私の言葉に嬉しそうなユイさんと、心底うんざりそうに顔を歪めるアミ。


「改めて、原川唯希(ゆいき)と原川亜未(あみ)……と叔父の原川敏です。原川家一同よろしくお願いします」


 謎の原川家紹介タイムが始まり、また私は色々なところで驚いてしまう。


「ユイって名前じゃなかったんですか……。それに敏さんがふたりの叔父さん……?」

「コトハが驚いた時の顔っていつも面白い」


 アミが言い、原川家一同に笑われた。


 結局そのままみんなで話し込み、気づけば時間がどんどん経っていく。


 帰り際、なぜか外に出て4人で写真を撮ることになった。


「はい、いきまーす!」


 スマホで10秒後にシャッターが切られるように設定してから、走って行って3人の輪の中に入れてもらう。


 盛れ、とかそんなのどうでもよかった。ただ今この楽しい瞬間をそのまま残しておきたくて、満面の笑みをカメラに向けた。


 SNSに投稿するのやめよう。今まであげたものもすべて消そう。考えてみれば私の比較癖が加速したのは、SNSに依存し始めてからだった。


 急にそんなことを思った。


 激しく焚かれたフラッシュが私の迷いを爆ぜ飛ばす。


 とても気分は爽快だった。


 別れの挨拶をしたところ、ユイさんとアミも帰り支度を始める。


「俺も明日学校だから帰るよ」

「二週間ぶりだっけ? お兄ちゃん。将来のこと相談してきなよ」
 
「わかってるよ」


 ついさっきまでの明るい雰囲気から一転、急に不穏な空気が流れる。


「もう6月なんだから。高校3年生は大事な年なんだよってお母さん言ってたじゃない」

「わかったって言ってる」


 なんだかそれ以上はその場にいちゃいけない気がして、私は何も聞こえなかったかのように外に出る。


 鼓動がありえないくらい速く打っていた。


『高校3年生』


 ……大学生じゃなかったの? 高校3年生なのに二週間ぶりの学校って。


 ユイさんの荒げられた声を反芻する。


 速くなる鼓動を押さえつけて、私は逃げるようにお店をあとにした。