「夜のカフェはあんまりお客さんこないし、いいんだよ。昼はこの店コーヒーが美味しいって有名だから、まあまあ混んでるんだけど」
人懐っこそうな笑顔で「知ってた?」と問われ、小さく首を横に振る。
そもそもこちらの方にはほとんど来たことがない。
「でも俺は夜のこの雰囲気が好きなんだ。夜限定で『悩める人のためのカフェ』なんてネーミングセンスない店名ついてるけど、実際悩んでる人はゆっくりここでコーヒー飲みながら休むだけで気が楽になると思う」
彼は目を細め、優しい声色で饒舌に語る。
「だから君も少しのんびりしていけばいいよ」
そう言うとすぐに、どこかの方角に視線を流し、片手で持ち上げたコーヒーカップに口付けた。
まるで私の返答など期待していないかのような素振りに、居心地のよさを覚える。
ここにいていいんだよとかじゃなく、いたいならいればいいというような私に対する無頓着さがありがたかった。
「でもあんまり遅くなりすぎないでね。未成年者に深夜までいられると、敏さんが捕まっちゃうかもしれないし」
おどけたように彼が言うと、店主──敏さんが苦笑いをしていた。
「未成年でしょ? あと、ついでに言っとくと俺のことはユイって呼んでくれればいいから」
「高一です。私はコトハって言います」
相沢琴葉。誕生日は4月1日。
小学校から高校まで、いつだって出席番号は1番だった。
人懐っこそうな笑顔で「知ってた?」と問われ、小さく首を横に振る。
そもそもこちらの方にはほとんど来たことがない。
「でも俺は夜のこの雰囲気が好きなんだ。夜限定で『悩める人のためのカフェ』なんてネーミングセンスない店名ついてるけど、実際悩んでる人はゆっくりここでコーヒー飲みながら休むだけで気が楽になると思う」
彼は目を細め、優しい声色で饒舌に語る。
「だから君も少しのんびりしていけばいいよ」
そう言うとすぐに、どこかの方角に視線を流し、片手で持ち上げたコーヒーカップに口付けた。
まるで私の返答など期待していないかのような素振りに、居心地のよさを覚える。
ここにいていいんだよとかじゃなく、いたいならいればいいというような私に対する無頓着さがありがたかった。
「でもあんまり遅くなりすぎないでね。未成年者に深夜までいられると、敏さんが捕まっちゃうかもしれないし」
おどけたように彼が言うと、店主──敏さんが苦笑いをしていた。
「未成年でしょ? あと、ついでに言っとくと俺のことはユイって呼んでくれればいいから」
「高一です。私はコトハって言います」
相沢琴葉。誕生日は4月1日。
小学校から高校まで、いつだって出席番号は1番だった。