「人は金を使って生きている、金の話を汚いって嫌う馬鹿もいるが、社会で生きる以上金は大切なんだ。金が全てとは言わないが、金が無いとみじめな思いをする機会が増える」

「友人? お、俺とギルスさんは友達なんですか!?」

「あ、あぁ、そうだな。これからもよろしく頼むよ」

 食いついてくる所そこかよとギルスは苦笑いをする。

 説教なんてキャラじゃないのに年下の冒険者に忠告を入れてやったのだが、お説教の内容はムツヤの少々残念な頭には入っていなかったらしい。

「モモさん、やりましだ! 俺生まれて初めで友達が出来ましだ!」

 ギルスはポカンとしていた、コイツ友達が居なかったのか? よっぽどの訳ありなのだろうかとモモに目配せをするが、彼女は魂が抜けた顔をしていた。

 自分は友人だと思われていなかったのかと、ハッキリ分かりモモはショックを受けていた。従者になると言ったのは自分自身なので仕方が無いのだが……

「ギールースー…… お前がムツヤ殿の初めてだと?」

「ちょっ、ちょっと変な言い方はやめてモモちゃん? おーい、ムツヤくん? モモちゃんは先にもう君のお友達だったようだよ?」

 緑肌の美人が顔を寄せてくるのは結構なことだが、とばっちりで怒りの矛先を向けられるのはたまらないとギルスはムツヤに助けを求めた。

「そうだっだんでずか!?」

「え、あ、いやぁ…… わ、私はムツヤ殿の従者であり、友人になるなんてそんなおこがましい望みを持つことは…… しかし私はムツヤ殿が望むのであれば何者にでもなる覚悟は……」

 さっきまでの威勢はどこにやら、モモは口元に手を当ててモジモジと左下に目線を移して話し始めた。

「難しい言葉はわがんないけどモモさん嫌がってるみたいです」

 あ、こいつバカだ。

 ギルスはわかってしまった、ムツヤは馬鹿でモモはモモで回りくどすぎる。パーティを組むには酷い組み合わせだ。

 今度はムツヤがあからさまに落ち込む。

「モモさん俺のこと嫌いだったんですか?」

「いえ、違う! 違いますムツヤ殿!!」

「大丈夫だよームツヤくん。モモちゃん君のこと大好きだって」

 髪を指先でくるくるいじりながら面倒臭そうにギルスは言った。するとまたモモは慌てふためく。

「い、いや、ちがう、いや、違わないが、き、貴様何を言うかだ、だだだ、大好きって貴様」

「やっぱりモモさん俺のこと嫌いなんですね……」

 噛み合わない、徹底的に2人の会話は噛み合わなかった。

「あーもー痴話喧嘩は外でやってくれ!!」