返事がない、ムツヤは近くのドアを片っ端から開けて2人を探す、そんな時だ。
ドアが開くと同時に腕が伸びてきた。左腕を掴まれムツヤは部屋の中に引っ張られる。
ムツヤはバランスを崩すが右腕で持っていた剣を相手に向けた。だが、その相手は敵ではなく、よく見知った顔だ。
「モモさん!?」
ムツヤは慌てて構えていた剣を下ろすと、モモは話を始める。
「ムツヤ殿、驚かせてしまい申し訳ございません」
モモはムツヤの手をギュッと両手で握った。そしてそれを胸へと近付けて押し当てた。
「も、モモさんなにをして」
「やっと2人きりになれましたね」
モモは頬を紅潮させ、目は大きく開けて潤んでいた。心なしか息遣いも荒い気がする。
「ムツヤ殿、お慕いしております」
次の瞬間モモはムツヤを前から抱きしめていた。突然の行動に唖然とし身動きが取れないムツヤ、そのままモモはベッドに倒れ込む。
「ムツヤ殿、覚えていらっしゃいますか? 私が死のうとした時に身を挺して止めてくれたこと、村を救ってくださった事」
ムツヤはモモに覆いかぶさるような姿勢になっていた、それを気にすることもなくモモは続けて言う。
「私はムツヤ殿に恩返しがしたいと言っていました、しかしそれはただの口実だと気付いたのです。本当は大好きなムツヤ殿のお側に居たかっただけなのです」
呼吸を更に荒げながらモモは首を横に向けてムツヤから視線をそらした。
「こんな醜い私でよければどうかお慈悲を下さい、ムツヤ殿の命令であればどんな事でもします。ですからどうか……」
言い切った後にまたムツヤの目を見つめるモモ、そしてムツヤを抱き寄せてムツヤのくちびるに自分の口を重ねようとする。
「そこまでです! スリープ!」
モモは力が抜けたように腕をだらんとさせて目を閉じる、どうやら眠ってしまったようだ。
「ムツヤさん大丈夫ですか!?」
「ユモトさん!」
扉の外にはユモトが杖を構えて立っている。
「事情は後で説明します、とりあえずこちらの部屋に来て下さい」
そう言ってユモトはムツヤの手を引いて自分の部屋へと招く。
「いやービッグリしましだ、モモさんは大丈夫なんでずか?」
カチャリ、扉の鍵が掛かる音がした。
「やっと2人きりになれましたね」
ムツヤはこの状況にデジャヴを感じる。
大きく見開いて、少しだけ狂気を混ぜた潤んだ瞳。そして紅潮した頬、さっきモモと出会った時と同じ状況だ。
「ゆ、ユモトさん!?」
ユモトはムツヤの両肩を掴んでそのまま手を後ろに回して抱きついた。
「ムツヤさん、覚えていますか? ムツヤさんは僕を助けてくれた」
ムツヤがユモトの肩にそっと手を置いて引き離すが、ユモトは続けて言う。
「ムツヤさん、頼みたいことがあるんですちょっと」
ユモトは口に手をあててモジモジとしている。
「一度でいいから、その、憧れているんですムツヤさんに!」
何を一度なのかムツヤにはわからないが、またユモトは抱きついてきた。
「い、一度ってなんですか? 何をですかぁ!?」
ムツヤはどうしていいかわからずに叫び声を上げる。
「そのために人目につかない所に来たんです、一回きりで僕は満足するんです。お願いですから、ねぇ、良いでしょう?」
そんなムツヤへの助け舟のごとく階段を駆け上がる音が聞こえた。
「ムツヤ、ムツヤどこだ!? モモ、ユモト、無事なのか!?」
アシノの声だ、ムツヤは大きな声を出して助けを求める。
「アシノさーん!! ここにいますー!!」
「どうして、2人きりになれたっていうのに」
ユモトは瞳孔を開いて絶望した顔をする。
ドアノブが何度かガチャガチャと音を立て、鍵が掛かっている事を理解するとアシノは回し蹴りを入れてドアを蹴破った。
「ムツヤ、ユモト! 無事か!?」
「アシノさん、ごめんなさい!」
そう言ってユモトはアシノに眠りの魔法を放つ、耐性のないアシノは崩れ落ちるように夢の中へと旅立つ。
「さぁ、ムツヤさん。こっちへ」
手を引かれてムツヤはベッドの近くまで連れて行かれる。
そしてユモトは仰向けに倒れこむようにしてベッドに横になる。手をつないでいるムツヤはユモトに覆いかぶさるようにベッドに倒された。
「ムツヤさん……」
ユモトは、うるんだ目でムツヤを見つめると顔を横にそらした。ムツヤは何故か一瞬ドキリとしたが、ハッと何かに気が付く。
「優しくしてくださいね」
「いや、優しくはできないと思いまずね。痛いと思いますが我慢してください」
「……はい」
ユモトは横を向いたまま右手を口にあてて目を細める。そしてムツヤはゴソゴソと何かを取り出した。
「いぎまずよ」
「はい」
その瞬間パァンと乾いた良い音がして、ユモトの頭に衝撃が走る。
「ふぎゃあ!!」
突然のことにユモトは変な声を出す、それと同時に急に頭の中がスッキリしていった。
「あれ、僕は何を……」
「元に戻りましたかユモトさん?」
目の前にいるムツヤを見てガバっとユモトは起き上がる。
「な、ムツヤさん!?」
「よがったー、ユモトさんがちゃんと戻って」
ムツヤの手にはハリセンが握られていた。
「ごめんなさい、これでちょっと頭を叩ぎまじた」
ムツヤが裏ダンジョンで正気を失って帰ってきた時、祖父のタカクがこのハリセンで頭をパァンと叩いて正気に戻していた事を思い出したのだ。
