「コトハ、ね。もしなんか吐き出したくなったら話してみなよ。俺はずっとここにいるから」


 ユイさんはそのまま肩からかけていたスクエアバッグから文庫本とメガネを取り出し、読書を始めた。


 私はカフェオレを一口飲んで、ほっと息をはく。やっぱり少し苦かった。


 そして今日一日の出来事なんかを回想する。




 別に大して特別な出来後なんてない、ありふれた一日だった。


 同世代のスポーツ選手が活躍してるニュースを見ながら朝食をとり、先生にバレない程度のメイクをして、縮毛矯正をした髪をアイロンでまっすぐに伸ばして、家を出る。


 電車に揺られながら、友だちのSNSを軽くチェックして、テスト前なので英単語帳を開いた。


 学校に着くと友だちに挨拶をして、少し話し込む。


 授業がつまらないと、一番後ろの席からクラスメイトを観察してみた。



 それから……。




「私、自分と人を比べちゃうんです」


 気づいたら声に出していた。


「この人は私より……って、だれを見ても考えちゃう」


 私よりテスト勉強してないのに私よりいつも点数がいい。得意科目でさえ勝てない。


 私より目が大きい。私より顔が小さい。私より足が細い。私より髪が綺麗。……私より可愛い。


 私より学校生活が充実している。いつもSNSにたくさんの友だちの名前をあげ、たくさん遊びに行っている。