町外れですっかり酔いつぶれた赤髪の勇者の肩をムツヤとモモは支えていた。

 酔い冷ましにムツヤの薬を飲ませようとしたが「もうやらぁのめにゃあいい」と首を振ってアシノはそれを拒んだので仕方なしにこうして運んでいる。

 ユモトは家に帰るようなのでムツヤとヨーリィ、モモ、そして赤髪の勇者アシノといった奇妙なパーティで街を歩く。

「ムツヤ殿、ひとまずアシノ殿は我々の泊まっている宿に連れていきましょうか」

「そうですね」

 完全に眠ってしまったアシノを引きずるわけにもいかないのでモモが「私が背負います」と言ったが「大丈夫でずよ」とムツヤは言ってヒョイと背負った。

 その時、若干鼻の下が伸びていたようにモモは感じたがそれは見間違いだということにしておく。

 ムツヤ達はいつもの宿屋まで戻ってきた、フロントではあのグネばあさんがロッキングチェアに乗ってゆらゆらと揺れている。

 モモはふと老婆はいつ寝ているのだろうと疑問に思った。

「おーおー、遅いお帰りだこと」

 そう言ってムツヤ達に目線を移した後、グネばあさんは大きく目を見開く。

「なんだい、今度は赤髪の勇者にまで手を出したのかい、ケッケッケ」

「グネ婆さん、いろいろと事情があっただけだ」

 モモは軽く話を流すと預けておいた部屋の鍵を受け取ろうとする。今日一日だけで色々な事があった。

 迷い木の怪物と戦い、疲れを取るために飲みに行ったら面倒事が起き、モモは疲れ切っていて一刻も早く休みたい気持ちだ。

「ちょっとお待ち、モモちゃん達が泊まるのは1人部屋と2人部屋だろう? もう1人増えたならその分部屋は借りてもらわないとネェ」

「あ、あぁ、そうだった。アシノ殿が泊まる1人部屋を追加で頼む」

「はいよ」

 そう言ってグネばあさんは3つ部屋の鍵を渡した。それを受け取るとムツヤ達はそれぞれの部屋へ向かう。

「それじゃヨーリィは先に部屋に行ってで、俺はアシノさんを部屋に連れて行ったら戻るから」

「わかった、お兄ちゃん」

「申し訳ありませんが頼みましたムツヤ殿、先に休ませていただきます」

 3人はそれぞれの部屋へ向かう、モモは部屋に着くなりベッドに倒れ込んで数分もしない内に眠ってしまった。

 ヨーリィはベッドにちょこんと座り自分の主が戻るのを待っている。