で敵を切り裂くとかそんな技だと想像する。
「そっか……俺も次はもっとおもいっきりぶん殴ってみるわ」
「え? さっきの本気じゃなかったの?」
椎名が驚いた声を上げた。
先程まで金属野郎から全く目を離そうとしなかったのに、目を見開きこっちを見た。
「あ? そりゃ……不意打ちだったしな。まあとにかくよ、ちょっと俺に任せてみてくれ」
そんな驚くとこかと思いつつ、そう言って俺は一歩前へと出た。
バチンと掌に拳を当て、気合いを入れる。
「そう……。じゃあちょっと様子を見ようかしら」
そんな俺を見て椎名は半歩後ろに下がった。
それを確認すると、俺は地面に手をついて手の周りに意識を集中させる。
「はああああっ……」
地面から這い上がってきた土が俺の腕を覆っていく。
俺はこの一週間で無い頭を捻って考えた。
土を使ってどう戦っていくかってことだ。
まず思ったのは岩を身体全体にまとわりつかせて全身鎧のようにして戦うことだ。
でも結果は微妙だった。
確かにそうすれば防御力は上がるが、岩が重くて動きづらいのだ。
それに攻撃してもすぐに岩が砕けてしまい、耐久力も乏しいと来た。
こんなんで実戦で通用するわけがない。
それじゃあと、今度は耐久力を上げるために岩を圧縮し、それを腕のみに纏う方法を試した。
圧縮すること自体は可能だったがそれには意識の集中と時間が掛かった。
せめて数分から数十分は欲しい所だ。
だが戦闘中にそんな時間が捻出できるとは思えなかったし、とりあえずそれも諦めた。
そして最後に行き着いたのが今の状態だ。
俺は最初、土を硬く、頑丈にすることばかり考えていた。
だがある時思ったのだ。
その逆ならどうなんだろう。
柔らかい、重くない土ならば?
「サンド・ガントレット」
俺の力ある言葉によって腕に纏った土が形容を変えた。
土は細かい粒子のようになり、流動的な砂の鎧と化して俺の周りを浮遊している。
「しっ!」
俺は地を蹴った。
一呼吸でヤツの眼前まで迫り、渾身の右ストレートを振り抜く。
ドゴシャアッ、という音を立てて、再びヤツは数十メートル先の森の中まで吹き飛んだ。
途中二、三本の木を吹き飛ばした。
我ながら予想以上の威力だ。
だがやつはそんな事ではめげなかった。
粉塵が巻き起こり、一瞬ヤツの姿を見失ったその瞬間。
ヤツは俺の左側から現れて拳を見舞ってきやがったのだ。
「見えてるっての」
だがそれはお見通し。
本来ならば充分な目眩ましになっただろうが、生憎俺は地を駆ける奴の動きが手に取るように分かる。
奴の拳を悠々と避わし、カウンターでもう一発全力の拳をお見舞いした。
すると今度は奴はは吹っ飛んでは行かなかった。
俺の拳をその顔面にまともに受け、それを踏ん張って耐えたのだ。
顔がひしゃげはしたものの、生き物と呼べるのかも不明な金属野郎にダメージがどれ程あるかは分からない。
そんな矢先、奴は顔をひしゃげさせたまま、背中に腕を回してきた。
まんまとそれに掴まってしまった俺は、その場で羽交い締めにされそうになる。
「くっ!?」
身体の自由を奪われて、ヤツの両腕に力が込められていく。
その力は相当強い。このままでは絞め殺されてしまいかねない。
「ぐっ!? ……くうあっ……」
凄い力だ。
形は人だが、首が曲がっても動いている位だから、生き物というよりは機械に近いのかもしれない。
そんな事を考えている内に更に、更にと奴の腕に込められる力が強くなっていく。
「舐めんなオラアッ!」
俺は自身の両腕に渾身の力を込めた。
その勢いで奴の両腕もひしゃげた。
予想外の俺の力に金属野郎はふらふらと二、三歩後退った。
「エンチャント・ストーム」
そこに現れたのはもちろん椎名だ。
彼女の両の拳の周りが竜巻のように風が畝っているのが見て分かる。
凄まじいエネルギーがそこに収束されているに違いなかった。
俺はふと、椎名の服が吹き飛んでいた理由に納得しつつ、両腕に纏う竜巻がそれぞれ逆回転だと気づく。
そのままエンチャント・ストームと呼ばれたそれを、金属野郎の右腕に突き立てる。
その衝撃で金属野郎の腕はギチギチと音を立てた。
そして右腕の肘から上をぐしゃぐしゃにしてしまった。
どれ程の負荷が懸かったのか。とりあえずこれで右腕は使い物にならなくなっただろう。
金属野郎はそれでも何事も無かったかのように椎名に蹴りを放った。
だが椎名はそれをさらりと避わす。
綺麗な身のこなしだなと思った。
そんな事を考え気を取られている俺を、椎名は掴んで空へと放る。
「はい~っ!?」
訳も分からず空に舞う体。
その直後、風が更に俺を吹き上げて、高く高く上昇していったのだった。
「おい、椎名、アイツに効きそうな攻撃はあるか?」
隣にいる椎名に一声かけると彼女はふうと小さく息を吐いた。
