「俺、あんま女子と関わったことないから、泣いてる時の慰め方とかわかんないんだよ」


 本当に困ったような声でそう言われ、驚いて顔を上げる。


「たくさん女友だちも恋愛関係の人もいそうなのに」

「ほんとにね、俺こんなにイケメンなのに」


 ナルシ発言に思わず吹き出してしまう。


「よかった、やっと笑ってくれた」


 ぽん、と手を頭に載せられる。ユイさんの暖かい手から温もりが広がった。


「絶対女子と関わったことないって嘘でしょ。ふつうこんなことしないですよ」

「女子……っていうか妹はいるからかな」

「お兄ちゃんなんですね。だから優しいんだ」
 
「優しいだけが取り柄だよ。それに俺は自由に生きてるだけ。ただ俺のしたいように」


 肩を竦めながら、彼は言った。


 そのすぐあとに、カウンターの方から「はい」とひとつマグカップを渡される。


「サービスでございます」

「えっ、いいんですか?」
 
「どうぞ」


 ありがとうございます、と受け取った。甘いカカオの香りが鼻腔をくすぐる。


「ココアですか?」

「お気に召すといいのですが」


 一口飲んでみると、程よい甘さが広がっていった。カフェオレも美味しかったが、やはりこちらの方が私には合っていた。


「すごく美味しいです。もしかして私が苦いの苦手なのわかったんですか……?」

「ここはお客様の心に寄り添うカフェ。長年色々なお客様を見ていれば、考えていることが少しばかりわかるようになったりするものですよ」


 紳士的な微笑みを見せられ、私はもう一度お礼を言う。