「――――え……?」

突然の出来事に、私は思わず間抜けな声を漏らした。
ふと気がつくと、そこは山の中だった。
鬱蒼と茂る草木。びゅうっ、と強く風が吹き、枯れ葉が舞い上がり私は目を細め顔を覆う。

「…………」

あまりにも唐突過ぎて、一時思考が停止する。
最初に自分自身の姿を確認してみた。
先程部屋にいた時と何ら変わらぬ格好だ。
こんな状態で私はこんな所に一人、佇んでいたのだ。
――何なのだ? これは……一体……??
夢……にしてはあまりにもリアル過ぎる。そう感じる。
ふと足元に視線を向ければ、大量の枯れ葉が敷き詰められていた。
部屋の中にいたのだから当然靴は履いていない、靴下の布地が薄く足を包み込むのみ。
それでもこの一面に敷き詰められた落ち葉のお陰で地べたで動き回るにしても特に支障はなさそうだった。

「……ここは……一体?」

呟きながら周りを見回す。
 耳を澄ますと「コトコト」とあまり馴染みのない何かの鳴き声なのか、木に何かを打ちつける音なのか。それが耳朶に飛び込んできた。 
思考は完全に置いてきぼりであったというのに、しばらく佇んでいるだけで少しずつ冷静さを取り戻してきている。
今では私の脳はこうして状況を把握しようと努めてくれているのだから、人間の生存本能というべきか、自身の情報処理能力は大したものなのかもしれない。

「――ふう……」

脳に酸素を取り込むように改めて短く深呼吸を入れる。
私はもう一度、先程までの自分自身を思い返してみるのだった――――。