「ん~、とりあえずかまいたちは硬くて効かなかったから今んとこ打撃しか手はないかも」
椎名は金属野郎から目を離さずにそうとだけ答えた。
かまいたちってのはさっきの風の技のことだろう。
真空の刃で敵を切り裂くとかそんな技だと想像する。
「そっか……俺も次はもっとおもいっきりぶん殴ってみるわ」
「え? さっきの本気じゃなかったの?」
椎名が驚いた声を上げた。
先程まで金属野郎から全く目を離そうとしなかったのに、目を見開きこっちを見た。
「あ? そりゃ……不意打ちだったしな。まあとにかくよ、ちょっと俺に任せてみてくれ」
そんな驚くとこかと思いつつ、そう言って俺は一歩前へと出た。
バチンと掌に拳を当て、気合いを入れる。
「そう……。じゃあちょっと様子を見ようかしら」
そんな俺を見て椎名は半歩後ろに下がった。
それを確認すると、俺は地面に手をついて手の周りに意識を集中させる。
「はああああっ……」
地面から這い上がってきた土が俺の腕を覆っていく。
俺はこの一週間で無い頭を捻って考えた。
土を使ってどう戦っていくかってことだ。
まず思ったのは岩を身体全体にまとわりつかせて全身鎧のようにして戦うことだ。
でも結果は微妙だった。
確かにそうすれば防御力は上がるが、岩が重くて動きづらいのだ。
それに攻撃してもすぐに岩が砕けてしまい、耐久力も乏しいと来た。
こんなんで実戦で通用するわけがない。
それじゃあと、今度は耐久力を上げるために岩を圧縮し、それを腕のみに纏う方法を試した。
圧縮すること自体は可能だったがそれには意識の集中と時間が掛かった。
せめて数分から数十分は欲しい所だ。
だが戦闘中にそんな時間が捻出できるとは思えなかったし、とりあえずそれも諦めた。
そして最後に行き着いたのが今の状態だ。
俺は最初、土を硬く、頑丈にすることばかり考えていた。
だがある時思ったのだ。
その逆ならどうなんだろう。
柔らかい、重くない土ならば?
「サンド・ガントレット」
俺の力ある言葉によって腕に纏った土が形容を変えた。
土は細かい粒子のようになり、流動的な砂の鎧と化して俺の周りを浮遊している。
「しっ!」
俺は地を蹴った。
一呼吸でヤツの眼前まで迫り、渾身の右ストレートを振り抜く。
ドゴシャアッ、という音を立てて、再びヤツは数十メートル先の森の中まで吹き飛んだ。
途中二、三本の木を吹き飛ばした。
我ながら予想以上の威力だ。
だがやつはそんな事ではめげなかった。
粉塵が巻き起こり、一瞬ヤツの姿を見失ったその瞬間。
ヤツは俺の左側から現れて拳を見舞ってきやがったのだ。
「見えてるっての」
だがそれはお見通し。
本来ならば充分な目眩ましになっただろうが、生憎俺は地を駆ける奴の動きが手に取るように分かる。
奴の拳を悠々と避わし、カウンターでもう一発全力の拳をお見舞いした。
すると今度は奴はは吹っ飛んでは行かなかった。
俺の拳をその顔面にまともに受け、それを踏ん張って耐えたのだ。
顔がひしゃげはしたものの、生き物と呼べるのかも不明な金属野郎にダメージがどれ程あるかは分からない。
そんな矢先、奴は顔をひしゃげさせたまま、背中に腕を回してきた。
まんまとそれに掴まってしまった俺は、その場で羽交い締めにされそうになる。
「くっ!?」
身体の自由を奪われて、ヤツの両腕に力が込められていく。
その力は相当強い。このままでは絞め殺されてしまいかねない。
「ぐっ!? ……くうあっ……」
凄い力だ。
形は人だが、首が曲がっても動いている位だから、生き物というよりは機械に近いのかもしれない。
そんな事を考えている内に更に、更にと奴の腕に込められる力が強くなっていく。
「舐めんなオラアッ!」
俺は自身の両腕に渾身の力を込めた。
その勢いで奴の両腕もひしゃげた。
予想外の俺の力に金属野郎はふらふらと二、三歩後退った。
「エンチャント・ストーム」
そこに現れたのはもちろん椎名だ。
彼女の両の拳の周りが竜巻のように風が畝っているのが見て分かる。
凄まじいエネルギーがそこに収束されているに違いなかった。
俺はふと、椎名の服が吹き飛んでいた理由に納得しつつ、両腕に纏う竜巻がそれぞれ逆回転だと気づく。
そのままエンチャント・ストームと呼ばれたそれを、金属野郎の右腕に突き立てる。
その衝撃で金属野郎の腕はギチギチと音を立てた。
そして右腕の肘から上をぐしゃぐしゃにしてしまった。
どれ程の負荷が懸かったのか。とりあえずこれで右腕は使い物にならなくなっただろう。
金属野郎はそれでも何事も無かったかのように椎名に蹴りを放った。
だが椎名はそれをさらりと避わす。
綺麗な身のこなしだなと思った。
そんな事を考え気を取られている俺を、椎名は掴んで空へと放る。
「はい~っ!?」
訳も分からず空に舞う体。
その直後、風が更に俺を吹き上げて、高く高く上昇していったのだった。