朝になりムツヤは目覚めると、鈍い痛みが頭を襲う。ムツヤは初めて二日酔いを経験していた。
どんな病でも治る薬を二日酔いを治すために飲むと、体の内側から元気が溢れ出て意識が鮮明になってくる。
「おはようございます、お兄ちゃん」
ヨーリィは既に起きていたようで、ムツヤの横にちょこんと座っていた。
「あぁ、おはようヨーリィ」
「皆も起こす?」
「そうだね」
二人は手分けして仲間を起こし、薬を飲ませる。しばらくするとゾロゾロとテントから人が出てくる。
「うぅ、面目ありません」
「ちょーっと飲みすぎたかな」
モモは赤面し、アシノは懲りない様子だった。
「僕、昨日の記憶が無いんですが……」
ユモトはすっかり昨日の記憶が抜け落ちてしまったらしい。
「あれ、そういやルーの奴は?」
アシノは周りを見渡しても見つからないルーに疑問を抱く。
「ふっふーん、私が恋しくなっちゃったアシノ?」
遠くからルーが声をかけ、アシノは「馬鹿か」と素っ気なく返す。
「夜に探知盤で監視してる片手間に、今日は久しぶりに私が手料理を作りましたー!!!」
その瞬間、アシノは血の気が引いた。
「あー、えーっと、私はちょっと水浴びでもしてくるかなーって」
アシノはそっと沢に向かって歩くが、その肩をガッチリとルーが掴む。
「アーシノー? 水浴びは美味しい美味しい私の手料理を食べた後よ?」
「お、おう」と言って諦めたようにアシノは座る。他の皆は不思議そうに座った。
「ルー殿、申し訳ない。しかし、ルー殿の料理は初めてなので楽しみです」
「そうですね!」
モモとムツヤは無邪気にはしゃぐ、ルーは得意げに鍋から料理をすくって皆に配る。
皆が固まった、何かの乳で煮られたそれはシチューのようだが、鼻をつく甘い匂いがしている。
中に入っている具材も川魚、何かの肉、キノコ、何かの根っこ、その他は何かわからない。
「名付けて『ルーのお手製栄養満点シチュ』ーよ!!」
恐る恐るユモトは一口魚を食べた。吐きそうになる。甘い生クリームみたいな味付けの中に川魚の生臭さが鼻に広がった。
モモは肉を食べてみる。吐きそうになった。生臭さとぶちょぶちょした食感、そして得体のしれない物を食べている感覚。
作った当人のルーは笑顔で食べている。とても正気の沙汰とは思えない。
「ルー、あのな、作ってもらって言うのもあれなんだが、甘い乳で魚を煮込むのは、ちょっとな……」
「何言ってんのよ、好き嫌いは良くないわよ。いい? 人間は体に良いものは美味しいって感じるように出来ているの」
もちゃもちゃと食べながらルーは言い続ける。
「糖分脂質タンパク質ビタミンミネラル鉄分1日に必要な栄養素を1杯で摂取できるように計算して作られたこれが美味しくない訳がないのよ、生理的に」
アシノは「生理的に無理なんだが」と言いかけた、だが悪意がない分とても言いづらい。
ルーの効率を重視した料理は栄養学的には理にかなっているのかもしれないが、体が受け付けない。
どうしたものかと悩むアシノの肩をちょんちょんとムツヤは突いて、小さな瓶をよこす。蓋には穴が開いていて何かふりかけるものらしい。
それをムツヤはジェスチャーでかけるように伝えた。
ハッとしてアシノはそれをかけると、隣のユモトに同じ様にして渡す。そしてルーの地獄料理をよくかき混ぜて食べてみた。
「……うまい!!」
さっきまでの地獄が嘘のように、美味い料理に変わった。
この調味料に体に良くない成分が含まれてようが、感覚を麻痺させてようが、どうでもいい。美味いは正義なのだ。
「あ、おいしいです」
「本当だ……」
「皆もやっと私の料理の素晴らしさがわかったのね、おかわりもあるからじゃんじゃん食べて頂戴!!」
得意げにルーは大きな胸を張る。ルーの料理では毎回犠牲者が出るが、今回は誰も撃沈せずに済みそうだった。
