「いらっしゃいませ」
店に入ると、カウンターの向こう側から店主らしき男の人から、テノールの柔らかい声で歓迎を受ける。
おそらく私のお父さんと同じくらいだろうか。スッと伸びた姿勢と彫りの深い整った顔立ちは、その年齢特有の格好良さを漂わせていた。
店の中は薄暗いが、ほんのり暖かい色の灯りが散りばめられている。他の客の姿は見当たらない。
勢いで入ってきてしまったが、大人な雰囲気の店内に圧倒され、少し怖気付いてしまう。高校一年生の女子が夜にひとりで入るような店じゃなかったのかもしれない。
「お好きな席にどうぞ」
でも、ここまで来て帰るわけにもいかない。ためらいがちに一番近いところの椅子を引いて座る。
テーブル席はなく、カウンター席が店主の周りに半円を描くように並んでいた。
カフェと言えば有名なチェーン店くらいしか行ったことがないからわからないけれど、おそらく珍しい形式なのではないだろうか。
水とおしぼりとメニューを手渡され、小さく「ありがとうございます」と言って受けとる。
落ち着きなく視線を色々なところへやりながら、達筆な文字で書かれた手書きのメニューを開いた。
ずらりと並んだコーヒーの種類。
……まったく意味がわからない。いや、そもそも私は砂糖やミルクを入れてもコーヒーが飲めないタイプの人間だった。
どうしよう、と焦っていたところ、一番下に『カフェオレ』の文字を見つけた。
弾かれるように顔をあげて、それを頼む。
カフェオレさえも砂糖を入れてなお、苦いと感じてしまうけれど、コーヒーよりはだいぶ安全地帯だ。
店に入ると、カウンターの向こう側から店主らしき男の人から、テノールの柔らかい声で歓迎を受ける。
おそらく私のお父さんと同じくらいだろうか。スッと伸びた姿勢と彫りの深い整った顔立ちは、その年齢特有の格好良さを漂わせていた。
店の中は薄暗いが、ほんのり暖かい色の灯りが散りばめられている。他の客の姿は見当たらない。
勢いで入ってきてしまったが、大人な雰囲気の店内に圧倒され、少し怖気付いてしまう。高校一年生の女子が夜にひとりで入るような店じゃなかったのかもしれない。
「お好きな席にどうぞ」
でも、ここまで来て帰るわけにもいかない。ためらいがちに一番近いところの椅子を引いて座る。
テーブル席はなく、カウンター席が店主の周りに半円を描くように並んでいた。
カフェと言えば有名なチェーン店くらいしか行ったことがないからわからないけれど、おそらく珍しい形式なのではないだろうか。
水とおしぼりとメニューを手渡され、小さく「ありがとうございます」と言って受けとる。
落ち着きなく視線を色々なところへやりながら、達筆な文字で書かれた手書きのメニューを開いた。
ずらりと並んだコーヒーの種類。
……まったく意味がわからない。いや、そもそも私は砂糖やミルクを入れてもコーヒーが飲めないタイプの人間だった。
どうしよう、と焦っていたところ、一番下に『カフェオレ』の文字を見つけた。
弾かれるように顔をあげて、それを頼む。
カフェオレさえも砂糖を入れてなお、苦いと感じてしまうけれど、コーヒーよりはだいぶ安全地帯だ。