「どうして敬語なの? ちょっと嫌かもしれない」

「じゃあ敬語はやめま……やめるね」

「あと、よかったらアミって呼んでほしい」

「うん、わかった。私もコトハで」


 アミは私が想像していたよりずっとよく喋る子だった。きっぱりと言い切るクールな話し方は思っていた通りだったけれど。


「今日はいつも一緒にいる子たちとは別行動なの?」

「……さっきまでは一緒にいたよ」

「喧嘩でもした?」

「……ケンカは、してないよ」

「コトハ、あの子たちと一緒にいる時すごくつまんなそうな顔してるから、なんとなくわかるけど」

「気づいてたの?」


 わかりやすいから、とアミが笑う。笑った顔も綺麗だった。


「自分が楽しくいられる場所にいればいいのよ。わざわざ好きでもない人と一緒にいるなんてバカみたい」

「し、辛辣だね」

「友だちがいない私が言うことじゃないけど」


 なんと返したらいいかわからず言葉に詰まると、彼女は「その顔やば、すごく困ってますって顔だ」とまた笑った。


「……からかってる?」

「からかってないよ?」


 アミがいたずらっぽく舌を出す。続けて「そういえば」と話題を変えた。


「もしかしてなんだけど、私って友だちいないんじゃなくて、作らないとか思われてる?」

「あ〜、思われてる、かも」

「ほんとは仲良くなりたくても、いつもなんだか上手くいかなくて」


 私もずっと彼女はひとりが好きなんだと思い込んでいた。


 話さなければ見えてこないことはたくさんある。それを改めて感じる。


「コトハがここに来たとき、チャンスだと思ったの。コトハは友だち多いから私とも仲良くしてくれるかもしれないって」

「私、アミの性格すごく好きだよ。もっと、もっと、仲良くなりたい」

「それ素で言ってる? 絶対男子とかには言わないでよ。天然タラシ怖いわ」


 でも、ありがと、とちょっと照れくさそうに言われた。


 別に上辺だけの友だちが多いからなんなんだ、と。そんなのはいらないからこの人と仲良くなりたい、と心から思った。


 そんなお昼休み。