ナツヤ達は大勝利に祝杯を上げていた。

「やったぜ! ナツヤさんが居れば何も恐いものはねーや!!!」

 騒ぐ仲間達、そんな宴を抜けてナツヤとフユミトは少し遠くから皆を見る。

「フユミト、俺はこの国を変える」

 フフッと笑ってフユミトは返す。

「ナツヤなら出来るよ。勇者だってかないやしない」

 満点の夜空を見上げる。こんな綺麗な星空を、清々しい気分で見るのは初めてかもしれない。

「ナツヤはどんな国を作りたいの?」

 フユミトに聞かれ、ナツヤは語りだす。

「差別の無い国、弱い人が虐げられない国だ! 皆が平等で、皆が笑顔の国!!」

「それは良いね」

 ナツヤはビールをぐいっと飲む。酒なんてここ数日で生まれて初めて飲んだ。

「まずは貴族を潰す。そしてこんな腐った国を作った権力者を潰す」

「いいね、ドンドンやろう」


 中距離の連絡石を中継して、翌日にはナツヤ達の組織『黎明の呼び手』が軍隊を壊滅させたことが王の耳へ入った。

 王都の軍団長や近衛兵のカミト、大臣や勇者サツキと言った面々が王の間に集められる。

此度(こたび)の城の襲撃事件、軍隊壊滅の件サツキよ、そなたはどう思う」

「はっ、やはり魔人が関係していると思われます」

 サツキの言葉に王は頷く。

「カミトよ、周辺の住人からの証言を報告せよ」

「はっ、どうも此度の輩は『黎明の呼び手』と名乗り、国民を(たぶら)かし、暴動を起こしているようです」

 カミトの報告に王はイライラとした態度を取る。

「下らんな、勇者アシノとイタヤを向かわせろ」

「はっ!」

 兵士が王の間を後にする。それを見てサツキは言った。

「我が王、恐れながら申します。魔人だとすれば私も向かうべきだと思いますが」

「ならぬ、そなたは王都を守るという使命がある」

 サツキは顔を伏せて歯をぎりりと食いしばる。

「かしこまりました」



 サツキは王の間を後にし、アシノに連絡を入れた。

「ってな事を王は言ってるんですよ!! 私とアシノ先輩の仲を引き裂こうとしているんですよ!!」

「後半言ってる事は分からんが、まずい事になってるらしいな」

 うーんと腕を組んでアシノは考える。

「近くの冒険者ギルドに寄る。きっと連絡は行ってるだろうから、私達が現れれば国王からの命令があるって言われるだろ」

「何だか大事になってきたわね」

 ルーも手を上げてやれやれと言う。

「『黎明の呼び手』ですか……」

 ユモトはその組織の名前をポツリと呟いた。

 サツキは王の間を後にし、アシノに連絡を入れた。

「ってな事を王は言ってるんですよ!! 私とアシノ先輩の仲を引き裂こうとしているんですよ!!」

「後半言ってる事は分からんが、まずい事になってるらしいな」

 うーんと腕を組んでアシノは考える。

「近くの冒険者ギルドに寄る。きっと連絡は行ってるだろうから、私達が現れれば国王からの命令があるって言われるだろ」

「何だか大事になってきたわね」

 ルーも手を上げてやれやれと言う。

「『黎明の呼び手』ですか……」

 ユモトはその組織の名前をポツリと呟いた。


 夜が明ける頃、ナツヤとフユミトは翼竜に乗って空を飛んでいた。最初は恐かったが、なれると気持ちが良いものだ。

「気持ちが良いねナツヤ」

「あぁ、そうだなフユミト!」

 その下を魔物の荷車が走る。ナツヤの仲間達はそこに居た。

「次の街は、金持ちが多く集まる街だね」

「あぁ、奪い返してやろう」

 ナツヤが言うとフユミトは、ふふっと笑う。




 一方、街の方では、こちらに向かってくる翼竜を衛兵が発見し、大騒ぎになった。

狼狽(うろた)えるな!! 兵士をこちらに集め、戦える冒険者にも招集をかけろ!」

 数十人の兵士と、多額の報酬を貰えると聞いた冒険者達が集まる。

「弓兵構えー!! まだだ、まだ引き付けろ……。今だ打て!!」

 矢がビュンビュンと飛ぶが、翼竜は一気に高度を上げ、攻撃の届かない場所まで来た。

 下から魔法の炎が打ち上げられ、数発被弾したが、翼竜が怯むことは無かった。

「ナツヤ、僕が拡声魔法を使うよ。言いたい事を言ったら?」

「わかった、頼む」

 フユミトが魔法を使った事を確認し、ナツヤは叫ぶ。

「俺達は『黎明の呼び手』だ!! 降伏しなければ殺す」

「なっ、翼竜の上に人が……」

 冒険者が口に出した。どよめきが広がる。

「黎明の呼び手って、いま噂の……」

「貧しい人々が居たら、俺達と一緒に金持ちを襲いましょう! 俺達は奪われてきた。今こそ奪い返す時です!!」

 衛兵長も声の拡声魔法を使い、ナツヤに言葉を返す。

「そのような事は認められん。去れ!!!」

 そんな会話をしていると、街に魔物がなだれ込んで来た。

「なんなんだよこれぇ!!!」

 冒険者はあまりに多い魔物を見て戦意を喪失している。

「兵たちよ行くぞ!! 我らは誇り高きギチットの兵だ!!」

 衛兵長が兵士を鼓舞するが、絶望した表情で魔物達を見ることしか出来ない。

 ナツヤ達が街を蹂躙するのに、そう時間は掛からなかった。

 兵たちは次々に斬られ食われ、抵抗する者は居なくなる。

 ナツヤとフユミトは街に降りる。恐怖を隠しながら街の代表者が近付く。

「もう、もう抵抗しませんから、住民の命だけは……」

「大丈夫です。俺達の目的は仲間を集める事と、金品を貰いに来ただけです」

 黎明の呼び手達は高級住宅街へ向かい、窓を割り、ドアを壊し、強奪を始めた。

 数時間経っただろうか、荷車に奪い返した物を載せる。

 そんな時、ナツヤの元にに血相を変えた仲間がやってきた。

「ナツヤさん! 大変だ! 冒険者の話だと勇者が俺達の討伐に向かってきているらしい!」