ミルで豆を挽く音と抽出されたコーヒーの滴る音が心地よく響いてくる。


 静けさが充満する空間が不思議と苦ではなかった。


「ただいまそちらにお持ちいたしますね」


 はい、と硬い声で小さく答えて背筋を伸ばす。


 店主は厨房の中にある台に、丁寧にマグカップを置いた。ことん、という音が響く。


 そして何やらその場からは動かず、違う作業を始めたように見えた。


 ……あれ、渡してくれないのかな。


 不思議に思って厨房の方をそっと覗き込んだ次の瞬間。


 私の視界に“金色”が映った。


「お待たせしました。カフェオレです」

「あ……ありがとうございます」


 まだ奥の方に店員がいたらしい。その人はカウンターから早足で私のところにやってきて、カフェオレを置くと、またその隣にコーヒーを置いた。


 艷めく綺麗な金色の髪が少し長く伸びていて、顔立ちが整っている美青年という感じの男の人だった。


 私と同じくらいの年齢にも見えたが、髪を染めているところや大人びた雰囲気から察するに大学生くらいだろう。


「俺、隣座ってもいいですか?」

「えっと……大丈夫です」


 仕事中ではないのか、という疑問ははっきりと私の顔にぶら下がっていたらしい。察したようにその人は口を開く。