「ムーツヤ、元気ー?」
長い銀髪と相対的な褐色の肌。
目の上のアイシャドウと唇、爪は紫で統一されていて毒々しさと妖艶さを演出している。
腰から床に垂れ下がる縦に切れ目の入ったスカートと面積の小さい布からはだけた胸元には2つの大きな塊。
裏ダンジョンの管理人であり、邪神の『サズァン』だ。正確に言うとその幻影である。
「あら、この前のオーク? もしかしてムツヤって他種族フェチだったの?」
緋色の瞳に見つめられたモモは恐怖を覚えた。
しかし、相手は何を考えているかは分からないが、少なくとも今は敵ではない。
「ムツヤ殿の旅のお供をさせて頂くモモと申す者です。失礼ですが名前を失念してしまいました故もう一度お教え頂きたいのですが」
ムツヤが話を始める前にモモが言う。
裏ダンジョンの邪神ということは覚えていたが、ドタバタしていたせいかうっかり名前を忘れてしまっていた。
「そうね、ムツヤの仲間なら自己紹介しておかなくちゃね。私の名前はサズァン、裏ダンジョンを管理している邪神兼ムツヤの保護者!! つまりムツヤのママかお姉ちゃんぐらいの存在よ!」
「ま、ママ?」
モモがそう言い返すとクスクスとサズァンは笑って今度はムツヤに語りかける。
「あーのねームツヤ? 確かにそのカバンの持ち物はあなたの物だけど、それを売るってのはダメよ?」
「え、どうじてですかサズァン様」
ムツヤはアホ面でそんな答えをした。
それが子犬のようで愛くるしく、抱きしめて頭をわしわしと撫でたくなるがサズァンは冷静さと威厳を取り繕う。
もっとも幻影では邪神と言えどこちらの世界の人や物に触れることは出来ないのだが。
「あのね、ムツヤの持っている道具の一つ一つはこの世界の理をひっくり返しかねないぐらいに強力なの。モモ…… でいいかしら? あなたもそれはわかるでしょう」
モモは頷いて村での出来事を思い出した。
飲んだだけで致命傷も完治してしまう薬など聞いたことも見たこともない。
「そしてそんな物を無名の冒険者志願が持ってきたら怪しまれると思わない?」
確かにとモモは思った。ムツヤの方は相変わらずピンときていないようでアホ面をしているが。
「どこかで盗んできたと怪しまれるだけならまだ良いわ。ムツヤは深く考えたことないでしょうけど、そのカバン自体もこの世界では貴重な…… それこそ夢のような道具なの」
「そうなんでずか!?」
「物がいくらでも入って劣化しないカバンなんて誰でも欲しがるでしょう? 悪人であれば所有者を殺してでも」
「目立つと盗賊のような連中にムツヤ殿が狙われると……」
モモが考えてそう言うとサズァンは口を閉じたままニヤリと笑う。
「惜しいわね、盗賊も面倒だけどそれ以上に厄介なのがいるわ。例えば身元も分からない、後ろ盾も無い人間が貴重なものを持っていたとして、大きな組織や国がそれを知ったら?」
モモはハッと何かに気付いたらしい、ムツヤは二人が何を言っているのかわからないまま少し眠気を覚える。
「ムツヤ殿のカバンを取り上げられるという事ですか?」
よく出来ましたとサズァンは拍手をするが、モモは今の今までその考えに至らなかった事を恥ずかしく思う。
自分でもムツヤの所有物の偉大さをいまいち理解していなかったらしい。
「もちろんこの世界の人間なんてムツヤの敵じゃないでしょうけど、盗賊や豪商の手先、そして国に狙われる旅をしたくなかったら、今のうちは人にそのカバンの事を言わないこと、カバンの能力もわからないように使うこと。約束できるかしらムツヤ?」
話を聞いていたのだか、いないのだか分からないが、ムツヤは我に返って威勢良く返事をした。
