ムツヤは部屋の鍵を開けると、アシノをベッドに寝かせて布団を被せた。そしてそのまま部屋を出ようとしたが服の裾を掴まれる。

「まーてームツヤー」

 酔いが回って顔を真っ赤にしたアシノはそう言ってムツヤを呼び止めた。

「ムツヤーそこん座れぇー」

 ムクリと起き上がり、ベッドの上であぐらをかいたアシノは自分の目の前をポンポンと叩き、ムツヤに座るように促す。

「お前にぃー冒険者とはなんたるかを教えてやるぅー」

「は、はいわがりました」

 素直にムツヤは従った。2人はベッドの上で向かい合って座っている。アシノは体をゆらゆらと揺らしながらムツヤに質問をした。

「ムツヤー、お前はなんで冒険者になったんだぁ?」

「えーっとでずね、俺はハーレムをじゃなくて、冒険を」

 ムツヤがハーレムという言葉を言ったのをアシノは聞き逃さない。後ろに倒れかけていた首をぐいっと前に持ち上げてムツヤを指さす。

「そう、ギルドでも言ってたなハーレムだなんだって! そんな不純な動機で冒険者が務まりゅと思うろか!?」

 ろれつが回らないままアシノは説教をする。ムツヤは苦笑いをしたままそれを聞いていた。

「あのー、アシノさんはどうして冒険者になろうとしたのですか?」

 今度はムツヤが質問をしてみる、アシノはゆらりゆらりと半分寝そうになりながら答える。

「わたしはぁーつよおくなりたくて、冒険者になったんだ、なのに、なのに……」

 ムツヤを見つめるアシノの瞳から涙がつたった。怒っていたのかと思いきや今度は泣き始めてしまう。

「らんだよ! ビンのフタをスッポーンと飛ばす能力って!! あのクソ女神め!!」

 えぐえぐと泣き始めたかと思うとアシノは自分がどれ程修行を頑張ったかを語り始めた。

 最初はちゃんと聞いていたムツヤだったが、疲れには勝てずにいつの間にかアシノが何を言っているのか頭で理解できなくなり、そのまま眠りに落ちてしまう。