メボシは何発か光の刃を被弾してしまった。自身の強さゆえに経験したことが無い傷みが襲う。
「ぐがはっ」
青色の血を吐くメボシ。空を飛び逃げようと画策するも、飛んでくるムツヤがそれを許さない。
くるくると縦回転するムツヤの剣を何とか防ぐも、地面に叩き落されてしまった。
地上では大爆破の魔法を準備していたトチノハにより、メボシは巨大な爆風に巻き込まれてしまう。
体が千切れそうになるも、何とか耐え、メボシは逃走を図った。
次の瞬間。空から急降下したムツヤの剣により、メボシは一刀両断される。
最後の言葉を出す暇も無く、メボシは力尽きたのだ。
「はぁはぁ、終わったのか?」
イタヤは剣を構えたまま言う。
「念のため、爆破でもしておきましょうか」
トチノハは真っ二つになったメボシの亡骸を何回も爆破して木端微塵にする。
「終わった、か」
ふぅーっと息を吐いてサツキも言う。だが、別の問題が起きてしまった。
「何故、勇者……。いや、元勇者トチノハがここに!? そして魔人と戦っていたその方は一体……」
近衛兵の魔女イズミが言う。ムツヤは今回、着替える暇も無く、青い鎧の冒険者では無かった。
「ムツヤ、目撃者の記憶を消すぞ」
「わがりまじだ!!」
ムツヤは付近に強力な睡眠魔法を放つ。上級魔女のイズミでさえ、それに抗うことは出来なかった。
「大丈夫ですか?」
イズミはアシノに抱えられ、揺さぶられ、目を覚ます。
「アシノ……様?」
ぼんやりとした頭が段々と晴れてくる。
「アシノ様!! 魔人は、魔人は!?」
「えぇ、我々で倒しました」
それを聞いたイズミだったが、安堵する表情ではなく、寂しげな顔をしていた。
「近衛兵長が……」
「カミト様については残念でした。我々がもっと早く応援に来ていれば……」
イズミは両手で顔を隠し、静かに泣く。
力を放出して使い果たしたムツヤは王都の無事だった宿屋で眠っている。
「何だか大変なことになっちゃったわね」
ルーが紅茶を飲みながら言う。宿屋で用意をする余裕など無いので、ムツヤのカバンから取り出した茶や食事を食べていた。
「あの魔人メボシとやら、歴代の魔人とは比べ物にならない程の強さだった」
アシノはそこまで言って、続ける。
「私も、大昔の魔人は伝承でしか知らないが、元から魔人だったあのラメルと言い、今回の魔人と言い、明らかに強すぎる」
「一体何が起きているんでしょう……」
ユモトもそれを聞いて不安そうだ。
魔人の襲撃によって破壊された王都。犠牲者もそれなりに出てしまった。
王都への魔人の襲来は、魔人ギュウドー、ナツヤ、メボシと三回に渡り、住民の間には不安が広がっている。
王都の治安は悪くなった。この混乱に乗じた盗みや強盗、その他犯罪が横行する。
それらを取り締まる兵も大部分を失ってしまった。
メボシの襲撃から三日間、王都は民衆も政治も混乱を極めていた。
復興のために動いていたが、天変地異でも起きたような惨状に、どこから手を付けて良いものか分からなかった。
王都の外にある墓地に次々と遺体が運び込まれる。
中では崩れ落ちた瓦礫を撤去していた。
ムツヤはまだ目を覚まさないが、仲間達は王都で思い思いに過ごしている。
毎度のことながらムツヤを心配そうに見ているモモ。
ユモトはアシノに連れ出され、魔法を使うふりをして回復薬を重症者に振りかけていた。
ルーは精霊を使い、取り残された被災者が居ないか探す手伝いをし、ヨーリィもそれを手伝う。
三日目の晩にムツヤは不思議な夢を見た。
邪神サズァンが悲しそうな顔でこちらを見ている
ムツヤは何か声を掛けようとするが、言葉が出て来ない。
サズァンはムツヤに背を向けて光の中へと消えていく。
追いかけようとしたが、体が動かない。
夜に王都の外壁の上で外を監視している兵は違和感を感じた。
それと同時に大きな地響きがなる。
思わず目を疑った。王都から数キロ程先に何かが地面から突き上がってきた。
