復讐編




 「が、あぁ...!?」
 「まっずは~~。今朝も俺を侮辱しやがった、小西陽介君からいこっかぁ!」

 力無くへたり込んでいた小西の首を掴んで軽々と持ち上げる。小西は苦しげに足をバタつかせて藻掻いている。

 「ま”っで、待ってぐれ...!う、嘘やろ?す、ぎ山が怒っているんは分かったわ。
 けど......殺すなんて、冗談、やろ...?本気なわけ、ない、よな...?」
 
 半泣き状態の小西は引きつった笑顔で俺にそんな言葉を吐いてきた。

 「はぁ?ここにきてまだそんな馬鹿なこと言うんか?さっきの俺のお喋り聞いてへんかったんか?あれが全部、冗談に聞こえとったんか?
 あれのどこが、演技やと思ったんや?え?」

 ドスッ!腹を殴る。小西は激しく咳き込む。

 「ごふっ...!お、い......あんな”、悪ふざけで...俺らを、本気で殺すんか―――ぁぎゃああああ”あ”あ”あ”っ!?」
 
 まだふざけたことをほざいたので右腕を握り潰してやった。掴んだ箇所が赤黒く変色して腕の形も歪に変形している。

 「って言うと何や?お前らはあの二年半のアレが...悪ふざけの一言で済まそうってか?
 あのさぁ~~~~~~~。お前らはさァ!?二年半ずぅっと、人を理不尽に甚振って辱めて陥れて孤立させておいて、ただの悪ふざけの一言で済ませるつもりか?
 人の尊厳と健康と成績と青春と人生をズタボロに引き裂いて踏みにじってきた行為が、ただに悪ふざけだったって言いたいのかなぁ!?」

 今度は左の脛を蹴り砕く。泣き喚く小西を床に押し付けてその背を踏みつける。

 「ホンマに悪ふざけや言うんなら、俺がこれからすることもただの悪ふざけとしてやるけど、ええよな?」
 「あああ、止せ、止めてくれ...っ!言い方が悪かった!ごめんなさい!俺らが悪ふざけ気分で杉山を虐めてしまいました!ち、調子に乗り過ぎました...!!」
 「気分ねェ?気分がそうやったから俺をあんなに長い間虐めてたんか?
 へ~~?随分勝手やなァお前?どういう腐った思考してたらそういう結果にたどり着くのかねェ!?」

 「ああああ”あ”あ”あ”っ!!いだい”いだい”助けでえ”え”え”え”!!」

 陸に上がった魚のように、いやそれ以上にみっともなくのたうち回る小西を見て、俺はゲラゲラ嗤う。

 『あっはっはっはー!!どうや皆ァ!?お前らの敵がこんな無様を晒してるのは、実に滑稽で愉快やと思わんかァ!?』
 
 マイクパフォーマンスじみた口調で、生徒らに語りかけて、あいつらの反応を見て見ることに。すると――


 《ぎゃははははははっ!!ウケるーー!!》
 《見てあの格好、キショく悪ー!》
 《いいぞー!もっとやれぇ!!》


 生徒らの反応は大ウケ!誰もが小西を指さして爆笑して、俺を囃し立ててくる。誰もが今の小西の惨状を愉快に思っているのが分かる。

 「おい......おいっ!?お前ら、おかしいやろ...?陽介が、あんなになってるのを...。お前ら何笑ってんねん!?笑ってんじゃねーよっっ!!」
 
 中村が怒りの形相で生徒どもに怒鳴る。前原も同じくキレている。五組の奴らも有象無象どもの反応にやや憤りを見せている。
 しかしその有象無象どもは二人の剣幕を見ても嘲笑と罵声を止めなかった。さっきからずっと小西を嗤い続けている。

 これはもちろん...俺が細工したことが原因や。

 小西への復讐拷問と同時に、俺は他の虐め連中と教師ども、あと遠隔魔術で五組の連中にも、ある幻覚が見えてしまう催眠術をかけておいた。
 
 内容は...生徒らが自分らを嗤ってるように見える、や!

 俺が甚振る度にギャラリーのあいつらは笑い騒いで俺に拍手を送る。そんな狂ってる状況を見ている錯覚をあいつらにかけておいた!
 実際の奴らも、実は笑ってはいる。笑ってはいるけど、顔が引きつってしまっている。明らかに無理して笑ってるのが分かる。
 これではこれから処刑する連中に精神的なダメージを与えられないということで、俺の催眠術によって補正をかけている...というカラクリだ!

 俺にとっては茶番と言えば茶番だが、今理不尽に甚振られている人間にとってはもの凄い心の傷となってるハズや!......というか、

 「おかしい?お前らにソレ言う資格ある?俺を散々酷く痛めつけていてそれを可笑しそうにゲラゲラ笑ってたんはどいつやったっけー?」

 俺の言葉に中村も前原も怯んで黙る。

 「お前らが散々やってきたことを、今ここでやってるだけやろ?お前らが俺たちの行為を非難する権利があると思ってんのか?コレが、俺がかつて味わってきた痛みと屈辱やクソ野郎っっ!!」
 「ひ、ひぃ...!?」

 今度は俺が怒りの形相で怒鳴りつける。中村がまた情けなくチビった反応をして黙る。

 「せ、先生っ!!お前ら動けるんやろ!?早よ、陽介助けろや!!先生やったら生徒助けろやぁ!!」

 前原が教師どもに向かってそう怒鳴る。それを聞いて最初に動いたのは、体育の教師二人だ。なんか俺に向かっていい加減にしろだのもう止めろだのと連呼しながらゆっくり歩いてくる。止める素振りを見せるだけで俺に近づこうとはしていない。ただ無意味に制止の言葉をかけるだけの無能教師どもだ。
 あまりにもうるさく呼びかけてくるので――


 「お、おい!もうこんなことは――「うっさい」ズパパン!!


 斬撃音がして少ししてからどさりと倒れる音が二つする。その正体は当然先程の二人のだ。


 「いま良いところなんが分からへんのか。お前ら教師どもも黙ってそこで見とけや。生徒一人も助けられへん無能クズどもが」

 俺の躊躇無い行動に教師どもも虐めグループも全員、沈黙してしまう。教師どもはもう誰も俺を止めようとはしなくなった。