「……いい感じだ」
俺は手の中の塊に意識を向け続けながら呟いた。
それと同時に額に吹き出した汗を拭う。
この一週間、暇を見つけては繰り返すこの行為に流石にだいぶ慣れてきてはいた。
かなりの根気はいったけど、ちょっとやそっとで根をあげるつもりは毛頭なかったのだ。
まず始めに土の中から一際硬そうな岩を見つけ、それを先日目覚めた土を操る能力を駆使して地中から取り出した。
そこから直径一メートルはあろうかというその岩に、何度も何度も圧力を加えていった。
地味な作業だったが丁寧に丁寧に少しずつ、隙間を埋めるように。
理論的なことは俺にはよく分からない。
だが全方向から圧力を掛けられた岩は段々と小さく固まっていき、カチコチに硬くなっていってくのが分かった。
その岩は延々と繰り返されるその作業の中で、やがて直径三十センチ程の大きさの灰色の石というよりは金属の塊のようになった。
それが昨日。
一晩寝て今朝からは周りの粗を少しずつ削ぎ落とす作業に入った。
相当に硬い石となったそれは、最終的に色艶のある直方体の物質へと変化した。
ここまでくればそれは石というよりステンレスとか、見たことはないけど鋼とか、そんな言葉がしっくり来るんじゃないかっていうほどのものになったのだ。
そして最後に仕上げとして形を思い描いていたように整える。
細やかな作業はかなりの時間と精神力を擁したが、それはようやくイメージ通りのものになったのだった。
修行の合間とはいえかなり頑張った。
「……ふう~」
長いため息とも取れる空気が肺から外に送られて、その勢いでというわけじゃないが、俺はそのまま後ろに倒れ込み、天を仰いだ。
見上げた空は青々と澄みきっていて、今の俺を祝福しているようにすら感じる。
やってやった……。
とにかくイメージ通りのものが出来た。
心は疲労感と同時に心地よい達成感に満たされて、その場に寝転がりながら、俺は一つ大きく伸びをした。
「はーっ!! ……やっと、やっとできたぜっ!」
「何が?」
「わひゃあっ!!?」
不意に掛けられた思いもよらない返答に柄にもない声が漏れ出て跳び上がる。
心臓が口から飛び出るかと思うくらいびっくりした。
俺は思わず脇に置いていたそれに手を伸ばし、後ろに隠す。
彼女は幸いなことに、俺が隠したそれの存在に気づいてはいないようだった。
不思議そうにこちらを見るその瞳には未だはてと疑問が浮かんでいる
俺は今しがた完成したそれを、腰に提げた巾着袋の中に慌てて押し込んだ。
別に気づかれても構いはしないのだが、こういうものはタイミングというものがある。
俺はきょとんとした表情でこちらを見ている彼女に出来る限り平静を装っていつものように振る舞った。
「いや椎名っ! お前心臓に悪いから! いきなり出てくんなよなっ!」
「おーげさね~。ちょっと声掛けただけじゃない」
特に悪びれる様子もなく、彼女は眉根を寄せて腕を組み、その場にすっくと立ってこちらを見下ろしていた。
俺は手の中の塊に意識を向け続けながら呟いた。
それと同時に額に吹き出した汗を拭う。
この一週間、暇を見つけては繰り返すこの行為に流石にだいぶ慣れてきてはいた。
かなりの根気はいったけど、ちょっとやそっとで根をあげるつもりは毛頭なかったのだ。
まず始めに土の中から一際硬そうな岩を見つけ、それを先日目覚めた土を操る能力を駆使して地中から取り出した。
そこから直径一メートルはあろうかというその岩に、何度も何度も圧力を加えていった。
地味な作業だったが丁寧に丁寧に少しずつ、隙間を埋めるように。
理論的なことは俺にはよく分からない。
だが全方向から圧力を掛けられた岩は段々と小さく固まっていき、カチコチに硬くなっていってくのが分かった。
その岩は延々と繰り返されるその作業の中で、やがて直径三十センチ程の大きさの灰色の石というよりは金属の塊のようになった。
それが昨日。
一晩寝て今朝からは周りの粗を少しずつ削ぎ落とす作業に入った。
相当に硬い石となったそれは、最終的に色艶のある直方体の物質へと変化した。
ここまでくればそれは石というよりステンレスとか、見たことはないけど鋼とか、そんな言葉がしっくり来るんじゃないかっていうほどのものになったのだ。
そして最後に仕上げとして形を思い描いていたように整える。
細やかな作業はかなりの時間と精神力を擁したが、それはようやくイメージ通りのものになったのだった。
修行の合間とはいえかなり頑張った。
「……ふう~」
長いため息とも取れる空気が肺から外に送られて、その勢いでというわけじゃないが、俺はそのまま後ろに倒れ込み、天を仰いだ。
見上げた空は青々と澄みきっていて、今の俺を祝福しているようにすら感じる。
やってやった……。
とにかくイメージ通りのものが出来た。
心は疲労感と同時に心地よい達成感に満たされて、その場に寝転がりながら、俺は一つ大きく伸びをした。
「はーっ!! ……やっと、やっとできたぜっ!」
「何が?」
「わひゃあっ!!?」
不意に掛けられた思いもよらない返答に柄にもない声が漏れ出て跳び上がる。
心臓が口から飛び出るかと思うくらいびっくりした。
俺は思わず脇に置いていたそれに手を伸ばし、後ろに隠す。
彼女は幸いなことに、俺が隠したそれの存在に気づいてはいないようだった。
不思議そうにこちらを見るその瞳には未だはてと疑問が浮かんでいる
俺は今しがた完成したそれを、腰に提げた巾着袋の中に慌てて押し込んだ。
別に気づかれても構いはしないのだが、こういうものはタイミングというものがある。
俺はきょとんとした表情でこちらを見ている彼女に出来る限り平静を装っていつものように振る舞った。
「いや椎名っ! お前心臓に悪いから! いきなり出てくんなよなっ!」
「おーげさね~。ちょっと声掛けただけじゃない」
特に悪びれる様子もなく、彼女は眉根を寄せて腕を組み、その場にすっくと立ってこちらを見下ろしていた。