「お、おい......今2人目って…。残り九人って言ったか?俺らはもう解放されるんやないんか...?」
 
 小林が顔面蒼白で俺に尋ねる。前原や本山もこれで終わりだと思ってたのか、呆然としている。
 
 「確かに、残り10人の中から責任者を一人決める。そいつへの復讐が終わればお前らは解放して帰す...そう約束したわな」

 小林の目を見てそう言う俺を見て、何だ分かってんじゃねーかって言いわんとばかりに小林らは安堵する。
 だがその顔は俺の次の一言で崩壊することになる。

 「――んなもん、嘘に決まってるやろバァカ!お前ら全員復讐してぶち殺すというルートは最初から確定してますぅ~!次は誰にしようかなァ!?っはははははははははははぁ!!」

 プギャーといった調子で指さして笑う俺を、誰もが絶句して凝視する。沈黙を破ったのは前原だった。

 「は、話が違うやろ!?一人を犠牲にすれば俺らはもう解放される、許してくれる!俺らは二度とお前に関わらへんって誓った!俺らは本気でそのつもりやったぞ!?何嘘ついてんねん杉山ァ!!」

 前原に続いて残りも俺を嘘つきだ卑怯だと好き勝手非難してくる。そんなこいつらに俺は心底呆れ、侮蔑を含んだ視線を向けながら「ハァ~~~??」と罵声を繰り出す。

 「お前らアホにも程あるやろ?どんだけ自分らに都合良い思考してんのか。
 お前ら人間のクズどもにする約束なんか、最初からあるわけないやろボケ」

 「「「「「なっ...!?」」」」」

 「お前らみたいに、人を理不尽に虐げるばかりの有害物質どもに、誠意とか公正とかかける必要無いやろ。本物のクズのお前ら相手なら約束も破って良し、嘘吐いて騙すも良し。
 お前らはそうされるだけの腐った性根・心を持ったどうしようもないゴミカスどもなんやからなァ!
 というかここに立った時点でお前らに人権なんてあると思うな!!!」

 俺の罵詈雑言に連中は何も返せないでいた。絶望・怒り・観念など色んな感情がごちゃ混ぜになって反論どころじゃないって様子だ。

 「ふ、ざけんな...!小学の時から思ってたけど、やっぱお前は最悪や!お前は俺らのこと害とか言ってるけどなァ、俺らにとってもお前は害なんや!ちょっとちょっかいかけられたくらいでキレやがるわ、俺とちがって陰キャになったくせに陰キャらしくしねーで俺らに反抗するわ!お前には消えてほしいってずっと思ってたんやぞこっちは!?」

 再度前原が俺に怒鳴りながら色々俺への不満・気に入らないことをぶちまけてくる。この卑怯の最悪野郎と喚く前原を睨みながら近づく。

 「あーあっ。小学の昔は俺ら遊んだ仲やったのに、今となってはお互いに嫌悪し合う関係や。俺もお前のこと消えてほしくてたまらんと思ってるよ?で、今からその願いは自分の力で叶えられようとしてるけどな」

 よし決めた。三人目の復讐は前原優にしよう!

 「ぐ...!?く、来んなや!?俺の親戚にはヤクザがおるんやぞ?俺を殺したら報復でお前も殺されるぞ?
 せやからこれ以上は止めとけよ?ヤクザやぞ?本物の銃とかあるねんぞ?お前なんか撃たれまくってすぐ死ぬぞ...!?
 しかも俺の親は権力者や!お前殺しても俺は何の罪に問われへんけど、お前はヤクザと権力者から消されるんやぞっ!!」
 
 この期に及んで虎の威を借りる狐をかましてくる前原に嘲笑を返してやる。

 「知ってるで?お前俺を甚振ってる時も、 “これ以上俺らにたてつくんなら俺の親戚使ってお前を殺すぞ”とか脅してきたな?事実お前にはヤクザと繋がってたもんな?
 大人になったお前は、親の仕事を次いで地位と権力を手にし、小西と中村とつるんで好き勝手やってたっけ?」
 「は?何で俺の将来を知ったような...」
 「で?ヤクザとか権力者とかがホンマやったとして、それが何なん?」
 「なっ...!?せやから俺を殺したらお前は消されるんやって脅してるんや!!意味分からへんのかああ!?」
 
 後ずさる前原に合わせて前進していると、壁際に追い詰められて、前原がさらに顔を青くさせる。

 「お前さァ、そうやってあの時も俺にそう脅してたけど、反抗した俺のところに一度でもヤクザでも寄越したんか?親の権力使って俺の家族を路頭に迷わせられたか?」
 「そっそれは...!」
 「ハッ!所詮口だけの小物が。七光りでもないのに七光りぶるお前はマジで雑魚でクズやな」

 ボキャッ!「ぐあああっ!?」

 亜音速の足刀蹴りを放って前原の両脚をへし折って倒れさせる。

 「それに...今の俺をたかがヤクザや権力者でどうこう出来ると未だに思ってるお前は、マジで馬鹿だよな?ここにいる全員を同時に金縛り状態にするわ、
 今みたいに一瞬で骨を砕くこともできるわ、デカい武器で人の頭も粉砕できるわと。そんな俺に、今さらヤクザとかでどうにか出来ると思ってんのか?国中のヤクザとか自衛隊なんかも壊滅させられるような俺をさぁ?」

 「う……なァ」

 「ああ、これはハッタリでも何でもないってこと、お前らが一番分かってるはずやろ?ここまで来て俺の力をまだ疑おうなんて愚考はしてへんやろ?お前らは俺にヘイトを溜めさせた時点でもう終わってたんや...」

 「い、やだぁ...!くそ、誰か助けろォ!!親父、叔父さん...っ!!この化け物を消してくれよォ!!!」

 とうとう俺を化け物呼ばわりしてなりふり構わず助けを求めて叫びまくる前原を嗤ってやる。心はへし折れる寸前だ。この頃のコイツのこんな顔が見ることができて最高に気分が良い!