(イラスト:らいどけえ先生)
森を抜けアシノの後を着いて行くと、街の外れの小さな建物にたどり着いた。
中ではろうそくの火が寂しげに揺らめいているが、外見は小綺麗にしてある。
「マスター、いるか?」
「あぁ、アシノさんか。いらっしゃい」
広くはないが、狭苦しくもない。そんな感じのバーだった。客はまだ他に居ない。好都合だとアシノは慣れたように言う。
「マスター、今日は貸し切りで頼む。それと会話はもちろん他言無用でな」
アシノが金貨を3枚テーブルに置くと「かしこまりました」と言いマスターは表の看板を『閉店』に変えた。
バーにしては珍しく、靴を脱いでゆったりと座れる座席があった。アシノはそこにどかっと座る。
「金は払ってある、好きなもんいくらでも頼みな」
そうは言われてもと、気まずい沈黙が流れる。その沈黙を破ったのは意外にもヨーリィだった。
「私はオレンジジュースで」
「あ、えっと、僕も酔っ払うとお話できなくなるのでそれで」
ユモトが続けていった、ムツヤも「俺もそれで」と続ける。従者が1人酒を頼むわけにもいかず、モモもこの流れに合わせる。
「なんだい、ここは酒を呑むところだよ? 揃いも揃って…… マスター私はオンセブルーで、あとお子ちゃま達にはオレンジジュースをくれ」
しばらくすると青色のカクテルとオレンジジュースが運ばれてきた。アシノはそれをマドラーでカラカラと回してぐいっと半分ほど飲み干すと口を開く。
「腹を割って話そうじゃないか、ここのマスターはこの街の誰よりも口が堅いし信用できる。何話したって大丈夫さ」
「え、えーっと何から話せばいいのか……」
ムツヤはポリポリと頭を掻いて、ヨーリィはちびちびとオレンジジュースを飲む。
「私から話すか、さっきウートゴが言っていた通り私の能力は『ビンのフタをスッポーンと飛ばす能力』これだけだ」
ユモトとモモは驚きの声を上げる。
「何故そんな事になったんですか?」
ユモトは質問を投げかけた。するとアシノは視線を右に移動させ苦々しく言った。
「自分の覚えた剣技や魔法全てを忘れる代わりに、魔人を倒せる力を手に入れようとしたんだ。そうしたらあのクソ女神様はハズレ能力を授けてくれたってわけさ」
沈黙がまた流れる。その話が本当ならば流石に気の毒すぎてなんて言葉をかければ良いのか分からない。