それは若干照れているようにも見えるが、頬が少し赤いくらいで表情は硬いように感じられた。美奈のこの反応は不思議に思う。
違和感がありまくりなのだ。
「美奈? どうかしたのか?」
そう訊ねると、美奈は視線を逸らしつつ黙り込んでいた。
言い難い事なのか、逡巡しているように見える。
「美奈?」
もう一度名前を呼ぶとスッとこちらを伺うように見つめる美奈。
それから少しだけ言いにくそうに口を開いた。
「あの……ね? 私、隼人くんに無理してほしくない。それって危険だと思うから、出来ればその力はもう使わないでほしいなって思った。あの時の隼人くん、すごく怖かったから」
その言葉を聞いて私はハッとする。
確かにあの時美奈の助けがなければ実際どうなっていたか分からない。
もしかしたら皆に襲い掛かっていてもおかしくはなかったのだ。
美奈がそう言うのも無理はない。
私は自分の浅はかさを反省した。
一体何を浮き足だっていたのかと。
「そうだな。それに関しては私も今回で懲りている。二度と使うまい」
「うん、お願い」
美奈はそこで口の端は弛めてくれたものの、瞳の輝きだけは真摯で真剣そのものだった。
彼女にしてはすごく珍しい反応だ。
「……分かった」
「――うんっ!」
私はもう一度こくりと頷き肯定の意を示した。
そしたらようやく彼女は花のような笑顔を見せてくれた。
それに私は安堵する。
――にしても、だ。
魔族に対抗し得る手段が現状これしかないというのであれば、どうしようもない時が来たらこの攻撃方法に頼るしかないのだろうとも思う。
もちろんそんな事はおくびにも出さないが。
「あのさ、アツアツのところ悪いんだけどさ」
そこで椎名が再び口を開く。
アツアツの言い方が妙に刺々しい。見ればちらちらと私達二人を見ながら大袈裟に咳払いなどもしつつ。そこで少し距離が近すぎたかと気づく。
この時ばかりは私も美奈もびくんと体を跳ねさせ互いに距離を取った。
「おほんっ! ……えっと、何だ椎名」
「ま――まあいいけどさ……あのさっ。その攻撃って、プラマイゼロってわけにはいかないわけ?」
「ん?」
「いやさ、隼人くんが今言った、相手にぶつける力って私的に精神っていうか感情に近い気がするのよね。精神力ってさ、もっとこう透明っていうか、クリアな澱みないものだと思うのよ。別に何色にも染めなくていいんじゃないかなって。まあ言うだけじゃただの言葉遊びみたいなもんなんだけど……」
椎名も自信はなさげではあったが、私は素直に一理あるなと思う。
能力を使える私だから感じる。何となくではあるがそれはあながち間違っていないように思えた。
少なくとも諦めて力を使う事をやめてしまうよりはずっといい。
これから試してみる価値はありそうだ。
「ふむ……分かった。善処してみよう」
「うん、何も対策しないよりはいいでしょ? どうせ隼人くんのことだから……あ、まあいいわ。とにかく頑張ってみてよ」
「……そうだな」
そう言う彼女の言葉尻に何もかも見透かされている気がしつつ、彼女の心遣いにも感謝する。
ウインクしつつサムズアップをしてくる椎名はやはり誰よりも聡明で、理解のある女の子だ。
それにしても魔族に対する対抗手段はこれからの一番の課題だ。
グリアモールは撃退したとはいえ、この先魔族がこれ以上私達を狙って来ないとは到底思えない。
そうなれば戦いは避けられないだろう。
私はグリアモールのあの醜悪な姿を思いだしながら身震いしてしまう。
やはり私達にとって魔族との戦いというのは、全く以て自身の中で御しきれるような経験ではなかったのだから。
――――その後。
工藤と椎名の話もしようか持ちかけたが、大した話にはならなかった。
椎名からすると風と土の能力をそれぞれ得た、以上という事らしい。
まあ二人の能力は分かりやすいので説明は無用だろう。
更にこの先どうしていくかの話もしなければならなかったが、全員ここまで話すと最早お腹一杯という感じになった。
工藤に至っては少し前から完全に会話に入る事を諦めていたし、皆何となく真面目な話はこれ以上したくないなという雰囲気が漂っていた。
一旦休憩にしようかという時、部屋のドアを誰かがノックした。
小気味よい音が部屋の中に響く。
「はい」
返事をすると現れたのは村長のネムルさんだった。
相好を崩し私達四人を見回し口を開く。
「皆さま、少しお時間よろしいですかな?」
