ギルスはムツヤの剣を手に取るとカウンターの上に置いた。
そして、2人には店の椅子に掛けていてくれと言い残して店の奥へと引っ込んだ。
何が始まるのだろうとワクワクしていたムツヤの前にふわっと香ばしい匂いがする。
「ちょっとあの剣はじっくり見させてもらいたいからさ、親の形見なんだろ? これでも飲んで待っていてくれ」
「すまないな」
そう言ってモモはカップに手を伸ばしたが、真っ黒い液体を見て不思議そうにしているムツヤに気が付いた。
「あれ、もしかしてムツヤくんってコーヒーダメな感じ?」
「いや、ダメっでいうか初めて見たもんで」
「苦いの飲めないと大人になれないよムツヤくん」
そう言ってギルスはカウンターへ戻ってしまった。モモが心配そうに見守る中ムツヤはコーヒーに口を付けてみる。
「にがぁい」
そう言ってムツヤは顔のパーツをクシャッと中心に寄せて、そこそこ良い顔立ちからかけ離れた変な顔を見せると、それが笑いのツボに入ったらしくモモは笑いが堪えきれなくなった。
「む、むふぅやぶっくくく、申し訳無いムツヤど」
「やっぱにがあい……」
何とか取り繕うとしたモモだったが追撃でとどめを刺されてしまい、本格的に笑いだしてしまう。
そんな様子を見て『楽しそうだな』とギルスは思いながら、ルーペや羽箒に磨き布をカウンターの下から取り出して査定を始める。
柄の部分をレンズ越しに眺めたり鞘を磨いたり、そんな様子を二人も遠巻きに見ていたが、一つ一つの動作に何の意味があるのかはわからない。
ギルスは適当な男だが金と商品に関しては真摯だ。
相手によって値段を変えることも相手を騙すこともしない。
だから亜人にはこの店は人気があったのだが、逆に言えばそれ故に一般の客が少ないというのもある。
旅の疲れからか、ムツヤがウトウトし始めた頃に大きなひと仕事を終えたとばかりにギルスは二人に声を掛けた。
「お待たせーお二人さん、いやー時間掛かっちゃったよ、流石にこれは。回りくどいことは嫌いだからハッキリ言わせてもらうけど、今の俺の持ち合わせじゃ買い取りが出来ないな」
一瞬モモは驚いて目を丸くしたが、ムツヤの持ち物だと思えば納得もいく。
「なるほど、素人目にも業物だとは思ったが」
「本当ですかギルスさん!?」
ムツヤも驚いていた、あれって塔の1階に毎回2本3本は落ちてるから最近は見向きもしなかった剣だったのにと。
「あぁ、これは武器としての価値はもちろんあるが、どちらかと言うと骨董品としての価値があるね~」
続けてギルスは言う。
「今から200年前のパン・トーテ戦争時にこの国の部隊長が持っていた剣だね。ってことは君のご先祖さんはパン・トーテ戦争に参加してたのかもね」
剣の由来までギルスは解説を入れてくれた、あの剣にそんな歴史があった事をムツヤはもちろん知らなかった。
「まーそれほど珍しい剣じゃないけどこれは保存状態も良いからウチで買うなら80000バレシかなぁ。前もって言ってくれれば金は用意しておくんだけど平日じゃそこまで現ナマ置いとかないからなーウチは」
「8万バレシ!?」
安物の剣でも売値が3000バレシ程度だとするとかなりの高値だ。予想以上の値段にモモは驚きの声を上げる。
「どうしてもって言うなら今の俺の手持ちで買ってもいいけど3万バレシが限界かなー。鑑定料は初回サービスでまけておくから古物商に持って行ったほうが良いよー」
そう言ってギルスはコーヒをすすり、タバコのパイプに草を詰め終えていた。
「それでも良いです、買って下さい」
オイルライターを持つギルスの手がピタリと止まり、そして顔を動かさないで目線だけをパイプの先からムツヤへ向ける。
「それ、親の形見なんだろう? そんなに安売りして良いのかい? まるでその辺で拾ったみたいにさ」
