その日、天使の存在を目の当たりにした。
 真っ暗な歩道橋の上で踊るようにその場で回った彼女は、紺色のスカートと腰の長さの綺麗な銀髪を揺らす。振り返った途端、アンバーの瞳が私をとらえると、口元が微笑んだように見えた。
 街路灯だけでなく、端の下を走る車のヘッドライトすらも彼女に向けられる。まるでランウェイを歩くモデルを照らしたスポットライトのようだ。
 彼女が歩道橋を立ち去るまでの間、私はただ茫然とその場に立ち尽くしていた。
 最終バスに乗り遅れて夜中に歩いているところを補導されてしまったら、塾の居残りで遅くなったことを伝えればいい。期末テストという大切な時期に寝坊して学校に遅れて、テストが受けられなくなって先生からの評価が下がったってかまわない。
 今はただ、彼女のことをこの目に焼き付けておきたかった。