ヨーリィは1度も笑顔を見せてくれた事が無いなと、こちらを真っ直ぐ見つめる濁った紫色の瞳を見てムツヤは思う。
まぁ数日前に知り合ったばかりでは無理もないかと、そう思っておく事にした。
2人は生活雑貨を売っている店を探す。2人の間に会話は無い。何だかそれが気まずく思えてムツヤはうーんと考える。
「ヨーリィは必要なものとか欲しいものは無いの?」
「お兄ちゃん、さっきも言ったけど石鹸が欲しい」
会話が終わった。
ムツヤはまた何か考える。そんな所に甘い香りがふわっとした。
そちらの方向を向くと、薄く焼いた小麦の生地で生クリームやフルーツを包んだ菓子『クレープ』が売られている。
「ヨーリィ、あれ何だろう」
「私にもわからないわ、お兄ちゃん」
ヨーリィは無愛想に言うが、気のせいかムツヤの目にはほんの少しだけ興味がありそうに見えた。
「あれ、買って食べてみようか?」
「お夕飯食べられなくなるよ、お兄ちゃん」
「大丈夫だっで」
ニコッとムツヤは笑ってヨーリィの手を引っ張ってクレープ屋に近付く。
「すいません! 2つ下さい!」
「はい、まいどー!」
恰幅のいい店主が元気よく返事をする。眼の前で薄く生地が焼かれた後、大理石の上に置かれた。
その上に保冷庫から取り出したホイップクリームと南国の食べ物『バナナ』砕いたアーモンド、メープルシロップを乗せて包めば完成だ。
「うわーすげーいい匂い」
クレープを受け取るとムツヤがはしゃいでいた。そして広場の空いているベンチに座り、ヨーリィはその隣にピッタリとくっついて座る。
「それじゃいただきまーす」
「いただきます」
ひと口かじった。ホイップクリームが口の中に広がって、その中からバナナの柔らかさと砕いたアーモンドのカリッとした食感が絶妙に相まって最後にはメープルシロップの風味が鼻を抜けていく。
「うっめええええ!!! 何ごれめっちゃ美味いぞ!」
ムツヤはそう言いながら2口3口と食べていった。ヨーリィは主人を横目で見ながら両手でクレープを持ってもしゃもしゃと小さな口で食べている。
味の感想もリアクションも無いヨーリィを見て少しムツヤは不安を覚えた。
「あ、あのーヨーリィ? 美味しい?」
心配そうな顔をしてムツヤは思わずそんな事を聞いてしまった。するとヨーリィはゆっくりと頷いて話し始める。
「うん、甘い物ってあまり食べたこと無かったけど、美味しい」
「そっか、良がっだ!」
ムツヤは笑顔になってまたクレープを食べ始め、ヨーリィよりも早く食べ終えてしまった。
「あっ、モモさん達にもお土産に買っていこう!! ちょっと行ってくるねヨーリィ」
「わかった、お兄ちゃん」
クレープ屋に走るムツヤを見てヨーリィは思う。ムツヤは何でいつもあんなに楽しそうなのだろうと。
楽しそうなムツヤと同じ行動をして同じ景色を見て、同じ物を食べた自分はもしかして楽しいという状態なのだろうか。
答えはわからない。大昔にはそんな感情もあった気がしたが、楽しさや悲しさを思い出そうとしても頭がぼんやりとしてしまっている。
「ただいまー、それじゃ髪の油と石鹸を買いに行こうか!」
ただ、ムツヤとは一緒に居たいと思う気持ちはあった。それは前の主人であるマヨイギを人質に取られているからだろうか、それもわからない。
「うん」
一言だけそう言ってヨーリィはムツヤの手をギュッと握った。
「ムツヤ殿!!」
メイド服を着たモモが玄関の扉を開けると開口一番に言う。
「本当にご無事で良かった……」
日は少し前に暮れてしまい、モモの潤んだ瞳は魔法の照明の光を反射してキラキラと輝いて見える。
街からの帰り道は特に何も起こらず、ユモトが無駄に怯えただけで終わってしまった。
「ただいま、モモさん」
「おかえりなさい、ムツヤ殿」
「あー、イチャつくのは良いが家の中に入れてくれ」
二人を見てアシノは頭をぽりぽりと掻きながら言った、するとモモの目線はムツヤから慌ててアシノに移る。
「そ、そんな、い、イチャついてなどおりまちぇ、おりません!!」
「はいはい、わかったわかった」
そんなモモを押しのけてアシノは家に入った。「うぅ……」と言いながら顔を隠すように下を向いてモモは道を譲りムツヤ達も家の中へと入った。
「それじゃあ急いでお夕飯を作りますね!」
割烹着に着替えて台所に入るとユモトは袖をまくり上げて「お任せあれ」といった自信満々の顔をする。
「はい、お願いじまず。あ、あと皆にお土産にクレープ買っできだがら後で食べましょう」
「うわぁー、僕クレープ大好きなんですよ、ありがとうございますムツヤさん!」
その華のある笑顔は、一瞬ユモトが男であることを忘れてしまいそうになった。