私達は顔を見合せつつ、村長を部屋に招き入れた。
違和感がありまくりなのだ。
「美奈? どうかしたのか?」
そう訊ねると、美奈は視線を逸らしつつ黙り込んでいた。
言い難い事なのか、逡巡しているように見える。
「美奈?」
もう一度名前を呼ぶとスッとこちらを伺うように見つめる美奈。
それから少しだけ言いにくそうに口を開いた。
「あの……ね? 私、隼人くんに無理してほしくない。それって危険だと思うから、出来ればその力はもう使わないでほしいなって思った。あの時の隼人くん、すごく怖かったから」
その言葉を聞いて私はハッとする。
確かにあの時美奈の助けがなければ実際どうなっていたか分からない。
もしかしたら皆に襲い掛かっていてもおかしくはなかったのだ。
美奈がそう言うのも無理はない。
私は自分の浅はかさを反省した。
一体何を浮き足だっていたのかと。
「そうだな。それに関しては私も今回で懲りている。二度と使うまい」
「うん、お願い」
美奈はそこで口の端は弛めてくれたものの、瞳の輝きだけは真摯で真剣そのものだった。
彼女にしてはすごく珍しい反応だ。
「……分かった」
「――うんっ!」
私はもう一度こくりと頷き肯定の意を示した。
そしたらようやく彼女は花のような笑顔を見せてくれた。
それに私は安堵する。
――にしても、だ。
魔族に対抗し得る手段が現状これしかないというのであれば、どうしようもない時が来たらこの攻撃方法に頼るしかないのだろうとも思う。
もちろんそんな事はおくびにも出さないが。
「あのさ、アツアツのところ悪いんだけどさ」
そこで椎名が再び口を開く。
アツアツの言い方が妙に刺々しい。見ればちらちらと私達二人を見ながら大袈裟に咳払いなどもしつつ。そこで少し距離が近すぎたかと気づく。
この時ばかりは私も美奈もびくんと体を跳ねさせ互いに距離を取った。
「おほんっ! ……えっと、何だ椎名」
「ま――まあいいけどさ……あのさっ。その攻撃って、プラマイゼロってわけにはいかないわけ?」
「ん?」
「いやさ、隼人くんが今言った、相手にぶつける力って私的に精神っていうか感情に近い気がするのよね。精神力ってさ、もっとこう透明っていうか、クリアな澱みないものだと思うのよ。別に何色にも染めなくていいんじゃないかなって。まあ言うだけじゃただの言葉遊びみたいなもんなんだけど……」
椎名も自信はなさげではあったが、私は素直に一理あるなと思う。
能力を使える私だから感じる。何となくではあるがそれはあながち間違っていないように思えた。
少なくとも諦めて力を使う事をやめてしまうよりはずっといい。
これから試してみる価値はありそうだ。
「ふむ……分かった。善処してみよう」
「うん、何も対策しないよりはいいでしょ? どうせ隼人くんのことだから……あ、まあいいわ。とにかく頑張ってみてよ」
「……そうだな」
そう言う彼女の言葉尻に何もかも見透かされている気がしつつ、彼女の心遣いにも感謝する。
ウインクしつつサムズアップをしてくる椎名はやはり誰よりも聡明で、理解のある女の子だ。
それにしても魔族に対する対抗手段はこれからの一番の課題だ。
グリアモールは撃退したとはいえ、この先魔族がこれ以上私達を狙って来ないとは到底思えない。
そうなれば戦いは避けられないだろう。
私はグリアモールのあの醜悪な姿を思いだしながら身震いしてしまう。
やはり私達にとって魔族との戦いというのは、全く以て自身の中で御しきれるような経験ではなかったのだから。
――――その後。
工藤と椎名の話もしようか持ちかけたが、大した話にはならなかった。
椎名からすると風と土の能力をそれぞれ得た、以上という事らしい。
まあ二人の能力は分かりやすいので説明は無用だろう。
更にこの先どうしていくかの話もしなければならなかったが、全員ここまで話すと最早お腹一杯という感じになった。
工藤に至っては少し前から完全に会話に入る事を諦めていたし、皆何となく真面目な話はこれ以上したくないなという雰囲気が漂っていた。
一旦休憩にしようかという時、部屋のドアを誰かがノックした。
小気味よい音が部屋の中に響く。
「はい」
返事をすると現れたのは村長のネムルさんだった。
相好を崩し私達四人を見回し口を開く。
「皆さま、少しお時間よろしいですかな?」
私達は顔を見合せつつ、村長を部屋に招き入れた。