――アリーシャがライラと出会い、半年の月日が流れていた。
その間アリーシャは毎日ライラへと立ち合いを申し込んでいた。だがその悉くで敗北を喫する結果となっしまっていたのだ。
やはり一年という短期間で副団長まで登り詰めたライラのその実力は本物。
彼女の剣には隙が無い。それでいて流麗で、まさしく柔の剣であった。
だがアリーシャもただ負けているわけではない。
日々の立ち合いの中で、ライラの太刀筋や間合いを見切り、予測し、少しずつではあるが彼女の剣に届き始めていると言ってもいい程の成長を見せていた。
その証拠に、以前まで騎士団のメンバーには全く太刀打ち出来なかったというのに、ここ最近では彼らとの立ち合いに於いて互角以上の戦いを見せ始め、次第に頭角を現してきていたのである。
「ふふ……たった半年で私にここまで肉薄するなんて、やっぱり王家の血筋なのね」
ライラはある日の立ち合いの後、不意にそんな事を言ってきた。
その表情は何故か嬉しそうで、それがアリーシャにはどうにも気に食わない。
胸がざわめくのだ。
「ふんっ。いつかその表情に張りついた忌々しい笑みと余裕を消し去ってやるっ」
アリーシャはいつも涼しい顔をしているライラに、皮肉めいてそう告げる。
だが当のライラはそんな事気にも留めない。
「ふふ……。ええ、楽しみにしているわ」
彼女はそんなアリーシャの言葉を受け流すように、嬉しそうに笑みを浮かべながら帰っていくのだった。
アリーシャの心は彼女のそんな態度にいつも苛立ってしまう。
「ちっ……! やはり私は……お前が嫌いだっ!」
口をついて出る罵りの言葉。
去り行く彼女の背中に浴びせるそれは正直ただの負け惜しみでしかない。
自分でも分かってはいるが言わずにはおれない。
アリーシャはまだ子供なのだ。
当のライラはやはり全く動じない。その言葉に振り向く事すらせず、ただにこやかに手を振る。
「別に好きになってほしいなんて思っていないわ。アリーシャ、じゃあまたね」
それだけ告げて、ライラは訓練場を去っていった。
「――くそっ!」
悔しくて八つ当たりのように地面に剣を突き刺すアリーシャ。
どうやっても勝てない。
この半年で二人の力の差は埋まってきたと言ってもいい。
だがそれでもまだまだライラとアリーシャとの間には大きな差が生じている。
その事実にアリーシャは歯噛みし、顔に悔しさを滲ませる。
正直な所、アリーシャはライラの力を認めていた。
それこそ彼女の剣に見惚れてしまう程に。
いつしか自分もその境地に到達してみたいと思える程に。
だがどうしても意地を張ってしまう。
そもそもアリーシャはベルクートの事を尊敬しているのだから。
ライラを負かしてベルクートに認めてもらいたいという気持ちの方が今でも勝っているのだ。
どうにかしてベルクートに私の事を認めてもらいたい。
その事だけを考えてこの半年間、ずっと勝負を挑んできた。
確かにここまで負け続けてきてしまったが、アリーシャ自身もそれなりに力をつけたという自負もあったのだから。
「くそっ、くそっ、くそっ、くそっ……!!」
悔しさが言葉となり口から漏れ出た。
「――せめて……どうにかベルクートに認めてもらえるような……」
歯噛みしながらそう呟くアリーシャ。
ベルクートに認めてもらいたいという気持ちと、自分自身それねりに力をつけたという自負がアリーシャに邪念を呼び寄せる結果となってしまうのだ。
その間アリーシャは毎日ライラへと立ち合いを申し込んでいた。だがその悉くで敗北を喫する結果となっしまっていたのだ。
やはり一年という短期間で副団長まで登り詰めたライラのその実力は本物。
彼女の剣には隙が無い。それでいて流麗で、まさしく柔の剣であった。
だがアリーシャもただ負けているわけではない。
日々の立ち合いの中で、ライラの太刀筋や間合いを見切り、予測し、少しずつではあるが彼女の剣に届き始めていると言ってもいい程の成長を見せていた。
その証拠に、以前まで騎士団のメンバーには全く太刀打ち出来なかったというのに、ここ最近では彼らとの立ち合いに於いて互角以上の戦いを見せ始め、次第に頭角を現してきていたのである。
「ふふ……たった半年で私にここまで肉薄するなんて、やっぱり王家の血筋なのね」
ライラはある日の立ち合いの後、不意にそんな事を言ってきた。
その表情は何故か嬉しそうで、それがアリーシャにはどうにも気に食わない。
胸がざわめくのだ。
「ふんっ。いつかその表情に張りついた忌々しい笑みと余裕を消し去ってやるっ」
アリーシャはいつも涼しい顔をしているライラに、皮肉めいてそう告げる。
だが当のライラはそんな事気にも留めない。
「ふふ……。ええ、楽しみにしているわ」
彼女はそんなアリーシャの言葉を受け流すように、嬉しそうに笑みを浮かべながら帰っていくのだった。
アリーシャの心は彼女のそんな態度にいつも苛立ってしまう。
「ちっ……! やはり私は……お前が嫌いだっ!」
口をついて出る罵りの言葉。
去り行く彼女の背中に浴びせるそれは正直ただの負け惜しみでしかない。
自分でも分かってはいるが言わずにはおれない。
アリーシャはまだ子供なのだ。
当のライラはやはり全く動じない。その言葉に振り向く事すらせず、ただにこやかに手を振る。
「別に好きになってほしいなんて思っていないわ。アリーシャ、じゃあまたね」
それだけ告げて、ライラは訓練場を去っていった。
「――くそっ!」
悔しくて八つ当たりのように地面に剣を突き刺すアリーシャ。
どうやっても勝てない。
この半年で二人の力の差は埋まってきたと言ってもいい。
だがそれでもまだまだライラとアリーシャとの間には大きな差が生じている。
その事実にアリーシャは歯噛みし、顔に悔しさを滲ませる。
正直な所、アリーシャはライラの力を認めていた。
それこそ彼女の剣に見惚れてしまう程に。
いつしか自分もその境地に到達してみたいと思える程に。
だがどうしても意地を張ってしまう。
そもそもアリーシャはベルクートの事を尊敬しているのだから。
ライラを負かしてベルクートに認めてもらいたいという気持ちの方が今でも勝っているのだ。
どうにかしてベルクートに私の事を認めてもらいたい。
その事だけを考えてこの半年間、ずっと勝負を挑んできた。
確かにここまで負け続けてきてしまったが、アリーシャ自身もそれなりに力をつけたという自負もあったのだから。
「くそっ、くそっ、くそっ、くそっ……!!」
悔しさが言葉となり口から漏れ出た。
「――せめて……どうにかベルクートに認めてもらえるような……」
歯噛みしながらそう呟くアリーシャ。
ベルクートに認めてもらいたいという気持ちと、自分自身それねりに力をつけたという自負がアリーシャに邪念を呼び寄せる結果となってしまうのだ。