ギルスを連れて訓練所もとい家に戻る。

「それじゃあ僕、何か簡単に作ってきますね」

「私も手伝うぞ」

 帰るなりユモトとモモは台所へと消えた。残ったムツヤ達は探知盤についてギルスに説明をする。

「この探知盤なんだけどねー、この歯車で調整が出来て、魔力の波長を合わせるともっと遠くまで見渡せるの。その調整したやつはキエーウに持っていかれちゃったんだけどね」

 ルーは探知盤をギルスに渡す。ギルスは下から覗き込んだり、横の歯車をクルクルと回したりと軽くいじってみた。

「なるほどね、こりゃ複雑な魔道具だ。鑑定の道具は一式持ってきたから、研究室とやらで見てみるよ」

 それからは、知りうる限りの裏の道具と効果をムツヤはカバンから現物を取り出しながら説明する。しばらくそうしていると、ユモトとモモが食堂に戻ってきた。

「お待たせしました、ご飯ができましたよー」

 簡単に作ると言っていた割には豪華な昼ごはんが出てくる。よくこの短時間で作ったなと皆で感心した。

「ありがとう! それじゃ食べましょう、いっただきまーす!」

 取りとめのない話をしながら食事を済ますと、早速ムツヤとギルスとルーは地下の研究室へと行った。他の皆は警戒と訓練をする。

「ようこそ、私の研究室へ!」

 ルーは手をバッと広げて言った。

 機材は倒れて棚は漁られてお世辞にも綺麗とは言えない場所だったが。

「それじゃあこの探知盤って奴を調べてみたいんだが、ムツヤくん、予備ってあるかい?」

 椅子に座り、ギルスは言うとムツヤは頷いてカバンから探知盤をもう1つ取り出した。

「これ、たくさんあるんで」

「そりゃ頼もしい。それじゃ1つ分解して調べても大丈夫だな、悪いけどそれ研究用に分解させてもらってもいいかい?」

「はい、どうぞ」

 ムツヤは探知盤を1つギルスへ手渡した。「ありがとう」と言ってギルスはそれを受け取る。

「それじゃあ俺はルーと一緒にコレの研究をするから、ムツヤくんに聞きたいことが出来るまで外で好きにしてて良いよ」

 それを聞いてルーはニヤニヤとした。

「あらー? 私と地下室で2人っきりになりたいの?」

「アホか、ただ助手が欲しいだけだ」

 助手と言われてルーは悔しがる。

「ちーがーうー! 助手はギルスの方でしょ!?」

「いいや、お前だ」

「やー!!!」

 騒がしい2人に苦笑いをしてムツヤは研究室を後にした。

 ムツヤが外へ出ると仲間達はそれぞれ訓練をしていた。

 ヨーリィは木でできたナイフを持ち、モモに飛びかかる。

 モモはそれを盾で受け止めて右上がりに剣を振ったが、ヨーリィは盾に右手を置いて、それを軸に回転しながらモモの頭上を飛び越えた。

 モモが振り返るよりも先にヨーリィは木のナイフで背中をちょんと突いた、ため息とともにモモはガックリと肩を落とす。

「ヨーリィ、強いなお前は」

 ふるふるとヨーリィは首を横に振って言葉を返した。

「モモお姉ちゃんより長く戦っているだけ、戦いのセンスはモモお姉ちゃんの方がある」

 ヨーリィがお世辞を言わない事を知っているのでモモは照れる。

「そうか、よし、もう一度頼むぞ!」

 ユモトは防御壁を作り、アシノの飛ばすビンのフタを受け止めていた。アシノの能力は『ビンのフタをスッポーンと飛ばす能力』ただ1つだが、成長しているのかスッポーンどころか矢のように早いスピードと威力になっている。

「っく、ぐぐぐ」

 ユモトはだいぶ苦しそうだった、だがアシノは手を緩めずにビンのフタを飛ばし続けた。

「よーし、いったん休むか」

 アシノがそう言うとユモトはその場にへたりと座り込んだ。

「はぁはぁ」

 ユモトは肩で息をし、顔を真っ赤にしている。相当な負担があったのだろう、そこへ家からのこのこ出てきたムツヤがかち合う。

「ユモトさん大変そうですねー」

「あぁ、はぁはぁ、ムツヤ…… はぁっ、さん……」

 息を切らしながらユモトはムツヤの名を呼んだ。その時アシノはピンときて提案をする。

「そうだ、いいこと思いついた。お前ら戦ってみろ」

 いきなりのアシノの提案にユモトは驚きの声を上げた。

「えーっ!? ムツヤさんとですかァ?」

 ニヤリとアシノは笑って言う。

「男は度胸だ、試しに戦ってみろ。そうだな、おーいモモ、お前もこっち来いよー。ユモトと連携の練習だ」

 呼ばれてモモもアシノの元へとやってきた。

「ムツヤ殿と戦うのですか?」

「あぁ、お前たちは全力を出して、ムツヤは武器なし…… でも危ないなコイツは、とにかく攻撃は無しだ」

「わがりまじだ!」

 ムツヤはモモとユモトと向き合う。アシノとヨーリィは少し遠くでそれを見守る。

「そんじゃ、試合開始!!」