「ムツヤさん、あの…… 僕を助けてくれて本当にありがとうございました」

「いえいえ、それは気にしないでぐださい」

 暗い静寂の中、背中合わせで2人は会話を始める。

「僕は…… 段々体が弱っていって、冒険者として外の世界を見ることもできなくなって。お父さんには迷惑も掛けて、いっそ苦しいなら自分で死んでしまおうかとも思っていたんです」

 ユモトはギュッと掛け布団を握った。

「でもやっぱり、死んじゃうんだって思ったら怖くて、色々な世界を見ることも出来ないんだって、魔法の修行も出来ないまま死んじゃうんだって、凄く無念で」

 もう病気の心配は無いはずなのにユモトの目からは涙が溢れる。

「だからムツヤさんに助けてもらったこと、物凄く感謝しています。なのにこんな事になってしまって」

「迷ったのはユモトさんのせいじゃないですよ」

 ムツヤはそう言ったが、どうやらユモトはまだ自分を責めていた。

「僕が魔力に気付けば防げたかもしれません」

「大丈夫です、何があっても俺が守りまずがら」

 ムツヤの言葉に思わずユモトは振り返った、そして横になったままムツヤとの距離を詰める。

「僕は、僕は…… 最低なんです、こんな状況だってのに自分が死んでしまうことが怖いんです。そればかり考えてしまうんです」

「まぁ何とかなるでしょう、平気ですよ。自分を責めないで下さい」

 気付けばユモトはムツヤの背中にくっついて泣いていた。死ぬことへの恐怖と、それしか考えられない自分の未熟さ、情けなさに泣いた。