「大丈夫でしたかってお前……」
2つの翼竜の亡骸を前にアシノはそう一言。他の皆もムツヤの本気を見て言葉を失っている。
「あー、何ていうかー…… ムツヤっち本当に強いのね」
ルーは苦笑いしながら言った。そして翼竜の死体へと歩き首をツンツンと触ってみた。
「うん、死んでる。死んでるわよねそりゃ」
念の為の確認だったが、それはほとんど無意味だった。ムツヤはあっけらかんとして言う。
「えーっと、どうしますかこれ?」
「どうするって、そうねー……」
頭の回転の早いルーだったが流石に状況に頭が追いついていなかった。
「持って帰るなら切り分げでカバンに入れますけど」
「あーいやー、それしちゃうと怪しまれちゃうからギルドに連絡を入れて引き取って貰いましょう。そうだ!! 怪しまれないようにする為にほら、皆、翼竜の死体に攻撃入れて!!」
「それもそうだ」と皆で綺麗に真っ二つにされた翼竜の亡骸に攻撃を入れ、激戦があったかのように偽装工作をする。
翼竜との激戦を偽装工作した後、少し開けた場所に来て野営の準備を始めた。
被害なく依頼が達成できたのだから祝杯を上げるべきなのだろうが、昨日の夜の騒がしさが嘘のように皆、静かだった。
全力で翼竜と戦おうとしていたのに肩透かしを食らってしまったからか、ムツヤの圧倒的な強さを見たからか。あるいはその両方なのか。
「えーっと、ごはん出来ましたよ」
女性用テントでルーは黙々と探知盤を見続け、アシノは横になって天井をぼーっと見ていた。そこへユモトが声をかける。
「うん、ありがとう。ほらアシノご飯食べに行くわよ!」
ルーは無理にテンションを上げている様だった。「そうだな」と短く返事をしてアシノは立ち上がる。
男性用テントではいつも通りムツヤがヨーリィの手を握り、魔力を送っていた。
全員が焚き火を囲んで食事の準備ができるが、まるで誰か犠牲者が出たかのように静かだ。
「ほら、翼竜討伐記念に、イエーイかんぱー……い」
ルーが無理におちゃらけても気まずい空気が流れる。
ユモトとモモは昼間に見たあのムツヤと翼竜の戦いは夢で、今もその夢の中に居るのではないかと思うぐらい現実感が沸かなかった。
ヨーリィは何も気にせずに食事を食べ始めた。ムツヤは皆の態度にオドオドとしている。
「あ、あのぅ…… いや、何か皆さん大丈夫ですか?」
「い、いえ、ムツヤ殿。何もご心配召される事はありません。食事を食べましょう」
そう言ってモモはいそいそと食事を始めたが、味がよくわからない。
「なぁ、ムツヤ」
アシノがふと話し始めると全員の視線が集まった。それを見てアシノは軽く笑う。
「いや、大した話じゃないんだがな」
肉を喰らい、エールをぐいっと飲んでアシノは話し始める。
「ムツヤ、まず最初に言っておくがお前は何も悪くない」
悪くないと言われたが、ムツヤはまた自分はそれに近いことでもしでかしたのだろうかと不安になった。
「みんな、自分が思っていたよりも数倍お前の本気が凄すぎて頭が整理しきれてないんだよ」
また肉を1口、アシノが食べ終わるまで誰も言葉を出さない。
「正直嫉妬したよ。多分私が能力を失う前だったとしてもお前の方が遥かに強い」
「いえ、そんなごと……」
エールを飲み干してぷはぁーっとため息を1つ、そしてアシノは笑う。
「お前は凄い奴だよ、自信を持て」
ムツヤは喜んで良いのかよく分からなかった。そんな間にいつの間にかルーがムツヤの後ろに回り込み、抱きつく。
「ル、ルーざん!?」
小柄な割に大きな感触、ムツヤはいつものデレデレとした顔になった。
