電子書籍が普及により紙書籍は徐々に数をなくし、長い年月をかけて図書室という場所も各地の学校から消えている。この学校の図書室もとうとう失われることが決定し、もうすぐ視聴覚室となる。嘆く声もあったらしいが、私は楽しみだ。

 紙書籍よりは電子書籍が好きで、紙書籍よりは映画が好きで、音楽を聴くことも嫌いじゃない。

 図書室で貸し出せるタブレットには既にいくつもの電子書籍が納められているけれど、それが数倍に渡って数が増えるというのだから、楽しみでないわけがない。

 備え付けられているヘッド本を装着して、ディスクをパソコンのドライブに入れた。一分と待たずして画面が変わり、音量を程よいものに調節する。これを忘れると音が耳を突き破ることがある。


(学校の図書室でタダで観れるのは良いんだけど、気に入ったやつは買うこと多いし、お財布に優しくはないんだよね)


 果たしてこの映画は財布を痛めつける者になるのか、私の期待を外れるものになるのか。

 十分程度の時間が過ぎて、そこに答えは出た。

 終わりで裏切られることはなく、映像はエンディングに切り替わる。


(良かった……!)


 友人同士で楽しみながらの鑑賞ならまだしも、一人で泣いている姿は誰かに見られたら恥ずかしい。急いで涙を拭き取った。


(映画だとカットされている部分もあるだろうし、これは原作の方も読まないと)


 スタッフロールを聴きながら、あとで電子書籍をカートに入れようと決める。アルファベットで記された人の名を一つずつ読もうという気は起きないけれど、流れる文字列を見ながら今は何もせずエンディングを聴きたい。

 音楽が鳴り止んでこそ現実に引き戻されるから、それまでは……。

 余韻に浸っていると、最終下校時刻だと知らせるチャイムによって悲しくも邪魔された。ここは映画館ではなく学校だから仕方がない。