「シルフ、お願いっ!」
『ああっ、任せて!』
「行くわよっ!!」
「ああっ!」
互いに声を掛け合いながら一足飛びで広場へと飛行しつつ急降下。途中アリーシャの「ひゃんっ」というかわいい声が聞こえたけれど、今はそれは措いておく。
狙いは一旦ライラとホプキンス。というかホプキンス。
最早兵士の数をもレッサーデーモンの数が上回ろうとしている。考えることに時間を取り過ぎてしまった。こういうところは戦い慣れていない素人かと自分で反省しながら内心で舌打ちする。
こうなってしまっては乱戦は必死。
私は逸る気持ちを抑え冷静に今の状況を判断していく。
工藤くんはまずは後回しにしようと思う。
もちろん一刻も早く助けたいのは山々なのだけれど、彼の体は今光を放ち魔族からの攻撃を受けることがなさそうだから。
人質ではあるけれど人柱でもある以上、彼が敵からのターゲットにされることはまず無い。
そうなるとしても今行っている儀式によって、それなりのレッサーデーモンの召還に成功した後になると思われる。
一応工藤くんの力が吸いとられていき、力尽きてしまうという可能性もあるにはあるけれど、今だ爆睡を決め込んでるくらいなのだ。しばらく放っておいてもまあ大丈夫だろう。
それよりも先ずは現状の頭であるライラとホプキンスを倒すの方が先決だと判断する。
特にホプキンス。彼はこの広場に現れてしばらくしてから、何か呪文のようなものを口ずさんでいる。
この魔方陣はきっとこのホプキンスが操っているに違いないと思えるのだ。
そこまで考えた私は迷い無くホプキンスに狙いを定めた。
「アリーシャ! ライラは頼むわ! 私はホプキンスの方を狙う!」
「ああ、最初からそのつもりだ!」
アリーシャと短い言葉を交わし、ライラとホプキンスに肉迫しようとする直前。
そこで彼らは私たちの存在に気づく。別段驚く様子もなく嬉しそうな笑みを浮かべる二人。
「あら、遅かったわね。もうとっくにお祭りは始まっているわよ?」
「ふざけるなライラッッ!!」
柔らかな笑みを浮かべるライラに向けてアリーシャが吠えた。
激情と共に剣を抜き放ち、正に目にも止まらぬスピードで一閃する。
そんな超速の横凪ぎの一閃ですらもライラは涼しい顔で受け止めてみせた。
やはりただ者じゃない。けれどそれはアリーシャも同じ。
確かに一度ライラに手傷を負わされはしたけれどそれは油断していたから。
ここまでの彼女の戦いっぷりからアリーシャの実力は充分に信用している。
彼女ならきっと大丈夫だ。
確たる保証はないけれど、今は仲間を信じる。そう思うことにした。
そして私はというと、そんな彼女たちを横目にもう一人の魔族であるホプキンスへと一直線に駆けた。
ホプキンスは私の姿を認め、下卑た笑みを顔に貼り付かせたまま後ろへと飛び、私から距離を取ろうとした。
「逃がすわけないっ!」
ホプキンスの元へと疾駆する私の行く手には、進行を阻むように三体のレッサーデーモンが立ちはだかった。
昨日ならばこの状況でも充分脅威となってはいたけれど、正直もうこのくらい何てことは無い。今の私にはシルフという心強い味方がいるのだ。
私は精神を集中。右手に力を込めた。
「――はああ……エンチャント・ストーム!」
ユニコーンナックルに急速に風が収束。それと同時にアリーシャから貰った魔石が眩いばかりの光を放つ。
風は竜巻のような荒々しさを伴って右手に纏われいく。かなり濃密に腕の周りを風が取り巻いているのが分かる。正しくこれは嵐と呼ぶに相応しい。
私とシルフ、二人のマインドを込めたエンチャント・ストーム。
昨日は私のマインドが枯渇した状態だったため、力は半減していたに等しい。けれど今は私もかなり全開に近い状況。さあ果たしてこの状態でどれ程の威力を発揮するのか。
私は手前のレッサーデーモンに拳を振りかぶり、ユニコーンナックルをクリーンヒットさせた。
「――グワッハアァアアアアッッ……!!!」
「ガアアッッ……!!!」
なんとっ……。レッサーデーモンの体は紙を切り裂くように霧散。
更に驚くべきことに、その衝撃で後ろの二体までもが消失してしまった。
たったの一撃で三体のレッサーデーモンを葬り去ってしまった。その事に素直に驚愕する私。
「――まじ……?」
『ふふ……まじだよ?』
戦いの最中というのにも関わらず、思わずポロリと間の抜けた声を上げてしまう。その声に嬉しそうにドヤ声で返すシルフ。
エンチャント・ストームは私の予想を遥かに上回る威力になっていた。
昨日までであれば今の一撃でレッサーデーモン一体を倒すのがやっとだった。
それが全力てもない、ちょっと軽く殴った程度の力加減でこの威力。
これは嬉しい誤算だ。
シルフのドヤ声がちょっぴり癪に障るけれど、これはかなり予想外だった。
「――ぐはあっっ!!?」
そんな折、私の放った暴風の一撃に吹き飛ばされた陰がもう一人。
それは私のターゲットであるホプキンスその人だった。
彼はそのまま風に吹き飛ばされ、ごろごろと勢いを止めることなく広場の壁まで突っ込んだ。
「ぐえっ……」
「……ウソでしょ?」
ホプキンスの姿を見て私は思わず呆れたような声を漏らす。
彼は壁に強く体を打ちつけられたかと思うと、なんとそのまま気を失ってしまったのだ。
