「はあああっ……」
椎名のいつになく真剣な顔つきだ。
気合いの声と共に、椎名の周りに突如として――風が生まれた。
最初はそよ風程度だった。
だがそれは瞬く間にその風速を増していき、回転が加わり、やがて竜巻のようになったのだ。
「ぐっ!」
吹き荒れる風の中で思わず腕で顔を覆う。
その中に木の葉や草花、木々の枝や小石などが入り混じり、巻き込まれればただでは済まないであろう事は容易に想像できた。
「なんだなんだよマジでっ!? つーかこれ、椎名がやってんのかよ!? そうだよな隼人っ!?」
「――うむ……そうとしか考えられないのだ」
「すっ……すげーぞっ!」
こんな状況でキラキラと目を輝かせながらはしゃぐ工藤を、単純に凄いと思った。
暴風に晒されて、立っているのもやっとだ。
椎名との距離は数メートルは開いている。
それでこれなのだから、椎名の側には到底近づけはしない。
「……ふう。まあこんなところね」
不意に椎名の緊張が途絶えた。
その矢先、風は収まりを見せ始め、次の瞬間にはピタリと無風状態に戻る。
パラパラと地に落ちていく枝葉や小石。
余りにも奇怪な出来事である。
私はふうと息を吐き、改めて椎名を見つめながら問う。
「まさか……。風が操れるということなのか?」
俄には信じがたいが、考えられる事はそれしかなかった。
椎名は私達の方へと目を向け、ニッと笑みを作り爽やかにサムズアップを決めてみせた。
「うん、昼間ね。グレイウルフだっけ? あれが近づいてくるのがわかって、なんだか感覚が妙に鋭いなーて思ったの。空気の動きとか、周りのものが鮮明に手に取るように分かるってことに気づいて。あとは自分を奮い立たせるためにグレイウルフに立ち向かう時、気合いを込めたら風が揺れたのが分かって。それで確信したってわけ」
「す、すげえな! どんだけ化けもんだよ!」
工藤は椎名の話に食い入るように詰めより、目を輝かせている。
興奮して鼻息が荒い。
そんな工藤を一瞥し、椎名は腕を組み眉間にしわを寄せる。
「工藤くん。あんまり失礼なこと言うと、飛ばすわよ?」
工藤はそんな椎名の反応に慌てて手を振り後退るのだ。
「え!? ちょっ、シャレになんねーからやめて!?」
確かに今の椎名なら言葉通りに工藤を吹き飛ばすことも可能だ。
冗談なのだろうが、全く冗談にはなっていない。
椎名は工藤の挙動に満足げにふふふと笑っていた。
「それは冗談にしといてあげて。――でもさすがにちょっと疲れたわね。精神力が大きく削られる感じがするの。だから正直多用はできないかも」
「精神力、か。使いすぎたら即倒してしまうとかか?」
「う~ん、どうだろ。やり過ぎるとそれはあり得るかもね。さっきちょっとクラクラしたし」
「大丈夫なのか?」
「あー、だいじょぶだいじょぶっ! やり過ぎない程度でやめたのっ。そういうことも知りたくて今日のうちに試しときたかったのよねっ! 明日ぶっつけ本番で使って、力尽きました、じゃ話にならないしね!」
そう言い笑う椎名は血色も良く、元気そうに見える。
言葉通り無理はしていないのだろう。
「とにかくまあ、何となくコツは掴めたかも! 2人ともつき合ってくれてありがとっ! とにかく明日はこの椎名ちゃんにまっかせといてっ!」
椎名は元気良く胸を叩き大見得を切った。
「しかし椎名。その力は魔法――というものなのか?」
「え?」
私の問いに小首を傾げる椎名。
正確な答えは異世界で起こったことなのだ。もしかしたらネムルさんにでも確認すれば帰って来そうではある。
だが本人的にはどう思っているのかも知りたかった。
「……ふむ」
椎名は腕を組み、虚空を仰ぎ見ながらしばらく考える姿勢を取っていた。
