勧めてくれた本は面白かった。

 その次も。そのまた次も。

 詩月が勧めてくれる本はどれも面白かった。

 図書室で私が本を読んでいる最中、詩月は隣にただ座っているだけだった。何もせず、本を読んでいる私を眺めたり、辺りを見渡したり。それでも退屈そうというわけではないところ、何もせずボーッとすることが好きなのだと思う。

 悪くいえば暇そう。良くいえば暇を楽しんでいる。

 時間があるのならと、あるとき私は本を閉じて自分のタブレットを詩月に貸した。詩月が私に本を勧めてくれたように、私も詩月に勧めたくなった。

 詩月はタブレットを見て少し戸惑いを見せたけれど、両手でおそるおそる受け取って、読み始めてくれた。画面上でページを捲る動作は私が紙のページを捲る動作と違って静かなものだった。

 映画を勧めた日もあった。原作を読んだことがあるようで、違う展開で面白いと小説を勧めてくれた。面白かった。詩月の感想が嘘偽りのないものであれば、私と詩月の好みは似ているのだと思う。


「楽しいな」

「何が?」