それはどんどんと天高く生え上がる。歪な形の塔だった。
そして、眺めていた兵士は気を失う。
眠っていたものはそのまま夢で、起きているものは気を失い、皆で同じ夢を見た。
それは王都だけではない。国中、いや、世界中の人間に同じ現象が起きる。
目の前に褐色の肌で、紫のアイシャドウとカラーリップ。爪も同じく毒々しい同じ色で塗られた美しい女が現れた。
「我は邪神サズァン。今から七日後に世界を滅ぼすものなり」
ハッと言って目を覚ましたアシノ。同室のルーとモモも飛び起きた。
「今の夢……」
アシノの言葉に、ルーも驚く。
「今の、サズァン様よね?」
モモもそれを聞いて慌てる。
「私もサズァン様の夢を見ました!」
「どういう事だ!?」
三人は互いを見つめ合うが、アシノが「そうだ」と言ってベッドから飛び降りる。
「ムツヤに会いに行くぞ!!」
部屋を飛び出て隣のムツヤ達の部屋を開ける。
「ムツヤ!! ムツヤ起きているか!?」
ユモトとヨーリィがアシノ達を見た。
「アシノさん!! 今の夢は!?」
ユモトが問いかけ、アシノは返す。
「私にもわからん。ムツヤを起こすぞ!!」
アシノがムツヤを揺さぶろうとする直前で、ムツヤは目を覚ました。
ムツヤは目が覚めると同時に、自分を囲む仲間達が視界に入った。
「皆さん!?」
「ムツヤ!! お前もあの夢を見たか!?」
「サズァン様の夢は見ましたけど……」
アシノは嫌な予感に心臓が早く脈打った。
「サズァン様、世界を滅ぼすとか言っていたけど……」
ルーが言うと、ムツヤは驚く。
「そんな事を言っていたんですか!?」
「夢の中で言っていただろう!? お前は見なかったのか!?」
アシノに言われ、ただ事ではない空気を察しながらも、ムツヤは自分の見た夢を話す。
「俺はサズァン様がどこかに消えていく夢を見ました」
それを聞いて、アシノはムツヤだけは別の夢を見たことに気付く。
「ともかくだ、お前のペンダントで邪神サズァンに連絡は取れないか!?」
「やってみます!!」
「ぐがはっ」
青色の血を吐くメボシ。空を飛び逃げようと画策するも、飛んでくるムツヤがそれを許さない。
くるくると縦回転するムツヤの剣を何とか防ぐも、地面に叩き落されてしまった。
地上では大爆破の魔法を準備していたトチノハにより、メボシは巨大な爆風に巻き込まれてしまう。
体が千切れそうになるも、何とか耐え、メボシは逃走を図った。
次の瞬間。空から急降下したムツヤの剣により、メボシは一刀両断される。
最後の言葉を出す暇も無く、メボシは力尽きたのだ。
「はぁはぁ、終わったのか?」
イタヤは剣を構えたまま言う。
「念のため、爆破でもしておきましょうか」
トチノハは真っ二つになったメボシの亡骸を何回も爆破して木端微塵にする。
「終わった、か」
ふぅーっと息を吐いてサツキも言う。だが、別の問題が起きてしまった。
「何故、勇者……。いや、元勇者トチノハがここに!? そして魔人と戦っていたその方は一体……」
近衛兵の魔女イズミが言う。ムツヤは今回、着替える暇も無く、青い鎧の冒険者では無かった。
「ムツヤ、目撃者の記憶を消すぞ」
「わがりまじだ!!」
ムツヤは付近に強力な睡眠魔法を放つ。上級魔女のイズミでさえ、それに抗うことは出来なかった。
「大丈夫ですか?」
イズミはアシノに抱えられ、揺さぶられ、目を覚ます。
「アシノ……様?」
ぼんやりとした頭が段々と晴れてくる。
「アシノ様!! 魔人は、魔人は!?」
「えぇ、我々で倒しました」
それを聞いたイズミだったが、安堵する表情ではなく、寂しげな顔をしていた。
「近衛兵長が……」
「カミト様については残念でした。我々がもっと早く応援に来ていれば……」
イズミは両手で顔を隠し、静かに泣く。
力を放出して使い果たしたムツヤは王都の無事だった宿屋で眠っている。
「何だか大変なことになっちゃったわね」