そして、2人には店の椅子に掛けていてくれと言い残して店の奥へと引っ込んだ。
何が始まるのだろうとワクワクしていたムツヤの前にふわっと香ばしい匂いがする。
「ちょっとあの剣はじっくり見させてもらいたいからさ、親の形見なんだろ? これでも飲んで待っていてくれ」
「すまないな」
そう言ってモモはカップに手を伸ばしたが、真っ黒い液体を見て不思議そうにしているムツヤに気が付いた。
「あれ、もしかしてムツヤくんってコーヒーダメな感じ?」
「いや、ダメっでいうか初めて見たもんで」
「苦いの飲めないと大人になれないよムツヤくん」
そう言ってギルスはカウンターへ戻ってしまった。モモが心配そうに見守る中ムツヤはコーヒーに口を付けてみる。
「にがぁい」
そう言ってムツヤは顔のパーツをクシャッと中心に寄せて、そこそこ良い顔立ちからかけ離れた変な顔を見せると、それが笑いのツボに入ったらしくモモは笑いが堪えきれなくなった。
「む、むふぅやぶっくくく、申し訳無いムツヤど」
「やっぱにがあい……」
何とか取り繕うとしたモモだったが追撃でとどめを刺されてしまい、本格的に笑いだしてしまう。
そんな様子を見て『楽しそうだな』とギルスは思いながら、ルーペや羽箒に磨き布をカウンターの下から取り出して査定を始める。
柄の部分をレンズ越しに眺めたり鞘を磨いたり、そんな様子を二人も遠巻きに見ていたが、一つ一つの動作に何の意味があるのかはわからない。
ギルスは適当な男だが金と商品に関しては真摯だ。
相手によって値段を変えることも相手を騙すこともしない。
だから亜人にはこの店は人気があったのだが、逆に言えばそれ故に一般の客が少ないというのもある。
旅の疲れからか、ムツヤがウトウトし始めた頃に大きなひと仕事を終えたとばかりにギルスは二人に声を掛けた。
「お待たせーお二人さん、いやー時間掛かっちゃったよ、流石にこれは。回りくどいことは嫌いだからハッキリ言わせてもらうけど、今の俺の持ち合わせじゃ買い取りが出来ないな」
一瞬モモは驚いて目を丸くしたが、ムツヤの持ち物だと思えば納得もいく。
「なるほど、素人目にも業物だとは思ったが」
「本当ですかギルスさん!?」
ムツヤも驚いていた、あれって塔の1階に毎回2本3本は落ちてるから最近は見向きもしなかった剣だったのにと。
「あぁ、これは武器としての価値はもちろんあるが、どちらかと言うと骨董品としての価値があるね~」
続けてギルスは言う。
「今から200年前のパン・トーテ戦争時にこの国の部隊長が持っていた剣だね。ってことは君のご先祖さんはパン・トーテ戦争に参加してたのかもね」
剣の由来までギルスは解説を入れてくれた、あの剣にそんな歴史があった事をムツヤはもちろん知らなかった。
「まーそれほど珍しい剣じゃないけどこれは保存状態も良いからウチで買うなら80000バレシかなぁ。前もって言ってくれれば金は用意しておくんだけど平日じゃそこまで現ナマ置いとかないからなーウチは」
「8万バレシ!?」
安物の剣でも売値が3000バレシ程度だとするとかなりの高値だ。予想以上の値段にモモは驚きの声を上げる。
「どうしてもって言うなら今の俺の手持ちで買ってもいいけど3万バレシが限界かなー。鑑定料は初回サービスでまけておくから古物商に持って行ったほうが良いよー」
そう言ってギルスはコーヒをすすり、タバコのパイプに草を詰め終えていた。
「それでも良いです、買って下さい」
オイルライターを持つギルスの手がピタリと止まり、そして顔を動かさないで目線だけをパイプの先からムツヤへ向ける。
「それ、親の形見なんだろう? そんなに安売りして良いのかい? まるでその辺で拾ったみたいにさ」