「勇者からお墨付きを貰ったんだから喜びなよー、ムツヤっちぃー」
モモが軽く咳払いをすると、ルーはパッと離れた。そして焚き火の前でクルクル回る。
「はーい皆、翼竜討伐記念にテンション上げていこー!!! かんぱーい!!」
今度は皆が乾杯の音頭に乗った。アシノ、ルー、モモの酒豪達は勢いよくエールを一気飲みし、ムツヤは初めて飲むエールに顔をしかめている。
程よく皆酒が聞いていた頃、またムツヤは号泣していた。
「うええええユモトさあああんんん、オデは裏の道具をオオオウワァアアッハハー!!!! この世界を!!! この世界を救いたい!!!」
「大丈夫れすよぉー、ムツヤさんならできますれすよー」
二人は見つめ合う。
「ユモトざぁん!!!」
「ムツヤさん!!!」
二人は抱き合っていた。ヨーリィの目がいつもより冷ややかなのは気のせいだろうか、その様子を見ながらマイペースに食事を摂る。
「あれ、モモちゃん飲んでなくなーい? ほらーいっきっきーのきー!!! いっきっきーのきー!!!」
ルーはモモを囃し立ててそれに乗せられてモモは腰に手を当ててエールを一気飲みする。
「僕、先走っちゃいました……」
ルーの足元には無残にも倒れた仲間達、誰も意識は無い。
「ユモトちゃん!? 大丈夫?」
ぐったりとしたユモトを抱きかかえてルーが喋る。
「僕の旅はここまでみたいです」
そう言ってユモトも意識を失う。
「ユモトちゃん!! どうして、どうしてこんな事に!!」
「ただ飲みすぎただけだと思う、ルーお姉ちゃん」
ヨーリィは倒れた仲間達を1人、また1人と担ぎ上げてテントの中に放り込んでいた。
「あーうん、そだよねー」
ルーはそう言って舌を出す。
―翼竜討伐の祝賀会での犠牲者『4人』―
2つの翼竜の亡骸を前にアシノはそう一言。他の皆もムツヤの本気を見て言葉を失っている。
「あー、何ていうかー…… ムツヤっち本当に強いのね」
ルーは苦笑いしながら言った。そして翼竜の死体へと歩き首をツンツンと触ってみた。
「うん、死んでる。死んでるわよねそりゃ」
念の為の確認だったが、それはほとんど無意味だった。ムツヤはあっけらかんとして言う。
「えーっと、どうしますかこれ?」
「どうするって、そうねー……」
頭の回転の早いルーだったが流石に状況に頭が追いついていなかった。
「持って帰るなら切り分げでカバンに入れますけど」
「あーいやー、それしちゃうと怪しまれちゃうからギルドに連絡を入れて引き取って貰いましょう。そうだ!! 怪しまれないようにする為にほら、皆、翼竜の死体に攻撃入れて!!」
「それもそうだ」と皆で綺麗に真っ二つにされた翼竜の亡骸に攻撃を入れ、激戦があったかのように偽装工作をする。
翼竜との激戦を偽装工作した後、少し開けた場所に来て野営の準備を始めた。
被害なく依頼が達成できたのだから祝杯を上げるべきなのだろうが、昨日の夜の騒がしさが嘘のように皆、静かだった。
全力で翼竜と戦おうとしていたのに肩透かしを食らってしまったからか、ムツヤの圧倒的な強さを見たからか。あるいはその両方なのか。
「えーっと、ごはん出来ましたよ」
女性用テントでルーは黙々と探知盤を見続け、アシノは横になって天井をぼーっと見ていた。そこへユモトが声をかける。
「うん、ありがとう。ほらアシノご飯食べに行くわよ!」
ルーは無理にテンションを上げている様だった。「そうだな」と短く返事をしてアシノは立ち上がる。
男性用テントではいつも通りムツヤがヨーリィの手を握り、魔力を送っていた。