ドアが開くと同時に腕が伸びてきた。左腕を掴まれムツヤは部屋の中に引っ張られる。
ムツヤはバランスを崩すが右腕で持っていた剣を相手に向けた。だが、その相手は敵ではなく、よく見知った顔だ。
「モモさん!?」
ムツヤは慌てて構えていた剣を下ろすと、モモは話を始める。
「ムツヤ殿、驚かせてしまい申し訳ございません」
モモはムツヤの手をギュッと両手で握った。そしてそれを胸へと近付けて押し当てた。
「も、モモさんなにをして」
「やっと2人きりになれましたね」
モモは頬を紅潮させ、目は大きく開けて潤んでいた。心なしか息遣いも荒い気がする。
「ムツヤ殿、お慕いしております」
次の瞬間モモはムツヤを前から抱きしめていた。突然の行動に唖然とし身動きが取れないムツヤ、そのままモモはベッドに倒れ込む。
「ムツヤ殿、覚えていらっしゃいますか? 私が死のうとした時に身を挺して止めてくれたこと、村を救ってくださった事」
ムツヤはモモに覆いかぶさるような姿勢になっていた、それを気にすることもなくモモは続けて言う。
「私はムツヤ殿に恩返しがしたいと言っていました、しかしそれはただの口実だと気付いたのです。本当は大好きなムツヤ殿のお側に居たかっただけなのです」
呼吸を更に荒げながらモモは首を横に向けてムツヤから視線をそらした。
「こんな醜い私でよければどうかお慈悲を下さい、ムツヤ殿の命令であればどんな事でもします。ですからどうか……」
言い切った後にまたムツヤの目を見つめるモモ、そしてムツヤを抱き寄せてムツヤのくちびるに自分の口を重ねようとする。
「そこまでです! スリープ!」
モモは力が抜けたように腕をだらんとさせて目を閉じる、どうやら眠ってしまったようだ。
「ムツヤさん大丈夫ですか!?」
「ユモトさん!」
扉の外にはユモトが杖を構えて立っている。
「事情は後で説明します、とりあえずこちらの部屋に来て下さい」
そう言ってユモトはムツヤの手を引いて自分の部屋へと招く。
「いやービッグリしましだ、モモさんは大丈夫なんでずか?」
カチャリ、扉の鍵が掛かる音がした。
「やっと2人きりになれましたね」
ムツヤはこの状況にデジャヴを感じる。
大きく見開いて、少しだけ狂気を混ぜた潤んだ瞳。そして紅潮した頬、さっきモモと出会った時と同じ状況だ。
「ゆ、ユモトさん!?」
ユモトはムツヤの両肩を掴んでそのまま手を後ろに回して抱きついた。
「ムツヤさん、覚えていますか? ムツヤさんは僕を助けてくれた」
ムツヤがユモトの肩にそっと手を置いて引き離すが、ユモトは続けて言う。
「ムツヤさん、頼みたいことがあるんですちょっと」
ユモトは口に手をあててモジモジとしている。
「一度でいいから、その、憧れているんですムツヤさんに!」
何を一度なのかムツヤにはわからないが、またユモトは抱きついてきた。
「い、一度ってなんですか? 何をですかぁ!?」
ムツヤはどうしていいかわからずに叫び声を上げる。
「そのために人目につかない所に来たんです、一回きりで僕は満足するんです。お願いですから、ねぇ、良いでしょう?」
そんなムツヤへの助け舟のごとく階段を駆け上がる音が聞こえた。
「ムツヤ、ムツヤどこだ!? モモ、ユモト、無事なのか!?」
アシノの声だ、ムツヤは大きな声を出して助けを求める。
「アシノさーん!! ここにいますー!!」
「どうして、2人きりになれたっていうのに」
ユモトは瞳孔を開いて絶望した顔をする。
ドアノブが何度かガチャガチャと音を立て、鍵が掛かっている事を理解するとアシノは回し蹴りを入れてドアを蹴破った。
「ムツヤ、ユモト! 無事か!?」
「アシノさん、ごめんなさい!」
そう言ってユモトはアシノに眠りの魔法を放つ、耐性のないアシノは崩れ落ちるように夢の中へと旅立つ。
「さぁ、ムツヤさん。こっちへ」
手を引かれてムツヤはベッドの近くまで連れて行かれる。
そしてユモトは仰向けに倒れこむようにしてベッドに横になる。手をつないでいるムツヤはユモトに覆いかぶさるようにベッドに倒された。
「ムツヤさん……」
ユモトは、うるんだ目でムツヤを見つめると顔を横にそらした。ムツヤは何故か一瞬ドキリとしたが、ハッと何かに気が付く。
「優しくしてくださいね」
「いや、優しくはできないと思いまずね。痛いと思いますが我慢してください」
「……はい」
ユモトは横を向いたまま右手を口にあてて目を細める。そしてムツヤはゴソゴソと何かを取り出した。
「いぎまずよ」
「はい」
その瞬間パァンと乾いた良い音がして、ユモトの頭に衝撃が走る。
「ふぎゃあ!!」
突然のことにユモトは変な声を出す、それと同時に急に頭の中がスッキリしていった。
「あれ、僕は何を……」
「元に戻りましたかユモトさん?」
目の前にいるムツヤを見てガバっとユモトは起き上がる。
「な、ムツヤさん!?」
「よがったー、ユモトさんがちゃんと戻って」
ムツヤの手にはハリセンが握られていた。
「ごめんなさい、これでちょっと頭を叩ぎまじた」
ムツヤが裏ダンジョンで正気を失って帰ってきた時、祖父のタカクがこのハリセンで頭をパァンと叩いて正気に戻していた事を思い出したのだ。