いつの間にかムツヤは眠ってしまっていた。目を覚ますと眼前には真っ白な肌の少女。

 ムツヤはヨーリィと向かい合って眠っていたようだ、手を握ったままヨーリィはスゥスゥと寝息をたてている。

 そろそろ手を離しても大丈夫だろうかとムツヤは恐る恐る手を離してみた。

 ヨーリィは枯れ葉になってしまうことも、目を覚ます事も無い。

 窓から外を見てみる、太陽は真っ赤になりすっかり夕暮れ時だ、そろそろ良い時間かなと思い、ムツヤはヨーリィを起こすことにする。

「ヨーリィ、そろそろ起きて」

 ムツヤはヨーリィの肩を触ってゆさゆさと揺さぶり起こそうとする。少女は薄っすらと目を開けてうーんと唸ってムツヤを見つめた。

「申し訳ありません、すっかり寝てしまいました」

「いいや、大丈夫だよ」

 ムツヤはニッコリと笑って言う、ヨーリィの口調以外はまるで本当の仲の良い兄妹のようだ。

「そろそろモモさんも待ってるかもしれないから行こう」

「了解いたしました」

 部屋を出てロビーへと向かう、そこではモモが紅茶を飲みながら2人を待っていた。

「いやー、お待たせしましたモモさん」

 ムツヤは手を降って声を掛けるとモモもニッコリと微笑み返す。

「いえ、私も今来たばかりです。それでは行きましょうか」

 そう言ってモモは紅茶を飲み干すと3人で夕暮れの街に出掛ける。

 そこは昼間とはまた少し違う街が顔を覗かせていた。それは冒険者のギルドも同じだった。

 ひと仕事を終えた冒険者たちがチラホラと酒を飲んでいる。

 そのギルドの食堂の中ではユモトが待っておりムツヤ達を見つけるとサッと立ち上がり軽く手を降った。

 宿屋でモモはムツヤのカバンから取り出した上物の服に着替えていた。

 口では乗り気でなかったが青色のドレスを着て少し嬉しそうだ。

 ムツヤは2人とは違い黒のTシャツに青色のジーンズの様な生地のズボンというラフな格好だ。

 手を振るユモトはさっきまで着ていた例のローブを身にまとっている。

「あれ、ユモトさん。そのお洋服っておせんたぐしたんじゃ?」

 ムツヤは疑問に思っていたことを聞いてみる。するとユモトはにっこりと笑って答えてくれた。

「はい、この服は水で洗った後に魔力を通すと一瞬で乾いてくれるんです」

 へぇーとムツヤとモモは関心した。まじまじと服を見られるとユモトは照れて、そんな事より何かお料理を頼みましょうと取っておいた席に座る。

「料理は適当に何品か頼もう、それと…… そうだな、私はウィスキーを飲もう」

「モモさん結構強いお酒を飲むんですね。あ、僕はワインにしようかな」

 ニコニコとユモトは笑顔を作って言った。楽しそうなユモトを見てモモも思わず笑みがこぼれる。

「俺はですねー…… お酒って初めてで何を頼んだら良いのか」

「ムツヤさんって苦手な物とかありますか?」

「そうですね、苦いものはダメなんですよ」

 ユモトは「そうですねー」と言いながらメニューを眺めた。

「それだったらこのコーヒーのお酒をミルクで割ったカクテルなんてどうですか?」

「コーヒーって苦いんじゃなかったでしたっけ?」

「そんな事ないですよ! 甘くて美味しいお酒になるんです」

「うーん、じゃあそれで」

「私もお兄ちゃんと同じのが良いです」

 ヨーリィがそう言うとユモトはうーんと困った顔になってしまう。

「ヨーリィちゃん、子供はお酒を飲んじゃダメなんだ」

「ユモトお姉ちゃん、私はお姉ちゃんよりも長く生きています」



(イラスト:にょん太郎先生)