全員が焚き火を囲んで食事の準備ができるが、まるで誰か犠牲者が出たかのように静かだ。
「ほら、翼竜討伐記念に、イエーイかんぱー……い」
ルーが無理におちゃらけても気まずい空気が流れる。
ユモトとモモは昼間に見たあのムツヤと翼竜の戦いは夢で、今もその夢の中に居るのではないかと思うぐらい現実感が沸かなかった。
ヨーリィは何も気にせずに食事を食べ始めた。ムツヤは皆の態度にオドオドとしている。
「あ、あのぅ…… いや、何か皆さん大丈夫ですか?」
「い、いえ、ムツヤ殿。何もご心配召される事はありません。食事を食べましょう」
そう言ってモモはいそいそと食事を始めたが、味がよくわからない。
「なぁ、ムツヤ」
アシノがふと話し始めると全員の視線が集まった。それを見てアシノは軽く笑う。
「いや、大した話じゃないんだがな」
肉を喰らい、エールをぐいっと飲んでアシノは話し始める。
「ムツヤ、まず最初に言っておくがお前は何も悪くない」
悪くないと言われたが、ムツヤはまた自分はそれに近いことでもしでかしたのだろうかと不安になった。
「みんな、自分が思っていたよりも数倍お前の本気が凄すぎて頭が整理しきれてないんだよ」
また肉を1口、アシノが食べ終わるまで誰も言葉を出さない。
「正直嫉妬したよ。多分私が能力を失う前だったとしてもお前の方が遥かに強い」
「いえ、そんなごと……」
エールを飲み干してぷはぁーっとため息を1つ、そしてアシノは笑う。
「お前は凄い奴だよ、自信を持て」
ムツヤは喜んで良いのかよく分からなかった。そんな間にいつの間にかルーがムツヤの後ろに回り込み、抱きつく。
「ル、ルーざん!?」
小柄な割に大きな感触、ムツヤはいつものデレデレとした顔になった。
「勇者からお墨付きを貰ったんだから喜びなよー、ムツヤっちぃー」
モモが軽く咳払いをすると、ルーはパッと離れた。そして焚き火の前でクルクル回る。
「はーい皆、翼竜討伐記念にテンション上げていこー!!! かんぱーい!!」
今度は皆が乾杯の音頭に乗った。アシノ、ルー、モモの酒豪達は勢いよくエールを一気飲みし、ムツヤは初めて飲むエールに顔をしかめている。
程よく皆酒が聞いていた頃、またムツヤは号泣していた。
「うええええユモトさあああんんん、オデは裏の道具をオオオウワァアアッハハー!!!! この世界を!!! この世界を救いたい!!!」
「大丈夫れすよぉー、ムツヤさんならできますれすよー」
二人は見つめ合う。
「ユモトざぁん!!!」
「ムツヤさん!!!」
二人は抱き合っていた。ヨーリィの目がいつもより冷ややかなのは気のせいだろうか、その様子を見ながらマイペースに食事を摂る。
「あれ、モモちゃん飲んでなくなーい? ほらーいっきっきーのきー!!! いっきっきーのきー!!!」
ルーはモモを囃し立ててそれに乗せられてモモは腰に手を当ててエールを一気飲みする。
「僕、先走っちゃいました……」
ルーの足元には無残にも倒れた仲間達、誰も意識は無い。
「ユモトちゃん!? 大丈夫?」
ぐったりとしたユモトを抱きかかえてルーが喋る。
「僕の旅はここまでみたいです」
そう言ってユモトも意識を失う。
「ユモトちゃん!! どうして、どうしてこんな事に!!」
「ただ飲みすぎただけだと思う、ルーお姉ちゃん」
ヨーリィは倒れた仲間達を1人、また1人と担ぎ上げてテントの中に放り込んでいた。
「あーうん、そだよねー」
ルーはそう言って舌を出す。
―翼竜討伐の祝賀会での犠牲者『4人』―