ルーが紅茶を飲みながら言う。宿屋で用意をする余裕など無いので、ムツヤのカバンから取り出した茶や食事を食べていた。
「あの魔人メボシとやら、歴代の魔人とは比べ物にならない程の強さだった」
アシノはそこまで言って、続ける。
「私も、大昔の魔人は伝承でしか知らないが、元から魔人だったあのラメルと言い、今回の魔人と言い、明らかに強すぎる」
「一体何が起きているんでしょう……」
ユモトもそれを聞いて不安そうだ。
魔人の襲撃によって破壊された王都。犠牲者もそれなりに出てしまった。
王都への魔人の襲来は、魔人ギュウドー、ナツヤ、メボシと三回に渡り、住民の間には不安が広がっている。
王都の治安は悪くなった。この混乱に乗じた盗みや強盗、その他犯罪が横行する。
それらを取り締まる兵も大部分を失ってしまった。
メボシの襲撃から三日間、王都は民衆も政治も混乱を極めていた。
復興のために動いていたが、天変地異でも起きたような惨状に、どこから手を付けて良いものか分からなかった。
王都の外にある墓地に次々と遺体が運び込まれる。
中では崩れ落ちた瓦礫を撤去していた。
ムツヤはまだ目を覚まさないが、仲間達は王都で思い思いに過ごしている。
毎度のことながらムツヤを心配そうに見ているモモ。
ユモトはアシノに連れ出され、魔法を使うふりをして回復薬を重症者に振りかけていた。
ルーは精霊を使い、取り残された被災者が居ないか探す手伝いをし、ヨーリィもそれを手伝う。
三日目の晩にムツヤは不思議な夢を見た。
邪神サズァンが悲しそうな顔でこちらを見ている
ムツヤは何か声を掛けようとするが、言葉が出て来ない。
サズァンはムツヤに背を向けて光の中へと消えていく。
追いかけようとしたが、体が動かない。
夜に王都の外壁の上で外を監視している兵は違和感を感じた。
それと同時に大きな地響きがなる。
思わず目を疑った。王都から数キロ程先に何かが地面から突き上がってきた。
それはどんどんと天高く生え上がる。歪な形の塔だった。
そして、眺めていた兵士は気を失う。
眠っていたものはそのまま夢で、起きているものは気を失い、皆で同じ夢を見た。
それは王都だけではない。国中、いや、世界中の人間に同じ現象が起きる。
目の前に褐色の肌で、紫のアイシャドウとカラーリップ。爪も同じく毒々しい同じ色で塗られた美しい女が現れた。
「我は邪神サズァン。今から七日後に世界を滅ぼすものなり」
ハッと言って目を覚ましたアシノ。同室のルーとモモも飛び起きた。
「今の夢……」
アシノの言葉に、ルーも驚く。
「今の、サズァン様よね?」
モモもそれを聞いて慌てる。
「私もサズァン様の夢を見ました!」
「どういう事だ!?」
三人は互いを見つめ合うが、アシノが「そうだ」と言ってベッドから飛び降りる。
「ムツヤに会いに行くぞ!!」
部屋を飛び出て隣のムツヤ達の部屋を開ける。
「ムツヤ!! ムツヤ起きているか!?」
ユモトとヨーリィがアシノ達を見た。
「アシノさん!! 今の夢は!?」
ユモトが問いかけ、アシノは返す。
「私にもわからん。ムツヤを起こすぞ!!」
アシノがムツヤを揺さぶろうとする直前で、ムツヤは目を覚ました。
ムツヤは目が覚めると同時に、自分を囲む仲間達が視界に入った。
「皆さん!?」
「ムツヤ!! お前もあの夢を見たか!?」
「サズァン様の夢は見ましたけど……」
アシノは嫌な予感に心臓が早く脈打った。
「サズァン様、世界を滅ぼすとか言っていたけど……」
ルーが言うと、ムツヤは驚く。
「そんな事を言っていたんですか!?」
「夢の中で言っていただろう!? お前は見なかったのか!?」
アシノに言われ、ただ事ではない空気を察しながらも、ムツヤは自分の見た夢を話す。
「俺はサズァン様がどこかに消えていく夢を見ました」
それを聞いて、アシノはムツヤだけは別の夢を見たことに気付く。
「ともかくだ、お前のペンダントで邪神サズァンに連絡は取れないか!?」
「やってみます!!」