椎名のいつになく真剣な顔つきだ。
気合いの声と共に、椎名の周りに突如として――風が生まれた。
最初はそよ風程度だった。
だがそれは瞬く間にその風速を増していき、回転が加わり、やがて竜巻のようになったのだ。
「ぐっ!」
吹き荒れる風の中で思わず腕で顔を覆う。
その中に木の葉や草花、木々の枝や小石などが入り混じり、巻き込まれればただでは済まないであろう事は容易に想像できた。
「なんだなんだよマジでっ!? つーかこれ、椎名がやってんのかよ!? そうだよな隼人っ!?」
「――うむ……そうとしか考えられないのだ」
「すっ……すげーぞっ!」
こんな状況でキラキラと目を輝かせながらはしゃぐ工藤を、単純に凄いと思った。
暴風に晒されて、立っているのもやっとだ。
椎名との距離は数メートルは開いている。
それでこれなのだから、椎名の側には到底近づけはしない。
「……ふう。まあこんなところね」
不意に椎名の緊張が途絶えた。
その矢先、風は収まりを見せ始め、次の瞬間にはピタリと無風状態に戻る。
パラパラと地に落ちていく枝葉や小石。
余りにも奇怪な出来事である。
私はふうと息を吐き、改めて椎名を見つめながら問う。
「まさか……。風が操れるということなのか?」
俄には信じがたいが、考えられる事はそれしかなかった。
椎名は私達の方へと目を向け、ニッと笑みを作り爽やかにサムズアップを決めてみせた。
「うん、昼間ね。グレイウルフだっけ? あれが近づいてくるのがわかって、なんだか感覚が妙に鋭いなーて思ったの。空気の動きとか、周りのものが鮮明に手に取るように分かるってことに気づいて。あとは自分を奮い立たせるためにグレイウルフに立ち向かう時、気合いを込めたら風が揺れたのが分かって。それで確信したってわけ」
「す、すげえな! どんだけ化けもんだよ!」
工藤は椎名の話に食い入るように詰めより、目を輝かせている。
興奮して鼻息が荒い。
そんな工藤を一瞥し、椎名は腕を組み眉間にしわを寄せる。
「工藤くん。あんまり失礼なこと言うと、飛ばすわよ?」
工藤はそんな椎名の反応に慌てて手を振り後退るのだ。
「え!? ちょっ、シャレになんねーからやめて!?」
確かに今の椎名なら言葉通りに工藤を吹き飛ばすことも可能だ。
冗談なのだろうが、全く冗談にはなっていない。
椎名は工藤の挙動に満足げにふふふと笑っていた。
「それは冗談にしといてあげて。――でもさすがにちょっと疲れたわね。精神力が大きく削られる感じがするの。だから正直多用はできないかも」
「精神力、か。使いすぎたら即倒してしまうとかか?」
「う~ん、どうだろ。やり過ぎるとそれはあり得るかもね。さっきちょっとクラクラしたし」
「大丈夫なのか?」
「あー、だいじょぶだいじょぶっ! やり過ぎない程度でやめたのっ。そういうことも知りたくて今日のうちに試しときたかったのよねっ! 明日ぶっつけ本番で使って、力尽きました、じゃ話にならないしね!」
そう言い笑う椎名は血色も良く、元気そうに見える。
言葉通り無理はしていないのだろう。
「とにかくまあ、何となくコツは掴めたかも! 2人ともつき合ってくれてありがとっ! とにかく明日はこの椎名ちゃんにまっかせといてっ!」
椎名は元気良く胸を叩き大見得を切った。
「しかし椎名。その力は魔法――というものなのか?」
「え?」
私の問いに小首を傾げる椎名。
正確な答えは異世界で起こったことなのだ。もしかしたらネムルさんにでも確認すれば帰って来そうではある。
だが本人的にはどう思っているのかも知りたかった。
「……ふむ」
椎名は腕を組み、虚空を仰ぎ見ながらしばらく考える姿勢を取っていた。