翌日の朝。
「……優輝くん。……あい、たい」
そう小さく呟く。
昔……五年前にあった事は忘れて。
一度だけでも、いいから。
「……由来?おはよう、元気ないな」
学校に着くと、竜くんが肩を掴んでグイッと引き寄せてきた。
「……」
この光景をジッと睨んできている水保にさえ気づかず、竜くんに抱きつく。
「う、竜、くん……あり、がとう……」
そう言って竜くんに身体を預けた。
「由来……俺、お前が好きだ。付き合ってくれ……でも、たとえ断っても俺は、お前を、守る。何があったとしても」
抱きしめながらそう言う竜くんに、涙を流した。
でも、私は……優輝くんが、好きだから。
「ありがとう。……でも、私は竜くんを幸せにできる自信がないから。ごめんね」
そう呟いて、私は竜くんの腕の中で意識を落とした。


「由来、起きろ。時間がない」
「優輝……くん?」
目の前にいるのは、優輝くん?
なんとなく、そんな気がする。
「由来……俺、由来が好きだったんだ。だから、最後にこれだけ言わせてくれないか?」
「……うん。分かった。いいよ」
震える声でそう答えると、優輝くんはコクリと頷いた。
「……俺は、お前しか愛してなかったからな。それだけは……分かってくれ」
「……っ」
どうして、どうして。
今なんで言っちゃうのかなぁ。
もー、優輝くんのばかぁっ! 
「じゃあな。俺の分まで、生きてくれよ」
「……ふふっ。言われなくても分かってるもん」
そう言って笑顔を見せる。
すると優輝くんはニカッと笑った。
ーー私の大好きな、あの笑顔でーー