どんな病でも治る薬を二日酔いを治すために飲むと、体の内側から元気が溢れ出て意識が鮮明になってくる。
「おはようございます、お兄ちゃん」
ヨーリィは既に起きていたようで、ムツヤの横にちょこんと座っていた。
「あぁ、おはようヨーリィ」
「皆も起こす?」
「そうだね」
二人は手分けして仲間を起こし、薬を飲ませる。しばらくするとゾロゾロとテントから人が出てくる。
「うぅ、面目ありません」
「ちょーっと飲みすぎたかな」
モモは赤面し、アシノは懲りない様子だった。
「僕、昨日の記憶が無いんですが……」
ユモトはすっかり昨日の記憶が抜け落ちてしまったらしい。
「あれ、そういやルーの奴は?」
アシノは周りを見渡しても見つからないルーに疑問を抱く。
「ふっふーん、私が恋しくなっちゃったアシノ?」
遠くからルーが声をかけ、アシノは「馬鹿か」と素っ気なく返す。
「夜に探知盤で監視してる片手間に、今日は久しぶりに私が手料理を作りましたー!!!」
その瞬間、アシノは血の気が引いた。
「あー、えーっと、私はちょっと水浴びでもしてくるかなーって」
アシノはそっと沢に向かって歩くが、その肩をガッチリとルーが掴む。
「アーシノー? 水浴びは美味しい美味しい私の手料理を食べた後よ?」
「お、おう」と言って諦めたようにアシノは座る。他の皆は不思議そうに座った。
「ルー殿、申し訳ない。しかし、ルー殿の料理は初めてなので楽しみです」
「そうですね!」
モモとムツヤは無邪気にはしゃぐ、ルーは得意げに鍋から料理をすくって皆に配る。
皆が固まった、何かの乳で煮られたそれはシチューのようだが、鼻をつく甘い匂いがしている。
中に入っている具材も川魚、何かの肉、キノコ、何かの根っこ、その他は何かわからない。
「名付けて『ルーのお手製栄養満点シチュ』ーよ!!」
恐る恐るユモトは一口魚を食べた。吐きそうになる。甘い生クリームみたいな味付けの中に川魚の生臭さが鼻に広がった。
モモは肉を食べてみる。吐きそうになった。生臭さとぶちょぶちょした食感、そして得体のしれない物を食べている感覚。
作った当人のルーは笑顔で食べている。とても正気の沙汰とは思えない。
「ルー、あのな、作ってもらって言うのもあれなんだが、甘い乳で魚を煮込むのは、ちょっとな……」
「何言ってんのよ、好き嫌いは良くないわよ。いい? 人間は体に良いものは美味しいって感じるように出来ているの」
もちゃもちゃと食べながらルーは言い続ける。
「糖分脂質タンパク質ビタミンミネラル鉄分1日に必要な栄養素を1杯で摂取できるように計算して作られたこれが美味しくない訳がないのよ、生理的に」
アシノは「生理的に無理なんだが」と言いかけた、だが悪意がない分とても言いづらい。
ルーの効率を重視した料理は栄養学的には理にかなっているのかもしれないが、体が受け付けない。
どうしたものかと悩むアシノの肩をちょんちょんとムツヤは突いて、小さな瓶をよこす。蓋には穴が開いていて何かふりかけるものらしい。
それをムツヤはジェスチャーでかけるように伝えた。
ハッとしてアシノはそれをかけると、隣のユモトに同じ様にして渡す。そしてルーの地獄料理をよくかき混ぜて食べてみた。
「……うまい!!」
さっきまでの地獄が嘘のように、美味い料理に変わった。
この調味料に体に良くない成分が含まれてようが、感覚を麻痺させてようが、どうでもいい。美味いは正義なのだ。
「あ、おいしいです」
「本当だ……」
「皆もやっと私の料理の素晴らしさがわかったのね、おかわりもあるからじゃんじゃん食べて頂戴!!」
得意げにルーは大きな胸を張る。ルーの料理では毎回犠牲者が出るが、今回は誰も撃沈せずに済みそうだった。