台所から少し離れた居間で鎧を脱いでソファに座ってくつろいでいるアシノは対面に座るムツヤに尋ねる。
まぁ数日前に知り合ったばかりでは無理もないかと、そう思っておく事にした。
2人は生活雑貨を売っている店を探す。2人の間に会話は無い。何だかそれが気まずく思えてムツヤはうーんと考える。
「ヨーリィは必要なものとか欲しいものは無いの?」
「お兄ちゃん、さっきも言ったけど石鹸が欲しい」
会話が終わった。
ムツヤはまた何か考える。そんな所に甘い香りがふわっとした。
そちらの方向を向くと、薄く焼いた小麦の生地で生クリームやフルーツを包んだ菓子『クレープ』が売られている。
「ヨーリィ、あれ何だろう」
「私にもわからないわ、お兄ちゃん」
ヨーリィは無愛想に言うが、気のせいかムツヤの目にはほんの少しだけ興味がありそうに見えた。
「あれ、買って食べてみようか?」
「お夕飯食べられなくなるよ、お兄ちゃん」
「大丈夫だっで」
ニコッとムツヤは笑ってヨーリィの手を引っ張ってクレープ屋に近付く。
「すいません! 2つ下さい!」
「はい、まいどー!」
恰幅のいい店主が元気よく返事をする。眼の前で薄く生地が焼かれた後、大理石の上に置かれた。
その上に保冷庫から取り出したホイップクリームと南国の食べ物『バナナ』砕いたアーモンド、メープルシロップを乗せて包めば完成だ。
「うわーすげーいい匂い」
クレープを受け取るとムツヤがはしゃいでいた。そして広場の空いているベンチに座り、ヨーリィはその隣にピッタリとくっついて座る。
「それじゃいただきまーす」
「いただきます」
ひと口かじった。ホイップクリームが口の中に広がって、その中からバナナの柔らかさと砕いたアーモンドのカリッとした食感が絶妙に相まって最後にはメープルシロップの風味が鼻を抜けていく。
「うっめええええ!!! 何ごれめっちゃ美味いぞ!」
ムツヤはそう言いながら2口3口と食べていった。ヨーリィは主人を横目で見ながら両手でクレープを持ってもしゃもしゃと小さな口で食べている。
味の感想もリアクションも無いヨーリィを見て少しムツヤは不安を覚えた。
「あ、あのーヨーリィ? 美味しい?」
心配そうな顔をしてムツヤは思わずそんな事を聞いてしまった。するとヨーリィはゆっくりと頷いて話し始める。
「うん、甘い物ってあまり食べたこと無かったけど、美味しい」
「そっか、良がっだ!」
ムツヤは笑顔になってまたクレープを食べ始め、ヨーリィよりも早く食べ終えてしまった。
「あっ、モモさん達にもお土産に買っていこう!! ちょっと行ってくるねヨーリィ」
「わかった、お兄ちゃん」
クレープ屋に走るムツヤを見てヨーリィは思う。ムツヤは何でいつもあんなに楽しそうなのだろうと。
楽しそうなムツヤと同じ行動をして同じ景色を見て、同じ物を食べた自分はもしかして楽しいという状態なのだろうか。
答えはわからない。大昔にはそんな感情もあった気がしたが、楽しさや悲しさを思い出そうとしても頭がぼんやりとしてしまっている。
「ただいまー、それじゃ髪の油と石鹸を買いに行こうか!」
ただ、ムツヤとは一緒に居たいと思う気持ちはあった。それは前の主人であるマヨイギを人質に取られているからだろうか、それもわからない。
「うん」
一言だけそう言ってヨーリィはムツヤの手をギュッと握った。
「ムツヤ殿!!」
メイド服を着たモモが玄関の扉を開けると開口一番に言う。
「本当にご無事で良かった……」
日は少し前に暮れてしまい、モモの潤んだ瞳は魔法の照明の光を反射してキラキラと輝いて見える。
街からの帰り道は特に何も起こらず、ユモトが無駄に怯えただけで終わってしまった。
「ただいま、モモさん」
「おかえりなさい、ムツヤ殿」
「あー、イチャつくのは良いが家の中に入れてくれ」
二人を見てアシノは頭をぽりぽりと掻きながら言った、するとモモの目線はムツヤから慌ててアシノに移る。
「そ、そんな、い、イチャついてなどおりまちぇ、おりません!!」
「はいはい、わかったわかった」
そんなモモを押しのけてアシノは家に入った。「うぅ……」と言いながら顔を隠すように下を向いてモモは道を譲りムツヤ達も家の中へと入った。
「それじゃあ急いでお夕飯を作りますね!」
割烹着に着替えて台所に入るとユモトは袖をまくり上げて「お任せあれ」といった自信満々の顔をする。
「はい、お願いじまず。あ、あと皆にお土産にクレープ買っできだがら後で食べましょう」
「うわぁー、僕クレープ大好きなんですよ、ありがとうございますムツヤさん!」
その華のある笑顔は、一瞬ユモトが男であることを忘れてしまいそうになった。
台所から少し離れた居間で鎧を脱いでソファに座ってくつろいでいるアシノは対面に座るムツヤに尋ねる。