『ああっ、任せて!』
「行くわよっ!!」
「ああっ!」
互いに声を掛け合いながら一足飛びで広場へと飛行しつつ急降下。途中アリーシャの「ひゃんっ」というかわいい声が聞こえたけれど、今はそれは措いておく。
狙いは一旦ライラとホプキンス。というかホプキンス。
最早兵士の数をもレッサーデーモンの数が上回ろうとしている。考えることに時間を取り過ぎてしまった。こういうところは戦い慣れていない素人かと自分で反省しながら内心で舌打ちする。
こうなってしまっては乱戦は必死。
私は逸る気持ちを抑え冷静に今の状況を判断していく。
工藤くんはまずは後回しにしようと思う。
もちろん一刻も早く助けたいのは山々なのだけれど、彼の体は今光を放ち魔族からの攻撃を受けることがなさそうだから。
人質ではあるけれど人柱でもある以上、彼が敵からのターゲットにされることはまず無い。
そうなるとしても今行っている儀式によって、それなりのレッサーデーモンの召還に成功した後になると思われる。
一応工藤くんの力が吸いとられていき、力尽きてしまうという可能性もあるにはあるけれど、今だ爆睡を決め込んでるくらいなのだ。しばらく放っておいてもまあ大丈夫だろう。
それよりも先ずは現状の頭であるライラとホプキンスを倒すの方が先決だと判断する。
特にホプキンス。彼はこの広場に現れてしばらくしてから、何か呪文のようなものを口ずさんでいる。
この魔方陣はきっとこのホプキンスが操っているに違いないと思えるのだ。
そこまで考えた私は迷い無くホプキンスに狙いを定めた。
「アリーシャ! ライラは頼むわ! 私はホプキンスの方を狙う!」
「ああ、最初からそのつもりだ!」
アリーシャと短い言葉を交わし、ライラとホプキンスに肉迫しようとする直前。
そこで彼らは私たちの存在に気づく。別段驚く様子もなく嬉しそうな笑みを浮かべる二人。
「あら、遅かったわね。もうとっくにお祭りは始まっているわよ?」
「ふざけるなライラッッ!!」
柔らかな笑みを浮かべるライラに向けてアリーシャが吠えた。
激情と共に剣を抜き放ち、正に目にも止まらぬスピードで一閃する。
そんな超速の横凪ぎの一閃ですらもライラは涼しい顔で受け止めてみせた。
やはりただ者じゃない。けれどそれはアリーシャも同じ。
確かに一度ライラに手傷を負わされはしたけれどそれは油断していたから。
ここまでの彼女の戦いっぷりからアリーシャの実力は充分に信用している。
彼女ならきっと大丈夫だ。
確たる保証はないけれど、今は仲間を信じる。そう思うことにした。
そして私はというと、そんな彼女たちを横目にもう一人の魔族であるホプキンスへと一直線に駆けた。
ホプキンスは私の姿を認め、下卑た笑みを顔に貼り付かせたまま後ろへと飛び、私から距離を取ろうとした。
「逃がすわけないっ!」
ホプキンスの元へと疾駆する私の行く手には、進行を阻むように三体のレッサーデーモンが立ちはだかった。
昨日ならばこの状況でも充分脅威となってはいたけれど、正直もうこのくらい何てことは無い。今の私にはシルフという心強い味方がいるのだ。
私は精神を集中。右手に力を込めた。
「――はああ……エンチャント・ストーム!」
ユニコーンナックルに急速に風が収束。それと同時にアリーシャから貰った魔石が眩いばかりの光を放つ。
風は竜巻のような荒々しさを伴って右手に纏われいく。かなり濃密に腕の周りを風が取り巻いているのが分かる。正しくこれは嵐と呼ぶに相応しい。
私とシルフ、二人のマインドを込めたエンチャント・ストーム。
昨日は私のマインドが枯渇した状態だったため、力は半減していたに等しい。けれど今は私もかなり全開に近い状況。さあ果たしてこの状態でどれ程の威力を発揮するのか。
私は手前のレッサーデーモンに拳を振りかぶり、ユニコーンナックルをクリーンヒットさせた。
「――グワッハアァアアアアッッ……!!!」
「ガアアッッ……!!!」
なんとっ……。レッサーデーモンの体は紙を切り裂くように霧散。
更に驚くべきことに、その衝撃で後ろの二体までもが消失してしまった。
たったの一撃で三体のレッサーデーモンを葬り去ってしまった。その事に素直に驚愕する私。
「――まじ……?」
『ふふ……まじだよ?』
戦いの最中というのにも関わらず、思わずポロリと間の抜けた声を上げてしまう。その声に嬉しそうにドヤ声で返すシルフ。
エンチャント・ストームは私の予想を遥かに上回る威力になっていた。
昨日までであれば今の一撃でレッサーデーモン一体を倒すのがやっとだった。
それが全力てもない、ちょっと軽く殴った程度の力加減でこの威力。
これは嬉しい誤算だ。
シルフのドヤ声がちょっぴり癪に障るけれど、これはかなり予想外だった。
「――ぐはあっっ!!?」
そんな折、私の放った暴風の一撃に吹き飛ばされた陰がもう一人。
それは私のターゲットであるホプキンスその人だった。
彼はそのまま風に吹き飛ばされ、ごろごろと勢いを止めることなく広場の壁まで突っ込んだ。
「ぐえっ……」
「……ウソでしょ?」
ホプキンスの姿を見て私は思わず呆れたような声を漏らす。
彼は壁に強く体を打ちつけられたかと思うと、なんとそのまま気を失ってしまったのだ。