長い銀髪と相対的な褐色の肌。
目の上のアイシャドウと唇、爪は紫で統一されていて毒々しさと妖艶さを演出している。
腰から床に垂れ下がる縦に切れ目の入ったスカートと面積の小さい布からはだけた胸元には2つの大きな塊。
裏ダンジョンの管理人であり、邪神の『サズァン』だ。正確に言うとその幻影である。
「あら、この前のオーク? もしかしてムツヤって他種族フェチだったの?」
緋色の瞳に見つめられたモモは恐怖を覚えた。
しかし、相手は何を考えているかは分からないが、少なくとも今は敵ではない。
「ムツヤ殿の旅のお供をさせて頂くモモと申す者です。失礼ですが名前を失念してしまいました故もう一度お教え頂きたいのですが」
ムツヤが話を始める前にモモが言う。
裏ダンジョンの邪神ということは覚えていたが、ドタバタしていたせいかうっかり名前を忘れてしまっていた。
「そうね、ムツヤの仲間なら自己紹介しておかなくちゃね。私の名前はサズァン、裏ダンジョンを管理している邪神兼ムツヤの保護者!! つまりムツヤのママかお姉ちゃんぐらいの存在よ!」
「ま、ママ?」
モモがそう言い返すとクスクスとサズァンは笑って今度はムツヤに語りかける。
「あーのねームツヤ? 確かにそのカバンの持ち物はあなたの物だけど、それを売るってのはダメよ?」
「え、どうじてですかサズァン様」
ムツヤはアホ面でそんな答えをした。
それが子犬のようで愛くるしく、抱きしめて頭をわしわしと撫でたくなるがサズァンは冷静さと威厳を取り繕う。
もっとも幻影では邪神と言えどこちらの世界の人や物に触れることは出来ないのだが。
「あのね、ムツヤの持っている道具の一つ一つはこの世界の理をひっくり返しかねないぐらいに強力なの。モモ…… でいいかしら? あなたもそれはわかるでしょう」
モモは頷いて村での出来事を思い出した。
飲んだだけで致命傷も完治してしまう薬など聞いたことも見たこともない。
「そしてそんな物を無名の冒険者志願が持ってきたら怪しまれると思わない?」
確かにとモモは思った。ムツヤの方は相変わらずピンときていないようでアホ面をしているが。
「どこかで盗んできたと怪しまれるだけならまだ良いわ。ムツヤは深く考えたことないでしょうけど、そのカバン自体もこの世界では貴重な…… それこそ夢のような道具なの」
「そうなんでずか!?」
「物がいくらでも入って劣化しないカバンなんて誰でも欲しがるでしょう? 悪人であれば所有者を殺してでも」
「目立つと盗賊のような連中にムツヤ殿が狙われると……」
モモが考えてそう言うとサズァンは口を閉じたままニヤリと笑う。
「惜しいわね、盗賊も面倒だけどそれ以上に厄介なのがいるわ。例えば身元も分からない、後ろ盾も無い人間が貴重なものを持っていたとして、大きな組織や国がそれを知ったら?」
モモはハッと何かに気付いたらしい、ムツヤは二人が何を言っているのかわからないまま少し眠気を覚える。
「ムツヤ殿のカバンを取り上げられるという事ですか?」
よく出来ましたとサズァンは拍手をするが、モモは今の今までその考えに至らなかった事を恥ずかしく思う。
自分でもムツヤの所有物の偉大さをいまいち理解していなかったらしい。
「もちろんこの世界の人間なんてムツヤの敵じゃないでしょうけど、盗賊や豪商の手先、そして国に狙われる旅をしたくなかったら、今のうちは人にそのカバンの事を言わないこと、カバンの能力もわからないように使うこと。約束できるかしらムツヤ?」
話を聞いていたのだか、いないのだか分からないが、ムツヤは我に返って威勢良く返事をした。